１．中国語にそっくりなタイ語
大学に入学したとき何かアジアの言語を学んでみたいと思い、当時アジアの言語で唯一
選択外国語科目として開講されていた中国語を履修した。まず苦労したのが声調の四つの
型の違いを聞き分けることだった。半年経っても違いをはっきり識別することができなか
った。一年が過ぎたあたりから徐々に音感が芽生え、二年目にやっと聞き取れるようにな
った。私は（この亀の歩みのような）中国語学習を通して外国語を耳や口で覚えることの
面白さ、外国語の音に馴染んでいくことの楽しさを知った。
それから一、二年してタイ語学習を始めたとき、タイ語は中国語によく似ていると思っ
た。声調があることだけでなく、語形変化がなく、動詞連続体を多用するなど、両語には
誰でもすぐに気がつくであろう多くの類似点がある。実際、タイ語は中国語と同じシナ・
チベット語族に属すると紹介する言語学関係の書も多い。（タイ語の系統帰属については、
シナ・チベット語族に属するという説の他、オーストロネシア語族に近いとする説もあ
る 。） 両語に共通する特徴は次のように多岐にわたる。
�＿傘は世量未�らは、声調という特徴的な音素を持つ「声調言語」に分類される。
��形態論の面からは、語形が変化しない「孤立語」に分類される。
�Ｅ�語論の面からは、基本語順が主語、動詞、目的語となる「ＳＶＯ言語」に分類され、
複数の動詞句が接続詞を介さず連続することを許す「動詞連続言語」に分類される。
�ぅ妊�スコース分析の面からは、主語や目的語という統語上の概念よりも主題という情
報構造上の概念のほうが優位に働いて文章が構成されていく「主題言語」に分類される。
その他、文法範疇の値の特定化が必須ではない（そもそも文法範疇としての対立的パラ
ダイムを形成していない）点も共通している。これだけ似ていれば、中国語研究の成果が
安易にタイ語研究に敷延される傾向があるのもうなずける。
http://www.kuis.ac.jp/~kiyoko/NIHONGOGAKUMar06.pdf
世界の言語のル−ツは同じで地域でカスタマイズされたのだ。
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