先月も思ったほど、頁数がいかなかったな…と思いつつ、読了した本のタイトルをチェックしたところ、メルロ･ポンティを三冊も読んでいたことに気づいてちょっとびっくり。それは頁数が稼げないはずだわ…とちょっと納得（？）。後、先月もあまり小説を読まなかった。別に意識的に遠ざけているわけではないのだけれど。ナイスの数はまあまあだったかな？後、カミュの『異邦人』に意外な程ナイスがついたのがちと驚き。
2015年4月の読書メーター
読んだ本の数：20冊
読んだページ数：5036ページ
ナイス数：71ナイス
http://bookmeter.com/u/4147/matome?invite_id=4147
■言語の現象学 (メルロ=ポンティ・コレクション 5)
これまで読んできた同シリーズのテキストに比べ、幾分とっつきやすかった気はするが、それでもその十分の一も理解出来たかどうか覚束ないという体たらく。ただ、タイトルからも示唆されるとおり、本書においてソシュールが幾度となく言及されているが、その後ソシュールの原資料研究がなされている昨今、そうした研究をふまえての注釈がなされていないのが気になる。それから気になるのが、本書でも名前が少なからず出てくるサルトル。論文の発表年と二人の年譜を照らし合わせると色々と面白いのではないか？という気にさせられる。
読了日：4月30日 著者：モーリスメルロ=ポンティ
http://bookmeter.com/cmt/46930365
■異邦人 (新潮文庫)
内容はともかくとして訳が古いというのが遺憾ともしがたい。それに半世紀も前の訳に注釈が無いというのもちとイタい。それはさておき作品の冒頭から始まりその後も頻出する「ママン」という言葉が何とも言えず印象的。母親に対して直接的な愛情表現は全くと言って良いほど無いのと対照的に頻出するこの言葉に主人公ムルソーの屈折した愛情が垣間見られる気がするのは僕だけか？後、印象的だったのは巻末の解説と年譜で知った著者の経歴。決して恵まれていたとは言えない経歴と、本書で見られる乾いた文体と内容との対称は謎めいた余韻を残す。
読了日：4月27日 著者：カミュ
http://bookmeter.com/cmt/46859440
■関係する女 所有する男 (講談社現代新書)
概ね興味深く読めたが、本書で幾度となくトンデモ本に対して言及しているけれど、本書もそのうちトンデモ本扱いされる可能性を孕んでいるのでは？という疑念がどうしても拭いきれなかった。ジェンダーとか精神分析とかナイーブな問題を扱っている以上、それは避けられないリスクなのかも知れないが。本書で取り上げられているトンデモ本でとりわけ印象的だったのが『話を聞かない男〜』。まさに「あるあるネタ」という感じのタイトルと取り上げられたエピソードが実は噴飯物だったとのこと。そういえば、あの本今は影も形もないもんな…
読了日：4月26日 著者：斎藤環
http://bookmeter.com/cmt/46834542
■現代哲学の岐路―理性の運命 (講談社学術文庫)
いわゆる対談本というのは、良くも悪くも緩いものになりがちなのだが、本書はかなりかっちりとした内容で、読み応えある。長年の友人同士の対談にも拘わらず、これだけ内容が濃いというのは、やはりシナリオ的なものがあったのでは？などと想像してしまう。とにかくこの一冊で近代から70年代までの哲学史はある程度把握出来るかと思う。ただ、ニーチェに高い評価を下しているのが、個人的にピンとこなかったが。そのうちまたニーチェの著作を読んでみるか？という気にはなったけれど。後、ヘーゲルからマルクスへの流れが面白かった。
読了日：4月26日 著者：生松敬三,木田元
http://bookmeter.com/cmt/46822476
■世界の共同主観的存在構造 (講談社学術文庫)
何かと問題はあるだろうが、一人の哲学者がこれだけのオリジナルティを有した思索を一冊の本にまとめ上げたということに改めて驚愕させられる。また、本書で提唱されている「主観ー客観」図式に代表される近代的世界観の超克はその後殆ど進展していない…というより、その問題意識さえ忘れ去れているのではないか？という気がしてしまう。そこには、本書の時代的背景にあった左翼運動が殆ど風前の灯火に状態にあり、マルクス主義も退潮の一途を辿っているという事情もあるのだろう。そうした背景をいったん不問に付して今一度読まれるべき一冊。
