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2014年12月10日19:33

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【映画】 インターステラー 【☆4.5】

※ネタバレ全く自重していませんので、今後観る予定のある方は読まないことをお薦めします。
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【インターステラー】 (Theatre)
2014年
総合評価 4.3 → ☆4.5

「シナリオ」 (1.0) … 5 → 6
「演出全般」 (1.2) … 4 → 4.8
「心理効果」 (1.5) … 4 → 6
「視覚効果」 (1.1) … 5 → 6.6
「音響効果」 (0.9) … 4 → 3.6
「教養/啓発」 (0.8) … 4 → 3.2
「俳優/声優」 (0.7) … 4 → 2.8
「独創性」 (0.8) … 4 → 3.2

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【最初に】
この映画を楽しむためには、特に一般相対性理論を理解する必要は無いと思います。ただ、1点だけ重要と思われる予備知識を挙げるなら…

「重力が強い場所ほど時間が遅く進む。」

という法則です。細かいことはおいといて、とりあえずこの事実さえ知っておけば大丈夫です、多分。
それよりも、

「次元数」

の概念をイメージできていないと、この映画の真価を見落としてしまうかもしれないので、その知識も併せて推奨です。私なりのイメージを末尾に書いておきました。不備があればごめんなさい。


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【ストーリー】



<序章>
フォト

舞台はそれほど遠くない未来の砂漠化が進んだ地球。
主人公の娘の部屋で頻繁に起こる心霊現象がキッカケで、NASAの施設を見つけ、主人公は人類を救うため愛する家族を残して宇宙の旅へ出る。

NASAは人類を存続させるための「ラザロ計画」を実行している。既に土星付近に発生したワームホールの先の遠い銀河に生存可能性のある惑星を3つ発見しており、主人公達は、それらの惑星に探査ロケットで向かうことになる。その後の計画は2種類あり…

プランA→「宇宙ステーションを中継地点として、現存人類を生存可能な新惑星に移住させる」

プランB→「探査ロケットに積み込んだ人類の遺伝子を、生存可能な新惑星で培養して人類を増やす」


プランAが最善であり、プランBはプランAよりも簡単だけど、地球人類を見捨てることになる。NASAのトップが言うには、プランAを実現するためには「重力解析」の方程式を解くことが必要条件だが、それはまだ未解決とのこと。解決を期待しつつ、主人公は仲間3人+人工知能1体と宇宙へ旅立つ。






<水だけ惑星>
フォト

ワームホールの先の銀河へ無事移動した主人公含む4人と人工知能1機。ワームホールを通してメッセージのやりとりはできるが、地球から受信はできても、地球へ発信はできないとの事。また、その銀河には老齢のブラックホールが存在していた。

3惑星のうち、最初に調査する事になった「水だけの惑星(仮称)」はブラックホールに非常に近く、その重力によって時間の流れが極端に遅くなっている。その差は、惑星での1時間が地球での7年!
家族と再会したい主人公としては絶対近づきたくない惑星だが、やむを得ず滞在時間を最小限に抑える努力をしつつ、その惑星への着陸を決行。
しかし、そこは本当に水と津波しか無いような惑星で、生存信号を発しているはずの先人は不在で、発信機は残骸となっていた。それを見て主人公達は、数時間前に到着した先人がつい数分前までは生きていて、信号を発していたが、その後、先人もろとも機械も津波によって破壊されてしまった事を確信する。

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このへんのカラクリを正確に理解するには、以下のような思考ステップが必要になると思う。信号が光速度で発信されているなら、秒速30万kmとなる。そして、ここの惑星上では、地球と比較した時間の流れを計算すると1/61320、これを光速度に当てはめると300000/61320となるので、地球視点での秒速5kmぐらいの移動が可能だとわかる。すなわち、1分もあれば300km飛んで重力圏を脱出して、後は秒速30万kmでワームホールを突き抜けて地球に到達する。ちなみに土星から地球までの光の到達必要時間は80分。その後地球から水だけ惑星への人間の移動に数年かかったとしても、水だけ惑星では数十分しか経過してないのである。

