4月クールの連続ドラマが出そろった。「ビッグネーム」の俳優や原作、脚本家などを起用した話題作が多いが、視聴率の上では飛び抜けたヒットが出ておらず、ドラマに詳しい識者からは「内向きで、重々しい題材を扱った作品が目立つ」といった声も上がっている。注目作の序盤の動向と見どころを探ってみたい。
■2話以降は下降傾向
各局の新作ドラマで2話以降、10%台をキープしたのは、日本テレビ系「Dr.倫太郎」(水曜午後10時)▽TBS系「天皇の料理番」(日曜午後9時)▽テレビ朝日系「アイムホーム」(木曜午後9時)▽フジテレビ系「ようこそ、わが家へ」(月曜午後9時)−の4作。
このうち、初回視聴率が最も高かったのは「アイムホーム」の16・7%で、「天皇の料理番」が15・1%と続いた。ただ、いずれの作品も2話以降、視聴率は下降傾向にあり、「天皇の−」は2話で11・4%と3ポイント以上落とした。
■「俺様」から「家庭人」へ
テレ朝「アイムホーム」は、木村拓哉がテレ朝で初めて連ドラ主演に挑んだ作品。記憶喪失となったサラリーマンの久(木村)が、「手放せない10本の鍵」をはじめとする自身の過去の謎を探っていく。家族を題材に、ミステリー的な要素が絡み合う展開が見どころだ。
テレビ番組に詳しいコラムニストの桧山珠美(たまみ)さんは「『俺様』的キャラクターを演じることの多かった木村拓哉が、家庭人にチャレンジしているのが好感を持てる。料理を作ったり、上半身裸を披露したりと、旺盛なサービス精神を感じる」と話す。
もっとも、視聴率は2話以降、下降しており、第4話は12・6%。昨年放送された同じ木村主演ドラマ「HERO」第2期(フジ系)が全話平均21・3%を獲得したことを踏まえると、「物足りない」と桧山さん。
■堺雅人は1年半ぶり連ドラ主演
日テレ「Dr.倫太郎」は、TBS「半沢直樹」以来約1年半ぶりとなる堺雅人の連ドラ主演作で、「ドクターX」「花子とアン」で知られる中園ミホさんが脚本を担当。精神科医の倫太郎(堺)が、感情をコントロールできない芸者の夢乃(蒼井優)と出会い、その人生を狂わせていく。堺と蒼井という芝居巧者同士の駆け引きが刺激的で、高畑淳子、小日向文世ら周囲の俳優陣にも存在感がある。
今期連ドラの中では唯一、視聴率が一度も13%を割っておらず、最も安定して「見られている」といえる。ただ、全話平均16%を超えた昨年同クールの「花咲舞が黙ってない」の勢いには及んでいない。
一方、「天皇の料理番」は、「TBSテレビ60周年特別企画」と銘打たれた時代もの。過去に堺正章主演の同名ドラマが放送されており、画作りや演出など、作中にはTBSらしい重厚さがにじむ。
フジ月9「ようこそ、わが家へ」は、「半沢直樹」シリーズで知られる作家、池井戸潤さんの同名小説が原作。平凡な一家がストーカーや企業の不正などに直面し、ホームドラマとミステリーが交錯していく。
■「爽快感少ない」「純文学のよう」
4月クールの各作品の傾向について、桧山さんはこう指摘する。
「『心の病』をはじめ重いテーマのドラマが目立っていて、見ていて爽快感のある作品が少ない。1作1作はよくできていて、それぞれに見応えがあるが、リアルタイムで見ようとまでは思えない。もっと軽やかなドラマを見たいという視聴者の気分が、視聴率にも反映されているのでは」
確かに、例えば同じ水曜午後10時に放送されている「Dr.倫太郎」とフジ「心がポキッとね」は、切り口は違うが「心の病」を扱っている。「心がポキッとね」は、「最後から二番目の恋」の岡田恵和さんと宮本理江子監督が再びタッグを組んだドラマで、過去の失敗や心の傷によって「病んでいる」大人4人のラブコメディーだ。
ドラマ評論家の成馬零一さんは、「心がポキッとね」について「阿部サダヲ演じる主人公は、ストレスで元妻に暴力を振るった過去を持っている。加害者の内面を描いていくテーマが意欲的。元妻役の山口智子が『ロンバケの頃の山口智子』を演じている感じが痛々しさを演出していて、演出も高度だ」と称賛する。
一方、成馬さんは最近の連ドラの傾向について、こう指摘する。
「全体的に内省的、前衛的なドラマが増えており、中には『純文学』を読むようにしっかり作品に向き合わないと、理解できないものもある。それはそれで必要だが、もう少し大衆を向いた作品が増えてもいいのでは」
■ピエール瀧の新境地
成馬さんは今期の注目作として、「心がポキッとね」に加え、フジ「She」(土曜午後11時40分)とNHK総合「64」(土曜午後10時)を挙げる。「She」は松岡茉優主演の「スクールドキュメントサスペンス」で、「64」は作家、横山秀夫さんの警察小説をピエール瀧主演でドラマ化した作品だ。
「フェイクドキュメンタリー風の『She』は、ツイッター風の文字が画面に表示されるなど、演出が挑戦的。『64』は、ピエール瀧の存在感が際立っており、画面の緊張感や完成度が高い」
話題作以外にも、幅広い作品のそろった今クール。各作品が中盤、終盤に向けてどう展開していくか、見守りたい。(三品貴志)=文中の視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ、関東地区
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