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2015年02月28日01:28

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「ハムレット」(シアター・ドラマシティ)2/22

藤原竜也くんのハムレット。2003年に21歳で演じたときは見ていなかったから、今回は是非見たかったのです。そのときの竜也くんとは置かれた環境も何もかも違うし、同じものにはならないけれど、今の竜也くんが、敢えてこの役をもう一度やりたいと蜷川さんに願い出たという。そして、蜷川さんも、病を得て稽古場に車椅子で現れる姿がTVで流れていたし、それを見て随分お痩せになっていたことに驚いたりもしました。そんな人たちのつくりだす今の舞台を、生で見られること。本当に、一期一会だなあと思います。それに、2003年の私が竜也くんのハムレットを見ていたとしても、まだろくに舞台を見た経験もない自分にどこまで受け止められたかもわからないし、今だからっていうこともたぶん、たくさんあると思います。とはいえ、シェイクスピアをちゃんと理解できるだけの下地が自分の中にあるかというと、やっぱり足りないものがたくさんあると改めて思います。だから、もっと知りたいし、もっと分かるようになりたい。わからないところがあっても、それを飛び越えるいきおいで面白いと思えるような舞台が好きなのかもしれません。なんだか、こんな心が騒いだ舞台は、久しぶりかも。
「ハムレット」を舞台で見るというのは、たぶんこれが初めて。もちろん有名な戯曲だから話は知っているし、有名な台詞もいっぱいあるのは知っています。でも、改めて、こんな話だったんだ、と気づいたこともたくさん。思っていたのとちょっと違ってたっていうところも。それは自分の思い違いなのか、演出がそうなのかはわかりません。けれど、ハムレットの復讐劇以上に、生きるということのもっと根源的なことを問いかけてくる物語。それは蜷川さんが言うところの「日本人がシェイクスピアを演じることの意味」と重なり合うようで、提示されるのはたぶんとても重たくて大きなテーマ。物語も人がたくさん死んでいったり、憎しみや狂気でずっしりと重たいはずだけれど、見終わった後にはなんだかとてもすっきりした気持ちになったのはなぜだろう。
竜也くんは、もう冒頭から汗びっしょりの熱演。演じるというよりも、そこでハムレットを生ききったような。改めて、この人は舞台の上でこそ生きている人なんだなと思います。いつも彼はカーテンコールでも難しい顔をしているような印象だったのに、ここではなんだかとても清々しい笑顔を見せてくれて、だからこそ、見ていてすっきりしたのかしら。なんだか、今まで見たことのない竜也くんだった気もします。
オフィーリアの満島ひかりさんは、舞台で見るの初めて。知ってるけど、映像とかでも今まであんまりちゃんと見たことないかも。全体の雰囲気はとても静かな印象。どこかとらえどころがないようでもあり、ハムレットのこと、本当はそんなに好きじゃないのかしら?とも思えるくらいに。後半の狂気も、静かに壊れている姿にはっとさせられました。
オフィーリアの兄レアーティーズを、ひかりさんの弟の真之介くん。実の姉弟で、兄と妹を演じるのは逆に難しいのかもしれませんが、微笑ましくも愛らしい兄妹。それから父親と、本当に仲良しで幸せな家族の姿。真之介くんのレアーティーズはまっすぐすぎて暑苦しいくらいですが(笑)それがハムレットと明確な対比になっていました。
ホレイシオの横田栄司さんは、昨年の「ジュリアス・シーザー」で竜也くんとシーザーとアントニーと、この時も同じようにともにある役で、今回もハムレットの一番近くで理解者として寄り添ってくれるホレイシオ。当たり前ですが、シーザーの雰囲気とがらっと変わっていて、すごいなあ。
平幹二朗さんのクローディアスは、やっぱり印象的なのは、井戸での祈りの場面。本当に水をかぶっていたのでびっくりしましたが。ただ悪い人にはならずに、心の内の苦しみが印象的。
鳳蘭さんのガートルードの女性的な色香のインパクトも絶大で、いや、そりゃ、兄の妃だったとしても欲しくなっちゃうんだろうな、と思わずにいられません。
謎すぎたのが、フォーティンブラスの内田健司くん。台詞をぼぞぼそと囁くように喋るので、はっきりいってほとんど聞き取れません。いいのか、それ!?あまりの聞こえなさに、間違いなくそういう「演出」なんでしょうけれど、意味がわかりません。

演出は、日本的なものをたくさん取り入れて、舞台のセットは「ハムレット」が日本で初めて上演された19世紀末頃の長屋の風景。登場人物の衣装も、上はスーツみたいになっていても、下がスカート?と思いきや、たぶん袴っぽい感じ。劇中劇の役者たちは、お雛様の雛段に、王と王妃はお内裏様とお雛様。父王の亡霊の登場は、完全に夢幻能の世界。これがものすごくはまっていてびっくりしました。台詞とかそのままでも、きっちり夢幻能の形式にはまるっていうのが驚きでした。西洋の演劇に日本的なものを混ぜて、それが違和感なくとけこむって、実はものすごいことだと思いますが、蜷川さんのそういうところは好きだったりします。まだまだいろんなものを見せて欲しいので、まだまだお元気でいらしていただきたいものです。この日、観劇して帰って来たところに、三津五郎さんの訃報だtったりしたものだから、余計に、同じ時代を生きて生で舞台を見られるのって当たり前じゃなくて、いつかこうしていなくなってしまうということを意識せざるを得なくなってしまいました。そんな訳で必要以上にいろんなことを考えさせられてしまう観劇となりましたが、それでも、今こうして、こんなに心を揺さぶられる舞台を見られることの幸せに感謝です。
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