こういう事例は、その場にいないと細かいニュアンスが全く分からない。
そもそも、その優先席には「妊婦」以外には「お年寄り」しか座っていなかったのだろうか?
では、自分の席を譲ったという「女子大生」が座っていた席は?
もしかしたら、この女子大生も優先席に座っていたのかもしれない。
もし万が一そうだとしたら、この女子大生がすぐに妊婦に席を譲れたことも、説明が付く。
もし万が一そうだったとしたら、この女子大生が取るべき行動は、「初めから自分が席を立つ」ことだったのは、言うまでもない。
この記事を読んだだけだと、お年寄りは「初めから妊婦が座っている席目当てに、いいがかりをつけた」ようにしか見えないが、文章では会話のニュアンスは伝わらないから、本当にそうだったのかどうかは、その場に居合わせてみないと分からない。
そもそもこの記事は「女子大生」の一方的な言い分を元に書かれていて、その時点で「公平公正」を旨とする「記事としてあるべき姿勢」を欠いている。
さらに、「一喝」という表現はこの女子大生本人が使った言葉だったのだろうか?
女子大生の「10代」という年齢から考えると、「一喝した」などという表現を使うのはむしろ不自然で、この「一喝」は「記者による脚色」と考える方が自然だろう。
しかし、この「一喝」という表現は、読み手に「この老人は初めから席を取ることが目的だったのではないか」と思わせる効果が非常に大きい。
この「一喝」という表現がなければ、この老人の言葉は本当に妊婦のためを思っての「おせっかいな説教」で、席を譲られたのも「奪い取った」のではなく、「妊婦が『どうぞどうぞ、是非どうぞ』と言った」から、「あらー、良いの?悪いわねー」なんて言いながら席に座ったなどという光景を思い浮かべることもできるだろう。
そうであったとしても、もちろん自分の常識を他人に強要していることは否めないが、お年寄りに限らず「コンサバ」な人達というのは得てしてそういうものであるから、ことさらに「お年寄り」を強調するのは不自然だ。
私が「この記事には記者の作為が入っているのではないか?」という疑問を持ったきっかけは、社会学者の阿部氏の発言に関する記述である。
この阿部氏の経歴を見ると、そんなにおかしな日本語を使う方だとは思えない。
しかし、この記者によるとこうである。
>「戦後の厳しい時代をくぐりぬけてきた世代と、今の若い人とは価値観が違って当然。
>『私が妊婦だったときはこうだった』『自分はお年寄りを大切にしてきた』という思いが
>あるから、シニアが若い人とコミュニケーションをとると、そのギャップにストレスを
>感じることになる。
ここまでは「お年寄り側の肩を持つ姿勢」が見える。しかし、この直後にその姿勢は一転する。
>それがいわば被害者意識を増大させ、『弱い立場なんだから、ちょっとくらいいいじゃないか』
>『先輩のいうことは聞くべき』という感情になって、品格を欠いた発言をしてしまうのでしょう」
とくに最後の「品格を欠いた発言」というのは、本当に阿部氏が言ったことなのだろうか?
というのは、この記事前半の「お年寄りの発言」には、「品格を欠く」とまで言われなければならないほどのものは見当たらないからである。
百歩譲っても、「品格を欠く」のは、「発言」ではなく「行動」に関してではないのか?
阿部氏は社会学者だから、「昔の常識」には詳しいはずだ。
それは「価値観が違って当然」という表現にも表れている。
戦中戦後世代にとっては、「間違った行動」に対してはたとえそれが赤の他人であっても一喝する、「正しい行い」に関してはたとえそれが赤の他人であっても推奨するのが、むしろ「品格ある発言」であった。
このお年寄りは「一喝」すべきではなく「推奨」すべきだったのだが、「一喝」自体が疑わしいことは、既に書いた通りである。
だから、このお年寄りの「発言」自体には、「品格を欠く」部分はないのである。
もし品格を欠く部分があったとしたら、それはもし「このお年寄りが席目当てに説教をした」としたら、その「行動」に関してであろう。
東大出の社会学者ともあろうものが、「発言」と「行動」を取り違える可能性は非常に低いと思う。
そう考えると、「取り違えた」のは「記者」だという可能性が高い。
もしかしたら「品格を欠く」という表現も、「記者の勝手な言い換え」かもしれない。
確かに最近の「お年寄り」達の中には、眉をひそめたくなるような図々しい行動を取る方も多い。
私自身、迷惑に感じることもしばしばである。
しかし、それとこれとは別だ。
自分自身が感じた不快感は、自分自身で処理をすれば良い。
敢然と抗議するのも良いかもしれないし、老い先短いのだから仕方がないと我慢するのも良いだろう。
しかし、「陰口を叩く」のは良くない。それこそ品格に欠ける行動だろう。
この記事はまさに「陰口」であり、さらには「お年寄りに対するバッシング」に発展する危険性すら秘めているのではないだろうか。
記者のみなさんには、是非「起こったことに脚色を加えずに、公平公正に伝える」という記者の使命を果たして欲しい。
「恣意的な報道」によって、世論を操作しようなんて思わないで欲しい。
この社会は、あなた達のおもちゃじゃない。
-----------------------------------------------------------------------------
「元気な子産めないわよ」と妊婦を立たせ優先席坐った高齢者
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=125&from=diary&id=3171666
ログインしてコメントを確認・投稿する