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2014年05月05日09:54

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4月の読書記録

4月の読書量はかなりの冊数&頁数に達したけれど、一つには先月に引き続き、新書と文庫本を読むことが多かったことが要因の一つ。
それから、今回もナイスが多いのが嬉しい。

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:6821ページ
ナイス数:76ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/4147/matome?invite_id=4147

■「近代の超克」論 (講談社学術文庫)
非常に濃い内容で読み応えがあった。解説にもあるように、著者が戦前の日本史や文学界、哲学界に通暁しているのに驚かされる。それにしても、本書を読んでいると、近代を超えると言いながら、結局近代を超えることができないでいるのは、戦後七十年近く経った今でも実はさして変わらないのではないか?という気がしてくる。高邁な思想を掲げ、何とか戦争を忌避しようという思いを抱きながらも、結局戦争に賛同する側に回らざるを得なくなった幾多のインテリ達…右傾化が指摘され、段々ときな臭くなってきた昨今にあってこそ読み返されるべき一冊。
読了日:4月30日 著者:廣松渉
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37594492

■先生と私
かねてから著者の博覧強記ぶりには驚嘆していたが、この自叙伝を読むと、その背景がよく分かるような気がした。特に中学時代に通った進学塾でのエピソードを読むと、基礎学力が違うということをまざまざと思い知らされる。それから印象的なのが、塾で出会う個性豊かな様々な教師。それぞれが個性的で訳ありな人達ばかりで、そういう人達のいわば巣窟のなっていたややいかがわしい雰囲気がある時代までの塾には漂っていたのだな…と思わされる。昨今の要領よく点数を取ることばかり教える塾や予備校ではあのような出会いはないだろう。残念である。
読了日:4月29日 著者:佐藤優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37558895

■文学フシギ帖――日本の文学百年を読む (岩波新書)
かなり読みやすくて、あっという間に読み終えたが、その分ちと食い足りなさも覚えたというのが正直なところ。できることなら、もっと多くの(特に戦後の)作家をとりあげて欲しかったと思う。とはいえ、一つ一つの文章は示唆に富み、かなり楽しめる。特に冒頭における鴎外の『雁』に登場する高利貸しに焦点を当てているのには、僕自身この高利貸しが妙に心に残っていたので、少なからず感心した。また一葉と才を競ったという、一葉と同じく夭折した田澤錦についてのものが興味深く読めた。この時代の女性が自立することの難しさを改めて感じた次第。
読了日:4月27日 著者:池内紀
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37524400

■日本の思想 (岩波新書)
最初の二篇はかなり難解な内容で読み通すのがかなり辛かった。また、文体に今一つ明晰性が欠けているという印象が拭えず、佐藤優が著者にあまり高い評価を下していないのが分かる気がした。ただ、後半に収められた二篇は語り言葉が元になったこともあってわかりやすく、また内容も興味深かった。特に「思想の〜」は、学問の細分化について論じたもので、今日大学が多様性の名の下に、ますますその内実が乏しくなっていくのを、この数十年以上も前に予言したかのような内容で、非常に示唆的だった。それから注釈が無いのが残念だった。
読了日:4月27日 著者:丸山真男
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37497011

■小説永井荷風伝 他三篇 (岩波文庫)
小説とは銘打っているが、どちらかというと、エッセイあるいは回想記と言った趣が強い。きかん気の強い放蕩者でありながら、その実小心者で繊細という二面性を持つ荷風の人物像がかなりリアルに描かれている。また、著者が荷風を努力家タイプと評しているのが、印象深かった。荷風といえば、娼館を遊び歩くというイメージが強く、努力家という言葉とは程遠いという印象があったので。また、深く母親を愛しながらも、とある経緯から、親兄弟との関係を断絶し、その晩年を独居生活で送った荷風の姿に、つい我が身を重ね合わせてしまった…
読了日:4月26日 著者:佐藤春夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37471307

■街場の五輪論
内容、ヴォリューム共に若干の食い足りなさを覚えるものの、正面切って五輪を論じたという一点において評価できる。とにかく幾度となく指摘される、現在の日本の拝金主義には大いに納得。原発も五輪も所詮は金…という身も蓋もない言い方だが、しかし恐らくそれが日本の現状なのだろう。五輪開催まで後六年。本書では1940年に行われる筈だった幻の東京オリンピックについて言及されているが、ますますきな臭くなっている昨今、この過去が示唆するものは決して小さくないと思う。五輪賛成派も反対派も、さわりだけでも読んでみて欲しい。
読了日:4月25日 著者:内田樹,小田嶋隆,平川克美
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37455598

■ことばと創造: 鶴見俊輔コレクション4 (河出文庫)
純粋芸術よりむしろある種下世話的なものを好む嗜好性が垣間見られるのが、興味深かった。そうした体質がベ平連の活動にも通じるというのは、些か飛躍があり過ぎるか?それはともかくとして、なぜか妙に印象深かったのは、漫画家滝田ゆうについてのもの。滝田氏が最初長谷川町子に弟子入りしようとしたというのが、かなり驚き。それよりも響いたのが、常に母親を恐れ脅えながらも、どこかでしっかりと母親と繋がっている子供の姿を描いた『寺島町奇譚』。しかもその母親のモデルになったのは、作者の継母だったという事実にある種の重みを感じた。
読了日:4月22日 著者:鶴見俊輔
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37395581