読了日：4月24日 著者：廣松渉
http://bookmeter.com/cmt/46775999
■女性たちとイエス―相互行為的視点からマルコ福音書を読み直す
本書が出てから二十年近くの間に色々な意味で女性を巡る状況が変わったということに驚かされる。まず本書で度々言及される天皇を中心とする父権制がかなり崩れてしまっているということ。しかし、だからといって女性にとって生きやすい状況になっているとは決して言えないというのが皮肉である。また、女性が被抑圧的存在であったことを否定するつもりはないが、その視点のみではどうしても掬いきれない部分が出てくるのでは？という疑念もわく。とはいえ、フェミニズムの視点から聖書を読み説くというのは、刺激的な試みではあったと思う。
読了日：4月21日 著者：絹川久子
http://bookmeter.com/cmt/46708703
■佐藤優の１０分で読む未来 キーワードで即理解 戦争の予兆編
前巻の時の状況に比べ、確実に世相が危うい状態になっているということを如実に感じられるし、また佐藤氏の分析もリアルに映る。本書でとりわけ印象的だったのは、氏が集団的自衛権の成立について公明党が果たした役割を高く評価していること。氏の学会への評価については、正直納得できないところがあるのだが、本書を読んで氏の意図するところがある程度理解できた気がする。後、前巻では割に高い評価を下していた安倍政権に対して本書ではわりに冷ややかというのも印象的。ウクライナの情勢については、正直かなり理解し辛かったけど。
読了日：4月20日 著者：佐藤優
http://bookmeter.com/cmt/46691836
■草枕 (岩波文庫)
二百頁にも満たない比較的短い作品であるのにも拘わらず、どこか重層的な要素を感じさせる。とにかくミステリアス…というより、どこかファム・ファタル的な趣さえある那美が印象的。この那美は後の作品で主要な位置をしめる何人かの女性の原型となっている筈である。主人公の画工と那美を主軸にして、ごく数人の登場人物が織りなす物語は、読みようによっては幾通りもの読み方が可能であるような気がする。とりわけ印象的だったのは、満州に出兵するという那美の従弟久一と那美の別れた夫の存在。この二人に焦点を当てるというのも面白い気がする。
読了日：4月17日 著者：夏目漱石
http://bookmeter.com/cmt/46618013
■間接的言語と沈黙の声 (メルロ=ポンティ・コレクション 4)
先に読了した同じシリーズのテキストに比べると読みやすかったとはいえ、やはり大凡理解できたとは言えないというのが、我ながら情けない。特に本書は主に芸術論が収められているので、言及されている芸術作品を知らないと理解し辛いところがあるのは否めないだろう。多少値段が上がってもよいから、巻頭に図版を載せて欲しかった。個人的には「エロチシズムについて」が興味深かったか？解説にもあるように、著者にしては珍しいテーマ。できたら、生前にこのテーマをもっと掘り下げてほしかった。後、「眼と精神」が特に難解だった。
読了日：4月17日 著者：モーリスメルロ=ポンティ,MauriceMerleau‐Ponty
http://bookmeter.com/cmt/46610440
■不機嫌な夫婦 なぜ女たちは「本能」を忘れたのか (朝日新書)
著者自身も示唆している通り、何かと反発は免れないだろう。しかし、本書を読んでいると、この数十年の間にどれだけ多くのものを失ってきたか、ということに愕然とさせられる。特に毎日入浴という習慣や水洗式トイレなど、やたら水を消費するシステムを当たり前のように受け入れている現状に疑問投げかけているのには、考えさせられた。それ以上に示唆的だったのは、これだけ物質的に豊になり、個人の自由の幅は拡がっているのに、でも昔に比べてそれ程幸せそうには見えないという指摘。ごく当たり前のことをもう一度見直す時期に来ているのでは？
