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2014年12月06日19:44

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珈琲夜話

12月5日(金)晴れ
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コーヒーを飲むようなハイカラなうちではなかった。
受験生の頃、母が時々インスタントコーヒーを作ってくれたりした。
お砂糖とミルク(ブライトとか)たっぷりの。
そして無事に京都の女子大生になれた。
キャンパスライフを満喫中の二歳年上の兄と、兄の大学に近い太秦に住むことになる。
ワタクシの通う女子大までは電車を乗り継ぎ乗り継ぎ1時間かかる。
もう少し中間点にする優しさはなかったのか、兄よ。
二人暮らしということもあり、普通の学生マンションより広かった。
よって、兄の友人達のたまり場と化す。
兄は、ええかっこしいなヤツだから、鹿児島から出てきたばかりの妹に「絶対鹿児島弁を出すなよ!」と釘を刺す。
妹はどんどん無口になっていく・・・そして兄の友人達から「Nの妹はコワイ・・・」と言われるようになる。
ある日、兄の友人本田君(本名)がやってきて「バイトしない?」
彼のバイトしてる喫茶店でアルバイトを捜しているらしい。
n「・・・いやぁ〜接客業とかは苦手で・・・ムリです・・・」(←一度鹿児島弁を共通語に変換してしゃべっている)
本田君「撮影所の近くだからさぁ〜俳優さんとかたくさんくるよ。必殺の三田村邦彦とか。」
n「やるっ!」
即決である。田舎者はミーハーでもあるのだ。
まだサークルとかも決めていない春のことであった。

その喫茶店は、嵐電の帷子ノ辻駅を出たすぐのところの、ショッピングセンターの一郭にあった。
テーブル席が少しと、あとはカウンターだけの小さな喫茶店。
朝八時から夕方七時くらいまで。
メニューはブレンドとアメリカン、紅茶とココアとジュースくらいだった記憶。
食べるものはホットケーキかトースト。チョコレートパフェ。
無愛想な田舎娘nはオーダーを聞き、それをマスターに伝え、間違わずにそれをお客さんに運び、
伝票通りのお代を頂くというシンプルな仕事をこなすだけで一杯一杯だった。
プラス笑顔なんてものは皆無で、ひたすら間違わないことだけを頭において、無愛想に黙々と働いていた。
マスターは、一見怖そうで気難しい感じだったが、オシャレな女子大生達の中での田舎娘が面白かったのか可愛がってくれた。
店じまいした後、常連さんの多かった撮影所にコーヒーの差し入れに連れて行ってくれたり、
おうちで何度かごちそうになったりもした。
マスターには、小学生のお嬢さんがいて、チャコちゃんと呼ばれみんなから可愛がられていた。
おねえちゃんおにいちゃんという感じのアルバイト生達の中で、田舎から出てきた、チビなワタクシのことは友達レベルに思えたようで、結構懐いてくれた。
マスターに頼まれて、チャコちゃんと一緒に四条辺りの映画館に「南極物語」を見にいったことも、この前の健さんの訃報を聞いた時思い出した。
祇園祭も一緒に行ったねえ〜
人が多すぎて、ちゃこちゃんを迷子にしたらどうしようという怖さで、祇園祭の記憶は一切ない。
夏には、バイト生と、マスター一家で川に泳ぎに行った。
今思うに、保津峡あたりだったのだろうか?
学校と喫茶店と家を三角に結んだ線上での生活だった。
短大はたった二年で、夏の頃には就活とかで鹿児島に帰省したり、秋に学校に戻ったら試験で、あっという間に冬で・・・
なんだかうやむやな形で、バイトはフェードアウトしてしまった。
これが、ワタクシの心残りというか、若気の至りというか、後悔の念で一杯というか、ずっと気になっていた。
しかし、30年という月日が経ってしまった。

嵐電の帷子ノ辻駅を出ると、あのショッピングセンターはなくなっている。
でも、すぐに娘が「あった!」
オシャレな、でも、ガラス張りという作りは以前と変わらない喫茶店スマート。
ドアを開けると・・・奥のカウンターの中にマスターが!
全くもって30年前と変わらないマスターが!!
当時「オレ、40になったわぁ〜」と嘆いてた、あの頃のまんまのマスター。
え!?ってことはもう70!?うそーーーっ!
懐かしさやら恥ずかしさやら色んな感情やらが溢れ出し、思わずカウンターから一番の死角となる席に座る。
娘が「挨拶してきなよ!」
母「ムリっ!30年も前だし、絶対憶えてないだろうし・・・」
娘「え〜〜〜っ!せっかく来たのに!絶対後悔するよ。」
と、このやりとりを小声で30回くらい繰り返す。
そうだよね〜絶対後悔する。

勇気を出して・・・
カウンターへ向かい・・・「30年前にコチラでアルバイトさせていただいてた者です。」
マスター「入ってきはった時、何か見覚えあるなあと思ててん。」
と言われたのはマスターの優しさで、憶えておられないことを感じつつ・・・
しばらく当時の話をして、コーヒー豆頂いて帰る。
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出口で「観光は?東福寺とか行かはった?」と聞かれた時に
ああ、ホントにマスターはワタクシのこと思い出せなかったんだなあと思った。
だって、バイトしてる時に、そんな丁寧な言い方されたことなかったもの。
「アホっ!」とか「なにしとんねん!」とか「○○せーや!」とかは言われても
「○○行かはった?」だなんて。
たった二年にも満たないバイト生なんて憶えてないのが当たり前だよね〜
他のバイト生達は近所の子で高校時代からやってるとか、大学生だから4年間やってるとかだったものね〜と自分を慰める。
30年も不義理してたんだものねえ〜

今日の1枚はスマート珈琲店で飲んだコーヒー。
メニューがすごく増えてて、食べるものもすごく増えてて、カップもかわってて、ホントに月日が経ったんだなあと感じた。
かわらないのはマスターだけだった。いや、コーヒーの味も変わっていなかった。
当時ワタクシは、インスタントコーヒーと缶コーヒーしか飲めなかったのだが、バイトしてると毎日一杯コーヒーをいただけて、
だんだんコーヒー好きになっていった。
その時のコーヒーの香り、そのままだった。
それから、変わったものがもうひとつ、ずっと笑顔で愛想良く話すワタクシ。
あの、無愛想だった19の娘が、ニコニコと思い出話を語る。
30年という月日は、ワタクシを大人にしたんやわ〜
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