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2015年04月01日00:22

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宝船

「結婚するということは、相手も自分も幸せになろうと努力することやで」
祖父が言ってくれた言葉だ。

祖父が天寿を全うして数年。春の陽気に誘われて庭に出ると、梅や桜、椿、紫檀(ロースウッド)
など木々を優しい眼差しで眺めながら佇む祖父の姿が目に浮かぶ。

祖父はいつも庭の手入れを怠らなかった。今では大きく枝を伸ばしている木々たちも、そのほとんどが祖父の子供の頃に苗木を植えたものだ。

桃の苗木。
祖父・幸男が尋常小学校に上がった夏の日、庭の縁石に見知らぬ老人が腰掛けていた。
幸男と顔を合わせた老人は巻物を括り付けた古い杖を支えに「よっこらしょ」と立ち上がった。老人がとても疲れている様子だったので、幸男少年は老人を呼び止めて、中庭の井戸から汲んだ水を手桶に入れて差し出した。老人は美味そうにゴクンゴクンと飲み干した。老人はすっかり元気を取り戻し、持っていた桃の苗木を「ほんのお礼じゃわい」と、幸男少年に与えた。

紫檀の苗木。
幸男少年が、下校途中寄り道をして、裏山の竹藪から釣竿になりそうな竹を1本拾って戻ろうとしたとき、野良犬に吼えられて怯えている少女に出会った。少女は(楽器の)琵琶を握りしめたまま身動きできなかった。幸男は竹を振りながら「シッシ」と野良犬を追い払ってやった。少女は安堵して喜びのあまり琵琶をボロンボロンと奏でた。すると、バチを持っていたはずの右手に紫檀の苗木が握られていて、にこやかにほほ笑みながら幸男少年に手渡した。幸男は初めて体験するロースウッドの優しい香りと美しい少女に魅せられた。

晩年の祖父は、ぼくに言った。
「あれは、弁天さんやったな。せや、絶対に弁天さんや」

祖父は言った。「それからも不思議な人達に出会う度に、なにかの苗木をもらったんやで」
桃の木は長寿の印。祖父も長らく元気だったが、その子供たち、つまりぼくの母や伯父たちは今でも元気に長生きしている。
紫檀は楽器の材木にされ、音楽芸術の象徴。我が家は、みな音楽好きで陽気だ。

祖父が出会った七人の不思議な人達がもたらした木々が、我が家の庭で家族を見守ってくれている。



これは勘違いしがち! 幸せな結婚ができる人とできない人のちがい4つ
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=60&from=diary&id=3346710
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