吸いさしの煙草で北を指すときの 北暗ければ望郷ならず

元旦。
ガンタンク！

対尿管結石戦闘のため入院を強いられ退屈しているであろう僕を見兼ねて、元日のお昼から大阪の両親と弟が見舞いに来てくれました。

薬のおかげで痛みもなく外出もできたので、近くの量産型珈琲店で夜までひたすらおしゃべりしておりました。


互いの近況を話しましたが、僕の尿管結石を除いては双方大事無いようで安心しました。

家族みんな物知り屋さんで、浅学の僕の提示する話題くらいなんぼでも拾ってくれるんですよ。
こういうの、家族の気楽さって言うのでしょうか。


今年はご本をいろいろ読んだよってご報告申し上げました。


マッマは織田作之助の『アド・バルーン』が好きであるという。
やっぱりオダサク読んでいるか、あの人。
しかしやはりこれは男女の差に依る部分か、『競馬』が気に入りの僕とは好きな箇所描写の趣味が異なる。


太宰治の『右大臣実朝』が良かったという話をすれば、鎌倉幕府三代将軍のことだろう、むかし鶴岡八幡宮に行ったゾ、鎌倉もええとこやで、と言われました。
僕も一度鎌倉へ遊びに行ってみたいんですよね。
名産品であるという、和鏡を見てみたい。
できたら恋人とふたりで行って、源実朝と公暁の暗殺ごっこがしてみたいです。

太宰にハマるのは良いけれど玉川上水には気を付けなさい、と念を押されました。
相手がいないので大丈夫です、と応えそうになったが、悔しいので笑って誤魔化しました。


谷崎潤一郎も気に入っていろいろ読んでいると言えば、一昨年芥川賞だかを取った変わり者の田中ナニガシさんが、谷崎のナントカっていう作品についてカントカ書いていたよって教えてくれました。
田中ナニガシさんについては僕は未読なのですがマッマはいくらか読んだらしく、さすがにひと味違う、書いているものを読めばナカナカのもんだ、人の生きてきた由来経歴なんぞアテにならんわい、との評。
これは僕も読んでみねばなりませんな。


上野のターナー展を見に行った話をすれば、むかし家族で大英帝国を訪れた時に美術館行ってターナー見たんやでって言われましたが、小学生のとき連れて行かれたってもう覚えていねえよ！


映画の「風立ちぬ」を見たぞと言えば、母親は若いころ堀辰雄にハマり、あれは若者が好みそうなものだと言う。
僕は堀辰雄をまだひとつも読んでいない、無学。

映画繋がりで起こる思い出話、小さい頃見たドラえもんの映画、「ブリキの迷宮」「夢幻三剣士」のいかに素晴らしかったか、弟と意見が一致する。
「海底鬼岩城」のビデオをひとりで見て幼少の僕が半泣きになっていたなど、恥ずかしいエピソードも聞きました。


動物専門の写真家・岩合光昭氏の写真展にいったのじゃと言えば、実家で使っていた卓上カレンダーの猫写真はあの人の手によるものだときく。
そう言えばあったなぁ猫カレンダー……


僕のアイホーンケースのみどりちゃんを見れば、弟は全然興味ないものと思いきやこれ知っとるわアニメで見たと言い、パッパからはむかし親族の誰それが白塗りして宝塚のアングラ劇団で云々していたと聞き。
初耳だよ。
パッパは若いころ京の都にお住まい遊ばしていたもので、祇園会館で寺山修司の映画なんかも見ていたそうです。


僕が去年触れてきたものの数々が、転勤以前実家で暮らしていたときにどこかしらで出会っていたものなのですね。
良いものが身近にあっても気付けていなかったのだ。
あるいは、これが成長ということか。


しかし、話が合うから趣味まで全て一致するかといえば、そうでもなく。

例えばお酒に関して言えば、母親はむかし酒造関係の仕事に携わっていたせいかお酒の味にはこだわる割りに、バーで飲む楽しさには理解を示さず。
父親はワインやウイスキヰの薀蓄話が好きで沢山ご本を持っているくせに、全くの下戸なのです。

一度家族で酒など味わいに行きたいものです。
みなどのような感想を抱くものだろうか。


以前から話題にされたことも無かったのだけど、やっぱり結婚の予定だとか意思だとかはきかれなかった。
過去のアレコレを気遣ってきかないでおいてくれているだけかもしれませんが、気楽なもんです。


実家から差し入れやら着替えの荷物を持って来てくれたのですが、大掃除を終える前に病院へ運ばれたことを言い訳に、僕の家には弟以外は上げませんでした。
酒とか煙草とか女の痕跡(はあるのかわかりませんが)とか、親にはバレるとウルサそうなものが散乱しているのです。
とりあえず読まないまんがを持って帰ってもらいました。
飲まねえ酒も持って帰ってもらえば良かった。


父親は去年で定年を迎え微々たる退職金をもらい、引き続き仕事をしつつ、長年やりてえと思っていたことをやってみようかと考えているそうで。
母親はまたひとつ育児だか福祉だか系のデカい資格を取ったそうです。
どんだけ勉強してんだあのオバハン……

弟はまだフリーターっぽいぞ、良かった……

両親は立派なのに息子はボンクラな家庭の典型ですよ。

生き方がみんなバラバラすぎて親は僕の人生の参考にはならんのですが、僕もいっちょ親を唸らせるような何かしらをやってみたいですね。
今のぐうたらなままじゃ困らせる結果に終わりそうだけどな！
勉強せねばならんと感じました。


しかし、なんの勉強をしたものかなー