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2014年03月02日20:45

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二月の読書記録

先月は文庫本で小説を読むことが多かったかな?とりあえず日数が少なかったわりには、結構読めたか…?ナイスの数もまずまず。

2014年2月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5349ページ
ナイス数:63ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/4147/matome?invite_id=4147

■色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
これまで使ってきたネタの使い回しとか、ご都合主義とか、色々と突っ込み所はあるのだけれど、それでもやっぱり読み出したら止まらない求心力があるのはさすが。個人的には灰田が途中で消えたのが、ちょっと納得いかなかった。最後の最後で再登場するかな?とちょっと期待したのだけれど。つくると灰田との間にある同性愛的な要素をもう少し突っ込んで書いて欲しかった。それから、胡散臭いビジネスを繰り広げているアカが、意外に良い奴だったというのには、ちょっとほっとさせられた。後、美人で繊細なシロよりクロのほうが好みかも…(笑)
読了日:2月28日 著者:村上春樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/36042549

■絹と明察 (新潮文庫)
思ったより面白かったけれど、何となし詰めの甘さを感じたというのが正直なところ。解説によると、著者は父親の問題を描きたかったと述べているらしいが、本書で描かれている駒沢は確かに、それまでの古典的な頑固親父のイメージを具現しつつも、同時に今時の物わかりの良い父親の様相を呈しているというのが、著者の造形力の一端を物語ると共に、どこかちぐはぐな感じを抱いてしまう。それから、駒沢と菊乃の関係もかなり不自然なものに思えた。後に控える「豊饒の海」四部作完成にせっつかれたが上でのこのできだとしたら、かなり残念かも…
読了日:2月27日 著者:三島由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/36008529

■三人妻 (岩波文庫)
内容はともかくとして、古文調の文体が読み辛かった(笑)。複数の妾と本妻、それに亭主を巡る話ということで、つい円地文子の『女坂』を思い出してしまうが、それ程どろどろはしていない。一応主人公は余五郎ということになっているが、彼を軸とした三人の妾の生態を描いたという方がいいだろう。そして、その余五郎といわば対になったと言える本妻麻子の描写が比較的少なくまた一貫して寡黙なのが、却って独特の存在感を炙り出しているような構図になっている所が面白い。ただ、百年以上も前の作品に一切の注釈が無いというのは、どうかと思うが…
読了日:2月25日 著者:尾崎紅葉
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35973258

■多情多恨 (岩波文庫)
浮気をするわけでも、女癖が悪いわけでも、働かないというのでもない。でもその女々しさとコミュ力不足は遺憾ともしがたい…強いて言えば草食系ダメンズ?の主人公柳之助は何とも言えず苛々させられると同時に妙に憎めない。ただ、義理の妹お島に対する仕打ちはさすがに一抹の憤りを覚えたけれど。また、終盤のクライマックスというべき、葉山の出張中、深夜柳之助がお種の寝室を訪ねるシーンは本当にハラハラさせられた。それでも、そんな失態をも鷹揚な態度で受け入れる葉山夫妻の懐の深さに感服。特にラスト近くで見せた葉山の男気は見事。
読了日:2月22日 著者:尾崎紅葉
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35889913

■渋江抽斎 (岩波文庫)
とにかく夥しいまでの人物名が出てくるのに、圧倒される。中核となる人物はある程度限定されるから、それなりに話の流れは把握できるけど、たいていの人はそのあたりで挫折してしまうのではないか?ただ、端正にして簡潔な文体は非常に魅力的で、それで読了できたという要素も少なからずある。それから、こうした幾多の資料や聞き書きを元にして、客観的な叙述と愛情が籠もった内容という矛盾した要素を両立させた評伝ということで、これは森銑三の一連の作品に通じているのではないか?と気づかされた。それからもっと詳細な注釈が欲しかった。
読了日:2月21日 著者:森鴎外
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35845847

