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2015年03月21日01:11

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オウム事件20年に思うこと

 上祐史浩氏の力作『オウム事件17年目の告白』を読んで思いついたことを、主としてオウムの修行論や、麻原の修行上の「ステージ」を論じる中で、以下記していきたい。
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 本書を読んで、この麻原の「ステージ」の件について明らかになったことがある。以前にも朧気に感じていたことだが、上祐氏が過去のいきさつを総合的にまとめた書を出版してくれたおかげで、今回はっきりと気づき、断言できることがいくつか出てきた。

 修行論の文脈でオウムを批判したものは少なく、その中でマトモなものは更に少ない。私見だが、なるほどと思わせたものは、整体の立場から書かれた、片山洋次郎さんの『オウムと身体』と、この件へのコミットを恐れなかったチベット密教学者の書である、正木 晃さんの『密教の可能性』『性と呪殺の密教』くらいのものであった。

 それは私のように、かつて密教修行をかじった程度の者で、最近自己流のいい加減な行まがいのことを再開した水準で、未だ低い境界をうろつく者に分かるのかと言われるかも知れないが、嘘でも高野山大院生(休学中。笑)として知っている程度の知識や、経験している程度の宗教体験でもはっきりと分かり、宗教関係者にだけではなく、一般の方にも納得してもらえるという自負のある内容を以下に述べることが出来ると思うのである。

 その際に必要な基礎知識だが、オウムの教義については、本書で言われている程度の内容で良いとして、その相対化のために、まず通常のヨーガの知識であるが、これは本山 博先生や成瀬雅春さんのヨーガ書籍で得られる程度のもの、仙道についての知識は高藤聡一郎氏の大陸書房やたま書房、学研で出されてきた諸著作で得られる程度のものがあれば、理解できると思う。
 ただ、さすがに、永久保貴一『カルラ舞う!』程度ではダメですよ(笑)。

【1.麻原のステージについてーー第8章を読んで】
 麻原は裁判で何も語らない/語れないが、廃人になる前/される前に接見を通じて信者に出したメッセージを聞いて驚いた事がある。
 
 それは「刑務所の中でも修行を続行している。大周天を成就し出神して、囚われの身でも自由になる」という意味の発言だ。
  上祐氏の著書『オウム事件17年目の告白』によると「陽神の完成に8年以内」と言っていたとされる。
 
 上祐氏も、今で言うアレフに残った元のオウム信者も、これを聞いた時に何とも思わなかったのか?!という驚きであった。
 
 これは「自分は最終解脱者でも何でもないし、アストラル次元どころか、コーザルのデータを云々出来るような存在では無かった」と宣言したに等しいのに。
 
 自分の虚構の体系を平気で無効化するような発言をしている時点で、私は、彼に裁判で話されてはまずい事がある国家権力内の勢力が、真相を闇の中に留めるために彼に対する口封じがこの辞典で既に始まっていたと思っている。
 
 警察・自衛隊・政治家・暴力団・ロシア・複数の宗教団体……皆の利害が一致しているからだ。事実、あれだけ報じられた諸問題が、裁判の場には一切出て来ない。公判の迅速化という大義名分でヤバい話は俎上に全く乗せられなかった。
 
 麻原は、鍼灸師だった。治療で「得気」は日常的に経験しただろうし、経絡に流れる気の感覚は当然最初から分かったろう。
 クンダリーニ・ヨーガに仙道の技法を併修したと著書では言っていた。
 
 だから、自分の修行を早めるために、気を体の正中に回す小周天段階では、経絡中の竅=自分のツボに鍼を打つ事くらいは当然していたはずだ。体表ではなく、深部に気を流せるようになるのを早める事ができた=通常の場合より、修行を早めることはできただろう。
 
 初期のシャクティ・パッドでは、信者に気を奪われ、信者の邪気を受ける事で苦しんでいた事が記されている。これは普通の鍼灸師や気功師でもある事だ。ということは、本人の能力はその程度のものである事になる。
 