例えば生存可能信号を発信した直後に津波が襲って30分後に死亡したとして、その30分間は正に信号が地球に到達するための僅かな時間と、主人公達が出発して、水だけ惑星に到着するまでの数年間とほぼ同じ期間と言う事になるのだろう。
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その後水だけ惑星に探索に来た3人のうちヒゲは津波に飲まれて死亡。主人公とヒロインは大幅な時間ロスの上脱出する。母船に戻ると、留守番をしていた残り一人の仲間(以下、留守番)が老けている。23年ぐらい待ち続けたとの事。その間ひたすら重力方程式の解明に取り組んでいたが、どうやらブラックホール内部の特異点の情報が必要不可欠だと分かり始める。







<氷の惑星>
フォト

いきなり予定外の損害を受け、残り二つの惑星を訪問する予定だったところを一つに絞らなければならなくなった。ヒロインは彼氏がプレリサーチに入った惑星を推す。私情丸出しだが、むしろ開き直って「理論よりも愛の方が信頼できるし!」とか言い出すが、却下。残り片方の、チームのリーダー的存在の天才科学者(以下、サイコ)がプレリサーチに入った惑星を選択する。そこは氷の惑星で、サイコは冷凍冬眠状態だったので起こして事情を聞くと、どうやらこの惑星の氷の下には居住可能な環境があるとの事。サポートの人工知能ロボットは、性能が落ちたとして破壊されていた。


さて、その頃地球上でも23年が経過していたが、主人公の父親は死亡し、息子は農夫として家庭を持った事をメッセージで知る。また、仲違いしたままの娘は科学者としてNASAのトップと共に「プランA」の解決に取り組んでいた。行き詰まっている方程式に根本的に疑問を感じた娘は、トップに問いかけるが、トップは何故か逆ギレして聞いてくれない。その後トップが病院にて死亡するが、死亡の間際に「方程式はもう解けていた。プランAは不可能だという結論で」と言い残す。マジギレした娘は探査ロケットに向けてメッセージを打ち出す。「お前ら地球見捨てたんか?」と。

ちょうどそのメッセージを受け取った主人公達。サイコと留守番はその事実を知っていたが、主人公とヒロインは完全に初耳。主人公はそれを聞いて、準備が出来次第任務放棄してすぐ地球に帰ることを決意。最後の仕事として、氷の惑星の調査にサイコと共に向かうが、サイコがいきなりトチ狂って主人公をアタック。「実は、この惑星は居住不可能。でも俺はここで諦める訳にはいかない。お前の乗ってきた宇宙船を使って次の惑星に向かうから、お前には死んでもらうぞ」とのこと。

肉弾戦で負けた主人公はヒロインに助けを求める。留守番は破壊された人工知能を調べていたけど、トラップか何かで爆発して死亡。サイコは小型船に乗り込んで、母船を乗っ取りに向かう。ヒロインと主人公も追いかける。母船は一部破壊されたものの、高度なドラテクを駆使して、無事母船に帰還。サイコは死亡。







<ブラックホール>
フォト

方程式が解けない理由は、ブラックホール内部、特異点のデータ不足であることが、地球上でもロケット内でも判明した。とはいえ、ブラックホールの内部調査など不可能なので、事実上解決不可能となっているのだが、先ほど死んだ留守番は、ダメ元でブラックホールの付近を経由して特異点の量子データを採取しようと提案していた。冷静に考えれば無理過ぎるのだが。母船が損壊した主人公達は、地球に帰るのを諦めて、ブラックホールのデータを採取しつつ、重力ターンを利用して、最後の彼氏の惑星を目指すことを決意した…。

間違いなくこの時点で、主人公は地球への帰還を完全に諦めていただろう。それどころか、プランAの人類救出も、家族との再会も諦めていたはず。

その理由は、特異点が観察できるほどに事象の地平線上に近づくなら、先程の水だけ惑星なんかよりも遥かに地球時間をロスすることになるからである。あれだけ家族と再会する為に時間のロスを拒んでいた主人公が、「この際、相対性理論は無視だ(笑)」と言うシーンがたまらないです。

実は、ヒロインは知らなかったが、重力ターンの過程で、二人のうちのどちらか一人を犠牲にする必要があり、主人公はその犠牲になる事すらも決めていた。最後、ヒロインの船を押し出してブラックホールの深遠に墜ちていく主人公と人工知能。そこは前人未到の事象の地平線の向こう側だった。尚、この一連の行動で更に経過した地球時間はおよそ50年。もはや色々な意味で絶望的な状況と言えた。