読了日：4月16日 著者：三砂ちづる
http://bookmeter.com/cmt/46588675
■<わかりやすさ>の勉強法 (講談社現代新書)
人よりはある程度本を読んできた筈なのに、読んだ本について説明するという場面にうまく話ができる自信はない…そんな僕にとって、多少は益するところはあったか。主にビジネスマンを対象にした本なので、本書で示されたテクニックをそのまま真似るということはないとは思うが、どうすれば人にわかりやすく説明することができるか？ということを考える上で少なからず参考になったと思う。個人的には著者がテレビ出演した際に接したタレントについてのエピソードが興味深く読めた。やはり芸能界で生き残るのは、大変なことなんだな…と。
読了日：4月15日 著者：池上彰
http://bookmeter.com/cmt/46572953
■哲学の起源
哲学の起源としてイオニアの思想に焦点を当てた画期的な一冊。しかも、作者が哲学プロパーでないというのがミソ。果たして、本書が哲学プロパーの人達からどのような評価を受けたのか？というのが気になる。それはともかくとして、恥ずかしながら古代ギリシャの歴史に疎いもので、いきなり「イオニア」と言われてもピンと来なかったというのが正直なところ。それでも本書から垣間見られてくる古代ギリシャの歴史及び、その歴史の中を生きた哲人のエピソードは非常に刺激的であった。その是非はともかくとして、新たな視線は注目に値する。
読了日：4月13日 著者：柄谷行人
http://bookmeter.com/cmt/46523353
■偶然性と運命 (岩波新書)
著者後書きでも述べられているようにエッセイの体裁をとった哲学書。著者にとって偶然性というのはかねてからテーマにしたい題材だったが、でもそのテーマの難解さゆえなかなか手が付けられなかったとのこと。穿った見方をすれば、エッセイという体裁はある種の逃げだったとも言えるか？確かに偶然と必然との境目というのは、かなり微妙な問題で、多くの人にとって興味深くもあるが、突き詰めて考えると深みにはまってしまうというのは、何となく理解できる。個人的には、終盤の『悪霊』の主人公スタブローギンについて述べた箇所が興味深く読めた。
読了日：4月12日 著者：木田元
http://bookmeter.com/cmt/46491899
■佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 新帝国主義編
時事ネタ本（？）ということで、世相に疎い者としては、「とっつきにくいかな…」と懸念したが、対談がかなりの部分を占めることもあって、思いの他さくさく読めた。ただ、その一方で「本書は五年後、十年後も読むに耐える物だろうか…？」という疑念もわく。実際、本書で取り上げられているニュースの多くは人々の記憶から忘れ去れているもの。そのニュースに対する佐藤氏の分析がどれだけの説得力を持ち得るのか？というのは考えどころ。それはそれとして、氏が力説する「新帝国主義の時代に入っている」という主張はかなりリアルに思えるが。
読了日：4月10日 著者：佐藤優
http://bookmeter.com/cmt/46445766
■若者よ、マルクスを読もうII
まえがきにて「日本という辺境においてこそマルクス蘇生の可能性があるのでは？」ということを述べていたのに、何とも言えない驚きと仄かな希望を感じた。『�機戮任發修Δ世辰燭�、石川氏の解説はわかりやすいとは思うのだけれど、やはり元のテキストが難解なため、かみ砕いて読まないとなかなか理解できない。それ比べて内田氏の文章は例の調子でさくさく読めて、しかも気持ちが良い（笑）。内田氏によると、マルクスのテキストに難解ながらも、ある種の快感を読者に与える要素があるとのこと。近々その体験をするため、マルクスを読んでみるか…
読了日：4月9日 著者：内田樹,石川康宏
http://bookmeter.com/cmt/46432272