■猫のよびごえ
結局、町田は一体これまでのべどれだけの犬猫を飼ってきたのだろう?とつい考えてしまう。これ以上犬猫を飼うのは無理!と思いながらも、外で捨て猫を見たら、つい家に持ち帰り世話をしてしまう。その人の良さが何とも言えず良い。それはそうと、人間関係にも色々あるように、あるいはそれ以上に猫同士の関係も難しいものだな…と本書を読んで改めて思わされた。特に終盤での奈奈の衰弱ぶりには少なからず心が痛み、最後のほうでは希望的観測が持てる状態にまで持ち直したのには本当にホッとさせられた。そして著者の愛情に満ちた写真も良い。
読了日:2月20日 著者:町田康
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35829397

■素粒子
フランスで60年代カウンター・カルチャーの最中で育った異父兄弟ミッシェルとブリュノ。対照的ではありながらも、どこか似通ったところもある二人…なぜだか「悪童日記」三部作の兄弟をつい思い浮かべてしまう。個人的にはさえない思春期、及び青年期を送った兄ブリュノに、同じくさえない思春期を送ったかつての自分を投影してしまいがち(笑)。それにしても、この小説を読んでいると、ここ半世紀の間に、世間の価値観や道徳観がどれだけ変わって来たか?ということを改めて思い知らされ、愕然とさせられる。色々な意味で読み応えのある一冊。
読了日:2月17日 著者:ミシェル・ウエルベック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35765793

■鹿鳴館 (新潮文庫)
表題作、「鹿鳴館」の清原永之助と久雄父子は『豊饒の海 奔馬』の飯沼茂之と勲父子をつい想起させられた。それはそうと、どの作品もアイロニカルな要素が強く、これでもか!というくらいに人間の裏面の探り合いがしつこく描かれているという塩梅で、一冊読み通すといささかげんなりしてくる。時代的にそういう趣のものが有り難がられていたということだろうか?個人的には「只より…」のラストが腑に落ちなかった。それから、巻末の著者解題は資料的な価値はあるかもしれないが、それよりちゃんとした解説が欲しかったというのが正直なところ。
読了日:2月14日 著者:三島由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35670224

■聞書抄 (中公文庫)
表題作はそれなりに魅力的なのだけれど、解説にもあるように、どこか煮詰め方が足りないという印象が否めない。そもそも冒頭で振られているのは、石田光成の遺児であるのにも拘わらず、話のメインは秀次の正室とその連れ子という塩梅で、ストーリーの一貫性に欠ける。その他、色々と突っ込みどころが散見されるが、谷崎の魅力の一端が伺えるというのもこれまた事実ではある。それよりも個人的には仏教説話ではあるが、キリスト教の贖罪にも通じる「三人法師」の方に惹かれた。それはそうと古文漢文の引用が多いのにも拘わらず、注釈が無いのが残念…
読了日:2月12日 著者:谷崎潤一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35615487

■幸福な死 (1972年)
今一つストーリーに纏まりがないな…と思っていたら、実はもともと未刊の書であったとのこと。場面によっては惹き付けられるものもあるし、端正で簡潔な文体は魅力的なのだが、やはり内容が散漫という印象は拭いがたい。特に第二部の「世界をのぞむ家」でのエピソードは、それまでの流れからすると、かなり唐突だし、話の展開もとりわけ不自然さが目立つように思われる。カトリーヌとのやり取りなど、魅力的な場面も少なくないだけに、もう少し何とかならなかったのか?とつい思ってしまう。できたら、この部分を発展させて作品にして欲しかった。
読了日:2月11日 著者:アルベール・カミュ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35599382

■乱菊物語 (中公文庫)
谷崎ってこんな作品も残してたんだ!とちょっと驚き。著者の幅広い才能に改めて感服させられた。ストーリーのそこかしこに伏線を張り巡らせ、読者をぐいぐい引きずり込んでいくその筆力には脱帽。ただ、やはり未完というのが、どうしようもなく惜しまれる。その一方で、ちょっと話を広げすぎたため、著者自身手に負えなくなったのかな…と思いきや、実は晩年完結編を構想していたというのだから、二度びっくり。解説にもあるように、著者の無尽蔵の創造力には本当に恐れ入る。谷崎が世に送った珠玉のエンターテイメント小説。一読あれ。
読了日:2月10日 著者:谷崎潤一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35559449