<五次元空間>
フォト

少し時間を戻して、主人公がブラックホールに近づく直前に、娘は何とか重力方程式を解こうと悪あがきをしていたが、急に自分の部屋の心霊現象を思い出して、何か手掛かりがないかと帰省して調べる。そもそもNASAの場所を教えたのもその幽霊だった。

そして、その姿を本棚の裏から見ているのは、ブラックホールに墜ちたはずの主人公…ブラックホールの先は娘の部屋の裏だった!しかも、様々な時間が何層にも折り重なっており、明らかに高次元の介入により4次元空間が物理量として認識されていた。

すなわち、4次元空間のあらゆる時間の出来事を観察できるのである。娘の部屋限定だけど。必死に自分の存在を娘に訴えたり、旅立つ自分を引き止めようとする主人公だけど、その行動は4次元空間では心霊現象として現れるので、過去の自分と同様真剣に受け止められることはない。

絶望する主人公に、一緒にブラックホールに墜ちた人工知能から通信が来る。人工知能は特異点の量子データを無事獲得したが、当然のごとく、あらゆる波長を使っても地球に送信できないとのこと。そりゃそうだ…。しかしそこで主人公は現代物理学を超越した伝達方法を考え出す…そう、「モ ー ル ス 信 号」である(ぉぃ

とにかく、心霊現象程度の介入はできるので、十分成熟しきった時点での娘に向けて、モールス信号で量子データを伝える。聡明な娘は、全てを理解し、そのデータを基に方程式を解いて、「プランA」を実現する。

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このへんの時系列は混乱しやすいと思う。
主人公が量子データを届けたのは、ブラックホール突入前の地球時間なので、主人公がヒロインと共に事象の地平線上で重力ターンなどしてる僅かな時間の間に、地球では数十年かけて方程式を解いて、コロニーを作成し、プランAを実現に移したと考えられる。
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<彼氏の惑星>

3つ目の惑星で、ヒロインがプランBを健気に実行に移している…その頃プランAはほぼ実現していたのだが。なんか置いてきぼりで可哀想な気もするけど、彼女の体感時間では数日か数箇月程度かもしれないので、ご安心を。




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【魅力】
・気持ち良いぐらいガチのハードSF
・時空間のスケールが膨大
・セリフ、愛情表現、ユーモア、絶望感などあらゆる演出が上手い
・SF映画の新境地開拓
・映像
・音楽
・俳優
・予告

【不満】
・長い

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【少し突っ込んだ感想】
とにかく、色々凄い映画ですが、まず予告からして凄い。SF要素の本当の凄みをまるで表に出そうとしていないのです。単なるヒューマンドラマだと思って、正直期待していませんでした。しかし、センスは良かったので、とりあえず見ておこうと思える予告でした。この効果を狙ったとするならば、正に完璧な結果です。私にとっては。予告としては、最低限の仕事をこなしつつ、映画の魅力を最大限まで高めてくれた気がします。

「インセプション」の監督ということもあって、ブラックホール付近では、お得意のスローモーション演出も余裕で出来たと思いますし、そのほうが理解はしやすかったと思うのですが、当然、敢えて避けたのでしょうね。なんていうか、作り物っぽくなり、感動が薄れるし、「インセプション」の二番煎じと思われるのも嫌でしょうから。

それらの意味で、惜しい部分を色々切り捨てながら、最大限までクオリティを高めようとした意思も何だか伝わってきます。無駄がない!しかし長いなやっぱり(T∀T)

2001年よりはマシだけど。

とにかく、「愛」推しの作品でした。理論よりも愛だよね!的な。理論がしっかりしてる分、一笑に付せない本当に素敵な作品(笑)



【物理量に限定した次元数のイメージ】

(カッコ内は、我々からの視点です。)
零次元→点 (観察○/介入△)
一次元→線 (観察○/介入△)
二次元→面 (観察○/介入△)
三次元→立体 (観察○/介入△)
四次元→立体+時間 (観察△/介入○)
五次元→??? (観察×/介入×)


単位は、点が10cm移動したとイメージすると…
一次元→10cm
二次元→100cm^2
三次元→1000cm^3
四次元→10000cm^4
五次元→100000cm^5

となっていきます。

こうしてみても、途方もないスケールですな!

線が面と接するように、私たちの4次元世界も5次元世界と隣接しています。逆に言えば、5次元の世界の影が4次元であり、その影が立体(3次元)です。如何に高次元のイメージが困難かが解ると思います。この映画は、かなり上手に表現できていたと思います。


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"『採点方式に関して』
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