幕上雑感ネタバレ含

　映画「幕が上がる」に対する私の感想は、「大絶賛」」「号泣しました」というものではなかった。
　泣きはしなかった。じわじわはした。でもそれは物語に対してではなく、たぶんももクロの道のりに対するものだったように思う。

「幕が上がる」について、私はかなり期待していました。
　たぶん、ファンの中でも期待値高かったほうですよ、かなり。
　原作も9月には読んでたし、雑誌も抑えて、ノベライズも読んで、舞台挨拶やらさぬき映画祭やらは行けなかったので、公開日を心待ちにしていました。
　結果、不満がちょろちょろ現れる感じになっちゃいましたね。
　まぁ基本文句の多い性格なのですけどね。

　映画については、期待通りというか、良くも悪くも期待通り。
　演技は、大いに向上していたと思います。
　とくに、百田さんの演技が素晴らしく変化していた。今までは、何をやっても「百田夏菜子」　ももドラでも天使とジャンプでも、そこにいるのは百田夏菜子。
　それが、今回は高橋さおりという役に入っていたように思いました。
　百田さんの演技は、今回の一番の収穫だったと思います。

　以下、自分の意見と、感想戦にて出た意見をまとめて。
　人のふんどしで相撲を取るのが、最近のトレンドですので。

　冒頭の大道具とか燃やす場面、部長を決める場面、
　百田さんの「ちょ、やめてよ」「ねえ、」というセリフの抑揚のダメさ加減。
　あれ、これはどうなってるんだ・・・　平田オリザのワークショップがどうこうで芝居上達したんじゃなかったのかよ・・・　と愕然としましたが、物語がすすむに連れて（おそらくは撮影がすすむに連れて）、高橋さおりという役をまとっていって、素晴らしかった。
　玉井さん、有安さんの演技の評価が高いようですが、私には百田さんの演技が光ってみえました。玉井さん、有安さんは「演技してる」感じ。百田さんは「演技していない」感じ。
　高橋さおりを演じるのではなく、高橋さおりがしゃべっている。
　自然な芝居が出来ていたように思います。

　冒頭のものを燃やす場面の百田、玉井のダメ演技。
　れにちゃんのカンチョーとムロツヨシのカンチョーは校則禁止だ。
　あの場面でムロツヨシのこの映画における役割がよく現れてましたね。

　有安さんは、中西さんという設定が原作と変わったことで、へんなかんじになってしまいましたね。
　天才女優から、滑舌の悪い「周りに迷惑をかけるから」という設定に変わったことで、いろいろ不都合が起きたように思います。
　東京のビルを見たあとに、「先輩、卒業後はどうするんですか？　女優になるんですか？」に対して、「女優になるよ」みたいな返しの違和感。
　中西さんが「みんなの足をひっぱるのがいやで…」という存在として設定変わったことで、ユッコがジェラシー燃やす必然性がわからなくなった。女優としてではなく、仲のいい友達をとられてジェラシーみたいになっちゃってた。
　さおりが中西さんに注目する理由もわからなかった。

　百田さんと有安さんの、電車の駅での夜の場面。
　ふたりの会話があって、そのあとで電車が入ってくるところで「銀河鉄道みたい」
　そこで夜空を映して銀河鉄道が走っているイメージであの場面終わってもいいのに、そこからまたアップになって、「一緒にやろう」という力強いセリフがあるのが印象的。

　あーりんは、あまり印象を残せませんでしたね。明美ちゃんという役で、ちっちゃくまとまってる感じ。地区大会で失敗して、うつむいて落ち込んでるあとのハンバーグ屋で「いくぞー、ぜんこくー！」って何で浮かれてんの感。

　高城さんは、高城さんでしたね。
　西条美紀という個性より、高城れにという個性。

　夏菜子ちゃんは、脚本を書けない作家としての苦悩、演劇としての葛藤があって、脚本を書く過程がドラマとして描かれていて、その成長がドラマになっていた小説と、そこのあたりが描かれていなかった映画。
　演劇の入門本としてすぐれていた小説と、部長としての人間関係的なもので成長を描いた映画。
　平田オリザは「この映画をみて、受験を終えて４月に高校に入る生徒が高校で演劇部に入ってもらえたらうれしい」といったことを言っていましたが、どうなのか。
　原作を読んで、演劇おもしろいと思ったけど、映画を見て演劇部に入ろうとホントに思うのかな、という。

　最後のシーン、銀河鉄道の芝居を流さなかったのは残念。
　スウィングガールズでも書道ガールズでもフラガールでもウォーターボーイズでも、パフォーマンスを見せて納得させて終わる。素人だった俳優がフラダンスなりブラスバンドなりの練習をして、その成果を見せて、クライマックスで盛り上がって終わる、というのがあった。
　最後に、銀河鉄道の舞台を見せずに終わったのは、それで観客を納得させる自信がなかったんだろうなぁ、という。舞台の演技で盛り上げるの難しいだろうし。でも、やってほしかった。


　んー、まだまだいろんな意見があったな。
　17時から23時までずっとしゃべってましたからね。
　前売り券はしこたま買ってあるんで、また映画を観て、あらためて感想をまとめたいと思います。