■旅と移動: 鶴見俊輔コレクション 3 (河出文庫)
かなり多岐に亘る内容で、包括的な感想を述べにくいのだが、とりわけ印象的だったのは、冒頭に掲載された「中浜万次郎」か。一介の若い漁師が幾多の苦難の末、アメリカに渡り、そこで現地の人と対等に渡り合い、学を積み、経済的にも成功したという波瀾万丈のストーリーには、手に汗握る思いがしたのと同時に、明治以前にこのような誇り高き日本人がいたということに、少なからず感動を覚える。それから黒人問題を扱った「フェザー〜」は、黒人差別の理不尽さと共に、国家が決して国民のためにあるのではないということを思い知らされた気がする。
読了日:4月21日 著者:鶴見俊輔
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37359199

■シモーヌ・ヴェイユのキリスト教―善なる神への信仰
ヴェイユとキリスト教との関係を主題にしたテキストは意外と見あたらないということで、かなり興味深く読めた。個人的には、一カトリック信者として、ヴェイユのあえて教会の外に留まるというスタンスには、改めて複雑な思いを抱いた。それと同時に、本書を通して、ヴェイユのキリスト教思想を再度概観して行くにつれ、その見方によっては異端とさえ言えるその特異性を知ることになり、そのスタンスが理解できる気がした。今の著者の立場は本書が書かれたときのものと大きく変わったそうだが、とにかく更にヴェイユに関する者を出して欲しい。
読了日:4月18日 著者:松原詩乃
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37290850

■身ぶりとしての抵抗 ---鶴見俊輔コレクション2 (河出文庫)
個人的には「方法としてのアナキズム」がとりわけ印象深かった。これまでのアナキズムの運動は、当初人間の平等を目指しながら、その悉くが最終的には抑圧的な物になってしまうという指摘には、人間が抱く高い理想と、それを実現しようとするときにどうしようもなく噴出する矛盾や障壁について深く考えざるを得ない。それから田中正造の評伝を読んで、かつて小学校の教科書で田中の伝記を読んで、その生き方にかなりの感銘を受けたことを思い出した。しかし、田中の伝記を教科書に掲載というのは、今の時代ではほぼ不可能だろう。時代の流れか…
読了日:4月16日 著者:鶴見俊輔
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37236290

■思想をつむぐ人たち ---鶴見俊輔コレクション1 (河出文庫)
先に読んだ本の中で佐藤優が鶴見のことを「ずるっこい」と評していたが、確かにそういう要素もあるように思えた。良く言えばバランス感覚なのだけれど、右とも左とも上手いこと付き合いながら、双方から旨い汁を吸っている…みたいな。しかし、それだけの人脈を作り上げ、様々な運動を繰り広げてきたそのバイタリティと行動力は賞賛に値するが。個人的には母校の創始者である新島襄についての文章、それに紙芝居の総本山加太こうじについての文章がとりわけ興味深かった。しかし、後者でコンビニを嘗ての雑貨屋の再来とのべているのは疑問だが…
読了日:4月15日 著者:鶴見俊輔
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37211451

■世界と闘う「読書術」 思想を鍛える一〇〇〇冊 (集英社新書)
とにかく佐藤優の博覧強記ぶりには圧倒される。対談中で言及されたテキストからかなりの長文を引用している場面が少なからず見受けられるが、あれはやはり彼の頭の中に叩き込まれているということだろうか?そうだとしたら、ちょっと常人離れしている。それはそうと以前から気に掛かっているのは、佐藤氏は内田樹のことを一体どう評価しているのか?これだけ色々な類の本やその著者に言及しているのだから、内田氏についても某かの発言があってもよさそうなのにそれが全くない。やはり佐藤氏にとって内田氏は色々な意味で面倒臭い相手なのでは?
読了日:4月12日 著者:佐高信,佐藤優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37141761

■悲劇の誕生 (岩波文庫)
これまで読んできたニーチェの著書の中で、その文体も含めて、これが一番しっくり来た。とはいえ、その内容は殆ど理解できていないというのが正直なところ。「世のニーチェ研究者は、一体ニーチェの何を理解し、何を論じているのか?」という素朴な疑問がわいてくる程。こちらの感性の問題か?それとも読み方が悪いのか?はたまたこちらの知能の問題か?字面を目にしても、どこか上っ滑りで、内容が今一つ入ってこないというのは相変わらず。ただ、解説にもあるように、かなりアクロバティックな内容だとのこと。ニーチェはやはり鬼門か?
読了日:4月11日 著者:ニーチェ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37114468

