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2015年03月20日07:46

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桂 米朝 師、逝く。

 漫才といえば上方が圧勝するが、落語というとイコール江戸落語、代名詞のような思い上がりで語るバカモンどもがいるが、そもそも江戸落語のネタの大半が上方由来のものであって、話芸である以上、漫才同様、上方落語の方が本来は面白いに決まっているのだ。

 そういう夜郎自大の錯覚が生まれたのは、上方落語が米朝・松鶴・小文枝・春團治の四天王によるルネサンスまでは廃れていた事情があったからだ。庇を貸して母屋を取られてたが如き状態だったのだ。
 
 ただ、本当の意味での米朝落語を継ぐ者は、桂 吉朝 師だったが、先に逝かれてしまい、落胆のあまり、ほどなく米朝師匠は自身も高座に立てなくなってしまった。

 青土社「ユリイカ」桂 米朝特集号の月亭可朝インタビューでは、次のように言われていたという。
「枝雀には50%教えたが死んでしもた。吉朝には100%教えたが死んでしもた。可朝には30%しか教えていない(から生きている? 笑)」

 吉朝師の死に対して「弟子ではなく、上方落語の<同志>やと思うてました」と、弟子の出藍を認める発言をされていた。彼の死は、落語の世界での我が子、真の後継者、自身の最高の作品を失ったことになり、上方落語の将来自体も実質的に終わったことを意味する。

 吉朝師匠が米朝師匠のお年まで長生きされたら、さらなる上方落語のルネサンスが起こり、米朝師匠以上のお手本が長く見られることによる話芸としての底上げが起こり、勘違いした江戸落語の連中など足下にも寄れない水準に達したであろう。
  
 四天王無かりせば、上方落語の復興もなかったように、「人」がいるかいないかが、全てを決める。その四天王の弟子が全員おのおのの師を出藍し、それが継続されていかなければ、文化として洗練されていくこともなく縮小再生産に陥り、上方落語家の数だけがいくら増えても形骸化し、「粋/洗練」と「貧血」を勘違いしている、今のつまらない江戸落語の世界と変わる所が無くなってしまうのだ。吉朝師の死は米朝師匠の死を先取りする形で、上方落語の終わりの始まりを意味していたのだった。
 
 つまりは、ざこばや南光では米朝落語、いや上方落語の後継者としてはダメなのだ。米朝師匠には吉朝師がいたが、他の四天王の弟子に師を出藍した者はいたのか。松鶴師匠には松喬亡き後は仁鶴や鶴瓶しかおらず、小文枝師匠には文枝襲名など烏滸がましい三枝、春團治師匠には春之輔しかいなかったではないか。

枝雀の自殺も、服用していた降圧剤の副作用による鬱が影響していようが、今までのデフォルメの過ぎる邪道なスタイルを中年を経た後、米朝師匠の年まで続けられるのか、かといって、米團治系の端正な落語に戻れば、自分の個性が失われる、それを見事に現代的に折衷した落語はすでに吉朝が自家薬籠中のものとしている……人が厄年の前後に経験する「人生の午後三時」の反省による自己嫌悪による自己否定が大きく影響しているだろう。
 枝雀落語は、いわば徒花であり、彼が上方落語をしょって立つことは出来なかったろう。そのことは枝雀自身が最も分かっていたが故の結末だったろう。
 
 ましてや、古典を現代に生かすことから逃避しているようなバカモンが協会長であるような、今の上方落語協会には、もうほとんど可能性はない。米朝師匠が最も嫌っていたのが、三枝(文枝襲名など烏滸がましい!)のやっているようなことであった。

 といって、古典をやっている自分の一門ならいいのかといえば、実の息子の小米朝=米團治のヘタクソさはお話にならない。米團治を襲名するなど烏滸がましいにも程がある。
 また、吉朝師の弟子筋でも、吉弥やあさ吉では到底ダメなのだ。それ以外で正統派といえば、枝雀を出藍した文我くらいしか一門にはマトモな落語家がいない。
 これでは実質的に滅びるしかないだろう。せっかくの四天王のルネサンスも水泡に帰し,江戸落語化は避けられまい。

 米朝師匠は元々は評論家になろうとしていたように学究肌だから、パフォーマンスが凄い訳ではなかったので、玄人はだしの笛、日本舞踊、能や歌舞伎の所作にも通じた吉朝師は本当に弟子を越えた、米朝師匠の最高作品だったのだ。
   
 生前のお二人の落語を生で多くを見られたことは、ゴミのような落語家しか見られない今には無い幸福であった。

 
桂 吉朝
「たちきり」……人情噺。上方版の凄さを知れ。確実に江戸より上。現・米團治のものなど、吉朝氏の足下にも及ばない。
http://www.youtube.com/watch?v=S3bd2DPyX6c

「高津の富」……もちろん上方がオリジナル。確実に江戸より上。
http://www.youtube.com/watch?v=5n05VJ2M6Ao

「七段目」……歌舞伎噺は独壇場。現・米團治のものなど吉朝氏の足下にも及ばない。
http://www.youtube.com/watch?v=ELxqfl31WV8

「愛宕山」……京都の愛宕山=むろん上方がオリジナル。
http://www.youtube.com/watch?v=0flq-JS1qnA

「狐芝居」 ……吉朝さんのために作られた古典のような新作落語(小佐田定雄 作)。
http://www.youtube.com/watch?v=bm0wy_NBKh4

「宿屋仇」……もちろん上方がオリジナル。確実に江戸より上。吉朝さんの映像音源がないので証拠が示せないのが残念。YTV平成紅梅亭のパフォーマンスがYTに上げられるか、DVDになる事が望まれる。
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