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2015年01月17日17:40

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『貝殻』

『貝殻』      あおい満月


いちまいの、
皮膚を引き裂いただけで
死滅していくウイルスたち
その骸が、
この指先で
ちりちりしている。
ことばを生み出したい
海に出したい。
ねがいはいつも、
出ては欲しくない場所から
漏れて染み出てくる。



映像は苦手。
音楽が好き。
皮膚にぴたり
寄り添ってくれるから
嗄れた声は、
いつも1分後の世界を指差す。
この目が映像を嫌うのは、
この身体を産んだ海が濁っていたからだろう。
出来損ないの目玉焼きは
あの人の目のようで痛々しい。

**
螺旋階段が斜めにどこまでも続いている
その奥をのぞくと
どこからともなく潮騒が聴こえる
胎動に似た、
どこか懐かしい響きに導かれて
階段を降りると
鏡のなかの針になった目が話しかける
雨の冷たさで目が覚めた。
身体はぐっしょりと冷たいのに
このからだの貝殻の奥底にある
やさしい海の音楽に
満たされながら眠っている。

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