 自分の気を出すだけでは消耗する一方だ。天地自然から気を取り入れ、それを流してやれれば、疲れないし無尽蔵だから幾らでも可能であり、自らの消耗の代償として高額な布施を要求する必要がなくなる。即ち、我欲や執着も無くなる。
 その天地と繋がった状態、自然に虚空からプラーナが流れ込んでくる状態が大周天という仙道のステージなのである。
 
【2.オウムのヨーガ[瞑想&クンダリーニ開発]のレベルについてーー第2章を読んで】
 自分の修行のステージが上がり、最終解脱をしたと言うなら、少なくともクンダリーニがサハスララという頭頂のチャクラを貫き開き、先の大周天と同じ状態でなければならない。
 
 そして、出神をするためには、陽神という、自分の意識を乗せたエネルギー体=分身を作れるまでに練気ができていなければならないが、それは大周天段階に達していることは最低条件の筈である。
 
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 ところが、先の発言は、それが出来ていないことを告白しているようなものであり、墓穴を掘っているに等しい発言である訳だ。
 
 信者がその矛盾に気づかないのも変だが、麻原がこの発言をすれば、自己の修行階梯が正しさの証明だとしてきた今までの教義が破綻する事に気付かないわけがない。詐欺師は荒唐無稽な話はするが、そのストーリーの内部では首尾一貫している屁理屈をこねる訳で、用意周到な筈だからだ。

 ということは、上祐氏の上掲書での回顧によると、96年11月頃から公判での麻原の様子がおかしくなったとされているが、逆に考えれば、このメッセージを出した時点で、彼が薬物でおかしくされ始めていたのではないかと思える訳だ。拘禁反応でそうなるとは思えないからだ。
 
 オウムのアニメ「超越神力」の有名なオープニングで、空中浮揚したまま、高く空に昇り、水平に飛ぶ中で、聖者や神仏にすれ違う場面が流れてているが、あれは出神した麻原の陽神がコーザル界を通過している訳だろう。それが出来るのが最終解脱者である自分だと過去には言っていた訳だ。
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 それを自ら打ち消す発言をした人間を平気で信じていた信者の思考停止ぶりはすさまじいし、今のアレフの連中もアホではないかと思う。
 
 何にせよ,クンダリーニ・ヨーガや仙道を行おうとしている真面目な真言密教や修験道の行者には、甚だ迷惑な話である。

  
 出神飛行のオープニングを探したら、曲のみのものが見つからず、下のようなアニメ総集編のものしか無かった。これらのエピソードの大半が嘘だということになる訳だ。
 
【ご参考】オウム布教アニメ『超越神力』01ー10
  未見の方は、上のキャプチャ画像の出典の有名なOP主題歌だけご覧下さい。
   http://www.youtube.com/watch?v=2hH547DGhVk

[参考文献]
麻原彰晃『ザ・超能力 秘密の開発法』(オウム出版)
正木 晃『密教の可能性―チベット・オウム・神秘体験・超能力・霊と業』(大法輪)
正木 晃『性と呪殺の密教ーー怪僧ドルジェタクの闇と光』(講談社選書メチエ)
片山洋次郎『オウムと身体』(日本エディター出版)
本山 博『密教ヨーガ』(宗教心理出版)
本山 博『チャクラの覚醒と解脱』(宗教心理出版)
リードビーター(本山&湯浅 訳・解説)『チャクラ』(平河出版社)
秦 浩人『中国仙道 房中術入門』(星雲社)
謝 明徳『タオ性科学』『タオ性科学・女性編』(エンタプライズ)
歌川大雅『密教神秘術ータントラ・オカルト』(桃源社)
高藤聡一郎『秘法・超能力仙道入門』(学研)
高藤聡一郎『秘術・超能力気功法奥義』(学研)
高藤聡一郎『仙道錬金術・房中の法』(学研)
高藤聡一郎『秘伝・チベット密教奥義』(学研)
高藤聡一郎『仙人瞑想法』(大陸書房)
矢山利彦『気の人間学(正・続)』(ビジネス社)
矢山利彦『気でひきだせ、無限の治癒力』(太郎次郎社)
柄谷行人『「戦前」の思考』(文藝春秋)
など。
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