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2015年02月22日07:47

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二期会「リゴレット」(三日目)

指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:二期会合唱団
マントヴァ公爵:古橋郷平
リゴレット:上江隼人
ジルダ:佐藤優子
スパラフチーレ:ジョン ハオ
マッダレーナ:谷口睦美
ジョヴァンナ:与田朝子

 基本は初日と同じだが、3日目とあって全体がだいぶこなれてきたよう。初日の緊張感もいいけど、安心して聴けるのも悪くない。指揮は、やはり素晴らしい。切れ味や幕切れの盛り上げだけではなく、オケのフレーズや音ひとつひとつを、しっかりとドラマに奉仕させている。だからこそ、何度聴いたかわからないこの曲を、新鮮にまるで初めて聴くように聴くことができる。

 隣のご高齢の女性が、初めてこのオペラを聴くようで、ドラマに入り込んで溜息をついたり、可哀想とつぶやいたり、最初はちょっと煩いと思っていたが、その内ホントそうですよねと、こっちも一緒に心の中でつぶやくようになっていて、まったく気にならなくなった。いまさら、ここまでドラマの中に引っ張り込まれるとは思わなかった。

 初日は最終幕の三重唱のヒリヒリするような緊張感が凄かったが、昨日は慣れたのかそこまでの緊張感はなく、これで終わりかと思った、最後の二重唱でオペラの神が降りてきた。オペラは神が降りてくると、なにか時間が止まるような不思議な感覚になるが、昨日の二重唱ではその感覚が生まれた。これは、めったにないこと。

 歌手については、みんな限界突破。特にジルダの佐藤。初日は緊張からかどうしても堅かったが、昨日は思い切ったような伸びやかな歌唱。特に2・3幕は乙女が女になりレッジェロからリリコ気味に変化しなければならない。初日はその変化がみられなかったが、昨日はしっかりとした強い表現も交えて、変化を示していた。まさか初日から急にここまでよくなるとは思わなかった。当然カテコでブラバー。

 古橋も肩の力が抜けて、ペース配分もでき、本来の声質のよさを発揮していた。あとは技術で、2幕のアリアのカヴァレッタでちょっとミスが出ていたが、この辺りはこれからだろう。とにかく、成長株であることは間違いない。しかし、この指揮者は若手歌手を急激に成長させる、なにか魔法でも使ってるんじゃないだろうか。 

 上江も慣れたようで、初日の緊張感はなく、指揮者もかなりまかせていたようだった。そのため、スタミナ守って流してるかなと感じる部分もあり、2幕のアリアも初日の方が少しだがよかった。その分、最後の二重唱で残ったものをすべて吐き出していた。文句なくブラボーだろう。彼としてもエポックとなる公演だったと思う。貴重な日本のヴェルディ・バリトンとして、先は長いと思うがさらに精進して欲しい。推しメゾの谷口も出番は少ないが、よかった。

 このオペラ合唱も一人の主役だが、ドラマと密接に結びついていて、指揮者のかなり厳しい要求によく応えていた。オケも、この指揮者でスカラやウィーンだったら、なんと言う声も聴くが、逆に東フィルだから指揮者がここまでやりたいようにやれた、と言うこともできよう。とにかく、オケのメンバーとはいい人間関係ができているようだ。

 来年はトロヴァトーレだという風のうわさ。本当だとすると今から楽しみだが、できればルイザ・ミラーかスティフェリオを聴いてみたいとか、仮面やオテロは、なんて夢も膨らむが、まああせらずに願っておこう。引っ張りだこだと思うが、日本からも引っ張っておかないと、ということでカテコで指揮者にブラボー3連発(最高のおもてなし、めったにやらない)かましておいた。


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