■一私小説書きの日乗 憤怒の章 (単行本)
相変わらずの食べっぷり、飲みっぷりに驚嘆すると共に呆れる。通風持ちなのに、多分この人長生きするつもり無いんだろうな…と。それにしても、本人も認めている通り、起きて飲み食いしているだけの日記がどうしてこんなに面白く読めるのか?ちょっと不思議。飲み食いとは言っても、別にそれらに対する蘊蓄や感想が述べられるわけではない。述べられたとしても、ごくそっけない一言で終わるのが殆どである。ただただ、鯨飲鯨食した品目が並べられるだけ。でも、それが妙に食をそそるのである。これも才能か?それからビートたけしとの邂逅が良い。
読了日:4月11日 著者:西村賢太
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37110335

■驚いた花 (1980年)
最初百頁辺りまでは、著者独特の西洋かぶれ的な浅はかさが鼻について、それ程のめり込めなかったのだけれど、そのうちにこれまた著者独特の人間の内面へと常人では及びも付かないほどの深みまで潜っていく、その洞察力と鋭い感性に引き込まれていくことに。個人的にはやはりキリスト教に関するエッセイが特に興味深く読めた。著者と同じ一カトリック信者として、著者程神と自分との関係について真剣に考えてこなかったことについて、改めて恥じ入るような気持ちにもなった。後、J・グリーンやモーリヤックを読み返したいという気持ちになった。
読了日:4月9日 著者:高橋たか子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37071866

■ジェイン・エア(下) (岩波文庫)
確かにご都合主義的な所もあるのだが、それでも主人公ジェインの独白という形で綴られる巧みなストーリーテリングに引き込まれ、ぐいぐい読み進めてしまった。華奢で小さな体とは裏腹に、時として頑固と言えるほどに強い意志の持ち主であるジェインの人物描写が非常に魅力的。解説にもあるように、当時としてはかなり型破りなキャラクターだったということが容易に理解される。ただ、個人的に物足りなかったのは、ロチェスターの妻バーサが狂人としてのみ描かれ、その内面性にまで触れていなかったこと。後巻末ではベッシーにも触れて欲しかった…
読了日:4月7日 著者:シャーロット・ブロンテ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37025286

■ジェイン・エア(上) (岩波文庫)
もっと陰々滅々とした話だと思ったが、予想外の面白さでちょっとびっくり。とにかく主人公ジェインとその主人ロチェスターの人物描写とちょっと奇妙な恋愛関係が非常に魅力的。とりわけ後者の偽悪者であり、冷笑家、皮肉屋、しかも陰鬱な表情を湛えていながら、同時に社交的で、温情家、ユーモアもあり、結構お茶目という一見矛盾した要素を兼ね備えている複雑で魅力に富んだ人物像というのは、かなり類い希ではないか?そのような人物を二作目にして描き出したというのは、ある種の天才と言える。個人的にはヘレンの死が痛ましかった。
読了日:4月6日 著者:シャーロット・ブロンテ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37000219

■世界十五大哲学 (PHP文庫)
もっと早いうちにこの本に出会っておけば良かったと思うことしきり。とにかくわかりやすくてさくさく読み進めることができる。十五人の哲学者の人選に若干疑問は残るが、時代的な背景や著者自身の拘りがあってのことだろう(個人的にはサルトルよりフッサールを入れるべきだと思う)。ただ、他の哲学書では殆ど取り上げられることが無い、チェルヌィシェフスキーと中江兆民という不遇な生涯を送った哲学者の章が最も興味深く読めたという所に本書の妙があるように思う。推薦者佐藤優氏が述べるように、哲学入門書としてお勧めの一冊。
読了日:4月5日 著者:大井正,寺沢恒信
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/36960022

■聖書の読み方 (岩波新書)
他の人も述べているとおり、「聖書って初心者にとって、これだけとっつきにくいものか…」というのが、第一の感想。本書を読み進めながら、これまでの自分と聖書との関係を振り返ることに。とりあえず読まなければ話にならないが、でも読み進めるためには、某かの入門書が必要。しかし、手引き書を読んだだけで満足したり、入門書の段階で恐れをなしたり…ということもあるわけで、この手の入門書の…とりわけ聖書という特殊な書物の入門書を世に問うということが、どれだけ困難な作業か?ということを改めて思い知らされた次第。概ね良書と言える。
読了日:4月2日 著者:大貫隆
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/36899802

■黙示録――イメージの源泉 (岩波新書)
黙示録の解説書か?と思って手に取ったが、解説書と言うよりも、黙示録が及ぼした影響を巡る文化論という趣が強い。また、ある程度キリスト教や聖書の知識が無いと、とっつきにくい代物である。他の意見にもあるように、本文中に掲載されている図版はカラーにして欲しかった。でないと、イメージがわきにくい(因みに、「イメージ」は本文中幾度となく強調される言葉である)。個人的にそれ程周知なものとも思われないような芸術作品や歴史的事実を「ご存じの通り」と語っているのが、気になった。全体的に突っ込み不足というのが正直なところ。
読了日:4月1日 著者:岡田温司
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/36869209


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