まずそもそも論として・・・。
原発の「基準」とか「審査」と言うと、「安全基準」、「安全審査」だと思う人が多いと思いますが、今の日本には「安全基準」も「安全審査」もありません。あるのは「新規制基準」と「適合性審査」です。
それと、新規制基準で審査が厳しくなって、原発の安全性が高まったと思う人が多いと思いますが、逆です。従来の安全基準では「事故は起きない」という前提だったものが、新規制基準では原発が事故を起こして、放射能を撒き散らした場合のことを想定しています。
つまり、新規制基準をクリアした原発の再稼動を容認するということは、事故が起きて、放射能が撒き散らされて、安定ヨウ素剤を服用する羽目になって、遠くへ避難しなければならなくなって、故郷へは二度と帰れなくなるetc・・・ということになっても構わない、ということです。
それでもあなたは、原発の再稼動を容認しますか?
ラジオ・フォーラム
http://www.rafjp.org/
小出裕章(京大助教)非公式まとめ
http://hiroakikoide.wordpress.com/
京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ(小出氏が所属)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/index.html
小出裕章氏講演会情報
http://healing-goods.info/koide/
【内容文字起こし】
パーソナリティ:湯浅誠(社会活動家)
湯浅:小出さん、よろしくお願いします。
小出:よろしくお願いします。
湯浅:今日はですね、
小出:はい。
湯浅:原子力規制委員会との、お・・・話の中で、川内原発同型の原発は、「審査の簡略化が可能なんじゃないか」と、菅官房長官が言ったと、いうニュースについてお伺いしたいんですが、
(2014.8.6東京新聞 続・菅官房長官発言を考える 「川内原発同型は審査簡略可能」なのか)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014080602000147.html
小出:はい。
湯浅:えー、これはどういうことなんでしょうかね?
小出:彼らとしては、何としても、早く早く再稼動させたいと、思っているわけで、審査に関してはできる限り手を抜いて、速やかに完了するようにしたいわけです。日本では、2種類の原子力発電所を使ってきました。
湯浅:はい。
小出:福島第一原子力発電所で使っていたのは沸騰水型原子炉と言います。え・・・アルファベットで言うとBWRという形でした。一方、え・・・関西電力などは、加圧水型原子炉。PWRと私たちは呼んできました。基本的には同じものなのですけれども、まああの・・・仕組みが、違うところもあるということで、え・・・2種類のものを使ってきたのですが、
湯浅:はい。
小出:事故を起こしてしまった沸騰水型の方は、容易にその・・・もう安全だということを言えないだろうと多分、あの・・・菅さんたちも思っているんだと思います。
湯浅:うーん。
小出:え・・・ですから、そうなれば、一方の加圧水型、PWRという原子炉の方は、できる限り早く、再稼動させたいと、思っているはずですし、川内原子力発電所が安全だと認めたのであれば、他だってみんな安全だと認めろと、いう指示を、菅さんが発信したのだと思います。
湯浅:うーん。あのー、沸騰水型というのは、まあ、水を沸騰させて、
小出:はい。
湯浅:その蒸気でタービン回して、発電と。
小出:そうです。非常に単純な原子炉なのです。
湯浅:そうですね。あの、小出さんずっと「湯沸し器」と同じなんだと仰ってる・・・
小出:(笑)、そうです。
湯浅:で、えーと、それ・・・何か、字を見ると分かりやすいんですけど、加圧水型ってのは、何が違うんですか?
小出:えーと沸騰水型は、文字通り湯浅さんが仰ってくださったように、水を沸騰させて蒸気を出して、その蒸気でタービンを回すのですけれども、原子力発電所の場合にはその、沸騰した水がもう既に放射能で汚れてしまっているわけです。それでタービンというものを回そうとすると、タービンは非常に巨大な構造物ですし、タービンすらが放射能で汚れてしまって、管理をすることが大変になるということが、一方にあったわけです。ですから加圧水型という方は、放射能で汚れた水をタービンに持って行きたくないと。だから、1次系と私たちは呼んでいますけれども、放射能で汚れた水は1次系というところで閉じ込めて、途中で蒸気発生器という熱交換器を使って、2次系に熱を渡して、2次系を沸騰させると、
湯浅:なるほど。
小出:いうシステムを作ったのです。ですからシステムとしては、沸騰水型より、まあ面倒なシステムになったわけですね。冷却系がもう一つ増えてしまったということで・・・
湯浅:そうですね。間にワンクッション入ったってことですもんね。
小出:そうです。はい。
湯浅:間にワンクッション入ったことでより安全だって言えるんですか?
