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2015年02月16日18:04

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『凶悪』

映画『凶悪』を観た。

(2013年 日本 監督:白石和彌
出演:山田孝之 ピエール瀧 リリー・フランキー 池脇千鶴 白川和子 吉村実子 小林且弥 ジジ・ぶぅ 村岡希美 斉藤悠 米村亮太朗 松岡依都美 九十九一 外波山文明)

これは、旦那のチョイス。今回、少しネタバレ気味なので、ご注意を…。

【ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め…。(シネマトゥデイより)】

これ、実話なのね。…ビックリ!

原作は、ノンフィクション小説「凶悪−ある死刑囚の告発−」。

死刑判決を受けて上訴中の被告が、余罪を告白するって…。よっぽど「先生」がシャバでのうのうと生きてることが許せなかったのか、それとも自らの延命の画策なのか…。

実際には「茨城上申書殺人事件」と呼ばれている事件が元になってるのだそうで、「新潮45」という雑誌社に、獄中のある暴力団組長から手紙が届いたのがきっかけらしい。Wikipediaを読んでみると、なるほどこの事件がベースになっているということがよくわかる。しかも、それぞれの事件は事実とさほど変わりなく脚色されているようだ。

どことなーく園子温作品の臭いが漂ってくる。でも、園作品のように“突き抜ける”ようなエンタメ性がない。そう、真面目なのだ。実際にあった事件を、淡々と描き出しているような。

うーん、大袈裟な描写がないのよね。実際の事件もこんな感じだったんだろうなって。だから、誇張がなさそうな分、余計に怖いのだ。

フォト


特に、リリー・フランキーとピエール瀧。本職が役者ではないこの二人が、異彩の輝きを放っている。

リリー・フランキー演じる先生は、普通のおじさんに見えて、実は猟奇的。だけど、あまり声を荒げたりするタイプではない。楽しそうに、あっさりと人を殺してしまうところが本当に怖い。

ピエール瀧は、顔と名前が一致しない役者さんの一人だったんだけど、もうこれで覚えた(笑)どこにでもいるやくざの組長、須藤。組織の規模が小さいのがご愛敬。暴力的で、自分勝手なように見えるが、実は人間臭いところがある。

そして、須藤の手紙を受け取る記者に山田孝之。今回は意外とおとなしい役だなと最初は思ってたんだけど、ものすごく難しい役だということに途中で気づいた。やはり、彼は癖のある役ほど上手い。

なんて怖い作品だろう。キーワードは「老人」。以前観た『楢山節考』を思い出すわ〜。先生は、無用に生きていると思しき老人をターゲットに生きている。先生への恩義から、それを手伝う須藤。事件の中には、まるで“姥捨て山”のようなものもあった。

一見なんの関係もないような記者・藤井の家族。彼の母親は認知症気味で、妻(池脇千鶴)が面倒を見ている。しかし、藤井は家庭を顧みず、事件の解明にのめり込むことになる。ここにも、キーワードの「老人」が…。彼が事件に没頭してしまったのは、現実逃避もあるだろうが、自身の母親のことが大きく影響しているとみられる。…これって、映画用の脚色かしら。

とても印象に残ったシーンがある。「死んでった人たちの魂を救えるんだよ」という藤井に対して「きれいごと並べないでよ。あたしは生きてるんだよ」と訴える妻。彼が、自分の家族に背を向けてしまってるのが悲しい。…ってことは、私は池脇千鶴に感情移入してたのか…(笑)

なんとも人にオススメしにくい内容ではあるけれど、なかなかの出来栄えだったのでは。「キネマ旬報」でも上位に入ってたし…。

でも、好きにはなれない作品よねぇ。残念ながら。



『楢山節考』(木下恵介監督)
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