■本当の大人の作法 価値観再生道場 (ダ・ヴィンチブックス)
表紙に映った橋口いくよの姿を初めて目にして、「こんなに可愛かったんだ」とちょっとびっくり(笑)。それはともかくとして、本書を読んでいると、ここ何年かの間にそれまで当たり前とされていたことの多くがそうではなくなってしまったんだな…と気づかされて愕然とする。個人的に一番印象的だったのは、「四十歳女性のロールモデルがいない」というくだり。これまで寧ろ男性にとってのロールモデルがいないために、世の中年男性の多くは密かにもがいているのではないか?と思っていたので、この説はかなり意外だった。女性も意外に大変だった。
読了日:2月7日 著者:内田樹,名越康文,橋口いくよ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35483151

■武州公秘話 (中公文庫)
内容はともかくとして、終わり方があまりに呆気ないというのが第一印象。本文中で幾度となく武州公の異常性欲が言及されているのにもかかわらず、それが結局どのようなものであったか、具体的な描写は皆無。まあ時代的な制約もあったから、その辺りを精緻に描写するのは叶わなかったのはわかるが、もう少し描きようがあったのではないか?という気にさせられる。とにかく武州公の桔梗への思いが水泡に帰した後、武州公が後の人生をどのように過ごしたのかが知りたかった。そのように読者に気を持たせるのが、作者の狙いだったのかもしれないが…
読了日:2月7日 著者:谷崎潤一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35472153

■夢の浮橋 (中公文庫)
表題作に潜む何とも言えないエロチシズムには、少なからず興奮させられた。ただ、僕自身マザコン的要素が希薄なので、今一つ主人公のメンタリティに入り込めなかったけれど。後、印象的というか身につまされたのが、「高血圧症の思い出」。著者の健啖家ぶりとそれによる高血圧はかねてから知っていたが、こうして本人の口から語られると、ある種鬼気迫るものさえ感じる。高血圧を患いながらも、戦時下の物資不足の最中でさえ、美食を堪能する著者の姿にある種の羨望を覚えながらも、良くも悪くも自分はああはなれないという思いを新たにした次第。
読了日:2月6日 著者:谷崎潤一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35456998

■自家製 文章読本
「文章読本」と名のつく書物は恐らく本書が最後ではないだろうか?そう考えると複雑な思いにかられる。しかも、昭和が終わる数年前に出たというのだから尚更。そしてその事実は、いみじくも巻末で「画一的な読本などあるはずはない」と断じられていることによって裏付けされるというのは、些かこじつけに過ぎるか?それはそうと、今回本書を繙いて少なからず驚かされたのは、著者がソシュールやヤーコブソンなどの言語学者の著作を読んでいたこと。そういう言語学をも駆使した文章読本がその後世に問われることがなかったというのは、残念に思う。
読了日:2月4日 著者:井上ひさし
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35416041

■殉教 (新潮文庫)
著者の死直前に編まれた短編集というのが気になる。あの数年後の日本を予見した『天人五衰』と恐らく前後して本書を編んだ著者の本意は何か?それはともかくとして個人的にとりわけ惹かれたのは、「三熊野詣」か?寡婦である主人公が長く使えた大学教授であり歌人である老人に密かに思い焦がれながらも、それ故に一層慎ましく控え気味になるというその姿に、何とも言えない悲哀を感じる。ただ、個人的にはこの小説、主人公常子の一人語りにしたほうが良かったのではないか?という気がするのだが。後、「獅子」の結末はちょっと物足りなかったか…
読了日:2月3日 著者:三島由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35385533

■一般言語学第二回講義―リードランジェ/パトワによる講義記録
理解の程は怪しいにせよ、とりあえずこのシリーズ全巻を読了して、これまで読まれてきた『講義』の意味について改めて考えさせられることに。訳者後書きにあるように、『講義』もそれに基づいた研究や思想も、ソシュール本来の思想とはかけ離れたものであり、下手したら一世を風靡した構造主義という思想的潮流の意味さえ危うくなりかねない。このシリーズにも勿論訳や、訳注の不手際など、問題はあるだろう。しかし、今後ソシュールの思想を知るためには、まずこのシリーズを手に取るべきでは?という気にさせられた。画期的仕事だと思う。
読了日:2月1日 著者:フェルディナン・ド・ソシュール,小松英輔
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35322755


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