小出:言えません(笑)。
湯浅:(笑)。
小出:えー・・・もちろん良いこともあるし悪いこともあるわけで、タービンという巨大な構造物が、放射能で汚れないという点ではもちろん良かったわけですけれども、
湯浅:はい。
小出:1次系から2次系に熱を渡すためには、蒸気発生器という・・・まあまたそれも巨大な装置をそこに置かなければいけないし、蒸気発生器というのは、もちろん1次側から2次側に、熱を渡すべきものですから、なるべく熱を渡したい構造、つまりまあ、金属のパイプなんですけれども、
湯浅:うんうん(相槌を打つ)。
小出:パイプの厚さをなるべく薄くして、効率良く熱を与えたいわけです。
湯浅:はい。
小出:しかし一方で、薄くしてしまうと今度はそのパイプが破損する可能性が高くなりますので、1次系の放射能が2次系へ漏れてしまうということになるわけです。ですから、ん・・・相反した、目的を両方担わなければいけないということで、蒸気発生器というのは大変難しい設計になりまして、何とかそれを上手くやりたいと思ってきたわけですけれども、世界中の加圧水型原子炉では、もうたびたび蒸気発生器が壊れてしまいまして、日本でももうしきりに事故を起こしましたし(※1)、世界的にも事故を起こしたし、例えば、え・・・米国の西海岸にサンオノフレという、加圧水型の原子炉がありましたが、その原子炉の蒸気発生器は日本の三菱重工が作った、のです。それがあまりにも欠陥だということで、サンオノフレはもう閉鎖になってしまいましたし、三菱重工が多額の賠償金を請求されるというようなことにもなっているのです(※2)。
※1 関西電力美浜原発3号機事故
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-07-02-23
※2 米サンオノフレ原発の原子炉2基廃炉に、三菱重工に損害賠償請求へ
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95801P20130609
湯浅:ああ・・・係争中の案件ですね。ありましたね。
小出:はい。
湯浅:メリットとデメリットを背中合わせっていうかね、
小出:そうです。
湯浅:ある問題を解決しようとするとやっぱり次の問題が起きてしまうっていうのが、まあ原子力というものの難しさなんだと思いますけれども、
小出:はい。
湯浅:これ(適合性審査)を簡略化するっていうのが、ちょっといまいちよく分からないっていうかですね、
小出:全く分からないです(笑)。
湯浅:(笑)。あの・・・加圧水型というその、何か建物の構造、原子力を生み出す構造は今仰ったようにまあ、加圧水型というのはある種同型なんだろうと思うんですけど、
小出:はい。
湯浅:・・・にしてもまあ建ってる所は別の場所だし、
小出:そうです。
湯浅:えー・・・海沿いにあるのか、海面から何メートル上にあるのか、そういうようなその、地下にまあ、あの・・・地震のリスクが、どれくらい活断層があるのかないのか、そういうことも含めて審査するっていう話だった・・・ですよね?
小出:そうです。新規制基準では、活断層をより厳密に審査しろ、ということであったり、あるいは、津波の影響がどれだけあるかを審査しろとかいうことであったわけで、そういうものは全て、敷地に依存していますので、加圧水型という原子炉の形とは違うことをきっちりと評価しなさいと、いうのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。
湯浅:ですよね?
小出:はい。敷地の条件でなくて、要するに立地している地域の住民の安全をどう守るかと、いうもっと重要なことがあって、それは新規制基準で言えば、彼らは・・・原子力規制委員会はそれを自分たちの責任でないと言ってしまって、それぞれの自治体で勝手に考えろというようなことにしているわけですね。
湯浅:はい。
小出:ですから川内原子力発電所に関しても、原子力規制委員会は、ん・・・避難計画とかそんなものは一切知らないと、言ってしまっているわけです。でも一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、え・・・それは、むしろと言うかそれこそあの・・・大切であって、個別敷地に依存しているのです。ですから・・・簡略化というのは、まあほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。
湯浅:うん。小出さん、今日もどうもありがとうございました。
小出:はい。ありがとうございました。
【文字起こし終了】
■規制委トップ、再稼働審査事実上合格の川内原発「安全とは言えない」 甘い基準露呈
(Business Journal - 08月08日 01:20)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=175&from=diary&id=3001158
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