■キリスト教の精神とその運命 (白水iクラシックス)
内容はともかくとして、もともと草稿という形で残された、いわば荒削りな作りになっているテキストに全く注釈をつけていないというのはいかがなものか？という気がする。特に著者独自の聖書解釈だと思われる箇所など、実際に聖書の内容やキリスト教神学の見解と対比させるべきだと思うが。それはそれとして、難解な内容ではあるけれど、読み進めていくうちにある種の高揚感を覚える魅力的なテキストであることも確か。ここで書かれた内容が後の作品の中でどう発展していったのか？ということも気になる。次はより詳細な注釈付きのものを読みたい。
読了日：4月7日 著者：GWFヘーゲル
http://bookmeter.com/cmt/46394365
■イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)
これまで読んできたイスラム関係の書物の中でもかなり良書の部類に入ると思う。イスラム教の成り立ちからその後の発展まで、わかりやすくコンパクトに纏めてある。それはそうと、ある程度キリスト教やユダヤ教に理解を示しつつ、その一方でどうしても譲れない一線を画しているイスラムのスタンスに、一クリスチャンとして何とも言えない複雑な気持ちになるということを改めて確認した次第。仮に上記の三つの一神の信仰の対象が同じ神だったとして、どうして同じ神を信じる人達が分裂するに到ったのか？という素朴な疑問がどうしてもわいてしまう。
読了日：4月5日 著者：小杉泰
http://bookmeter.com/cmt/46346721
■脱グローバル論 日本の未来のつくりかた
大方の人間は格差社会を求めはしない。しかし、なぜか結果として格差社会を推し進める政治家が跋扈する状況になっている…この矛盾について改めて考えさせられることに。この閉塞した状況を打開することを期待させるような威勢の良い言葉に安易に乗せられないこと、もっと地に足の着いた言葉に耳を傾けるようにすることの大切さを本書は教えてくれるような気がした。ここで語られることの大半は暗澹たる気にさせられるものだが、それでも草の根的な動きが徐々に出始めているという発言に仄かな希望の光が見えてくる。この光を消さないようにしたい。
読了日：4月5日 著者：内田樹,中島岳志,平松邦夫,イケダハヤト,小田嶋隆,高木新平,平川克美
http://bookmeter.com/cmt/46343749
■幼児の対人関係 (メルロ=ポンティ・コレクション 3)
シリーズ三冊目。先に読んだ二冊が哲学論集ということで、抽象的でわかりにくかったのに比べ、本書は心理学関係の物を中心に編まれたので、幾分とっつきやすかったとはいえ、いざ読み終えてみて、その内容について聞かれても殆ど答えられないという体たらく（笑）。やはりある程度フロイトや心理学の基礎知識がないと理解し辛いということか？それでも冒頭に収められた「幼児の〜」は講義録ということで、かなりわかりやすかったが。それにしても解説にあるとおり、哲学プロパーの人が心理学の講義を持つという自由な環境に驚かされる。
読了日：4月2日 著者：モーリスメルロ=ポンティ
http://bookmeter.com/cmt/46267218
■哲学は人生の役に立つのか (PHP新書)
タイトルから察するに、哲学の効用について論じたものか？と思いきや、以前読んだ『わたしの〜』とかなり内容が被る著者の自伝的エッセイという趣が強い。それでも、戦後の混乱の中闇屋をやった経験や、ハイデガーとの出会い、学究時代のエピソードはやはり時代的背景もあって、惹き付けられるものがある。とりわけ、哲学を言わば趣味か道楽のように語る、著者のスタンスが魅力的。それから終章での著者の親友や父親の死に纏わるエピソードには、遠くない自分の姿を見るような気がして、身につまされる。後、著者の読書の幅の広さに驚かされた。
読了日：4月1日 著者：木田元
http://bookmeter.com/cmt/46246017
▼読書メーター
http://bookmeter.com/
ログインしてコメントを確認・投稿する