猥褻の線引き

■漫画家「ろくでなし子」再逮捕　女性器データ配布容疑
(朝日新聞デジタル - 12月03日 13:43)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3168844

思うところを少し。

或るモノが猥褻かどうかなんてのは、それを見る人の主観であって、第三者が決めるものではない、というのが僕の考えだ。

例えば、女の子の赤ちゃんが居て、その赤ちゃんのおしめを替えるとする。
すると、自ずとその赤ちゃんの性器を見る訳だ。
僕も何度か、嫁の友達の赤ちゃんのおしめを替えたことがあるが、別にその赤ちゃんの性器を見たところで、それを卑猥と思ったことはないし、欲情したこともない。

だが、世の中には、そんな赤ちゃんの性器にでも、欲情する人も少なからず居る。
そう思わない人にしてみれば、欲情するなんて、どういう神経をしているんだと思われるかも知れないが、こればっかりは自分の価値観の物差しで、相手を測ったところでどうしようもない。
その人にとっては、赤ちゃんの性器ですら、猥褻なモノに映っているんである。

個人的には、ろくでなし子さんがばら撒いた女性器のデータについては、本人がそれをアートというならば、それで構わないと思う。
他にも女性器を模した、この人の作品を拝見させてもらったが、別に猥褻なモノとも思わなかった。

ただ、品性の話をすれば、この人がアートと呼ぶ作品については、下品だと僕は思う。
これを神社の御神体と同列に並べて、とやかく言う人がいるが、そういう風に話を持っていって屁理屈を捏ねるということ自体が品がないんである。

つまり、それが猥褻かどうかなんてのは、受け取り手の感性の問題なんだから、そんな屁理屈は必要ないのだ。
神社の御神体についても、あれが性器を模したものであったとしても、それが神事であるから猥褻でない、とかではない。
中には、アレを見て猥褻に感じる人もいれば、欲情する人も居るかも知れない。
つまり、性器を模している時点で、御神体であろうがなかろうが、そういうシロモノなのだ。

ただ御神体ということで、暗黙の了解として、卑猥もモノとして見ないようにしているだけで、そこに神性がなければ、ろくでなし子さんの作品やアダルトグッズとそう変わらない。

では、何が違うのかというと、ろくでなし子さんやそれを支持する人のように、御神体は、自らを猥褻なモノでないと主張しない。
つまり、受け手にどう思われようと何を言われようと御神体であるというだけで、猥褻かどうかなんて主張することはない。

これを御神体だから、猥褻なモノでないなんて主張しだしたら、それこそ品性も神性もへったくれもないのだ。

ろくでなし子さんは、こうした作品をアートとして世に出したのだから、それは本人にとってはアートであり、猥褻なモノではない。

それはそうなんだろう。

だが、その作品を見てどう思うか、世間がどう評価するかは、その人たちに委ねるしかない。
このブログの中で何度も述べたように、それを猥褻かどうかを判断するのは、ろくでなし子さんではなく、その作品を見た人たちなのだ。
これを作った本人が猥褻なモノでないから、見た人も猥褻なモノと思ってはいけないと主張するのは、余りに品がないのではないだろうか。

だから、仮に世間がそれを猥褻物と判断し、それをばら撒いたということで逮捕されたとしても、それは仕方がない。
そうした感性によっては、猥褻なモノだと判断されるようなテーマを作品に選んだのだから、そうした世間の評価も甘んじて受けるべきなのだ。

芸術とは、時によっては不当に扱われることもある。
だが、それをまた高く評価する人もいることはいるのだろう。
僕には、理解できないが。

まあ、少し同情するなら、警察も他にも取り締まるモノが沢山あるだろうに、とは思うが、だがこうした騒動を持ってアートに対して一石を投ずるという意味では、ろくでなし子さんも逮捕されて本望なんじゃないだろうか。

ただ。
ろくでなし子さん。

あなたが御自身の性器を3Dデータにして配布した人の中には、あなたの作品を単なる猥褻なモノとして、それを見て欲情している人もいるかもしれない。
だが、そういうつもりで作品を作ったんじゃない、猥褻なモノを見るような目で見るなと、そういった人たちに文句を言うのは、御門違いだ。
何故なら、それは受け手の自由だから。

でも、ろくでなし子さん。
あなたは、聡明な方だ。
だから、そんなことも解っていて、それを承知で配布していらっしゃるでしょう。

だから僕は下品だと思うのです。