先月はケアマネの試験を控えていたため、読書は自重。でも結局受けなかったけど（苦笑…って駄目じゃん！！）それでも何とか四千頁を越えることができたな。今後アップダイクを読む機会が増えそう。
2013年10月の読書メーター
読んだ本の数：15冊
読んだページ数：4256ページ
ナイス数：46ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/4147/matome?invite_id=4147
■ガートルードとクローディアス
シェイクスピアの『ハムレット』では悪役だったハムレットの叔父と実母との関係を描いた作品だが、個人的にはハムレットが全くと言って言い程の脇役に追いやられているのが不満。しかも、実際にハムレットが作品に登場する場面は極端に少ないのにも拘わらず、各部毎に第三者の口を通して語られるハムレット像にかなりの変化が伺えるのだから、余計にその変化したハムレットが実際に実母や叔父とやりとりする姿を見てみたかったという気にさせられる。それから、太宰の『新ハムレット』と読み比べてみるのも面白いかも？という気にさせられた。
読了日：10月31日 著者：ジョン・アップダイク,河合祥一郎,JohnUpdike
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/33025467
■ブラジル
奔放な性愛とひたすら相手に尽くす純愛…矛盾する愛を一つの小説に注ぎ込んだ希有な一冊。それと当時にブラジルという資本主義に翻弄される危うい国家を舞台にすることで、二十世紀後半の世界の一断面を鋭く示したとも言えるか？ある意味ご都合主義とも言える展開に鼻白むする人もいるかもしれないが、これは物語ならではの面白さを追求したが故のものだとあえて肯定的に受け止めたい。三人の子供を失った後、三人の子供を得る（しかも父親は別）という展開も、ある種の神話性を思わせた。ただ、ある程度予想できたが、トリスタンの死は悲しかった。
読了日：10月29日 著者：ジョンアップダイク,寺門泰彦,JohnUpdike
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32989593
■人造人間―ヨゼフ・チャペックエッセイ集
表題作「人造人間」は弟カレルの『未来からの手紙』を想起させられる。ただ、恐らく当時の世相を強く反映させていると思える内容のためか、作者の言わんとするところが今一つ理解出来ないという印象が拭えない。要するに人間が機械に取って代われるのでは？という危惧感が根底にあるということは理解出来るのだけれど。また、弟カレルの作品を読んでいて幾度となく感じたように、著者の宗教的背景が気になる。本書で「神様」という言葉が出てくるが、その語り口は決して宗教を揶揄するような立場は見られない。その辺りを明らかにして欲しいと思う。
読了日：10月28日 著者：ヨゼフチャペック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32954689
■こまった人たち―チャペック小品集 (平凡社ライブラリー)
日本のSFやショート･ショートの源流はチャペックにあるのでは？と改めて思わされた。特にその寓話性や風刺性は星新一とかなり被るところがある。ただ、作品の多様性という点ではチャペックが遙かに凌駕しているが。また、星には無い人類に対する温かい眼差しが何とも言えずホッとさせる。ただ、本書の後半からは遺稿が大半を占めるということもあって、やや散漫な印象が拭えない。かなりの頁を占めるアフォリズムも今一つパンチが効いていないというか…今時のパワハラを思わせる「光輪」がとりわけ印象的だったか？オチもしゃれているし。
読了日：10月27日 著者：カレルチャペック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32935272
■走れウサギ (下) (白水Uブックス (65))
下巻においても、ウサギの憎めない駄目っぷりは相変わらず。一方の生活が行き詰まりを見せると、別の生活に逃避…ということを繰り返す学習能力の無さが見てて歯痒い。しかも、そういう優柔不断さがなければ、普通に良い奴なのだから余計に…ルースの同棲生活の行き詰まりと妻ジャニスの出産を機に家に戻るウサギ。出産後のジャニスとの再会場面にはさすがにホロっときてしまう。舅姑との仲も徐々に修復し、事態は好転するかに思えたが、すぐに暗転。そうした中でも息子ネルソンを気遣うところにウサギの優しさが伺える。続きが楽しみ。
読了日：10月25日 著者：ジョン・アップダイク
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32894334
■走れウサギ (上) (白水Uブックス (64))
善良で憎めない駄目男の物語という感じか？元バスケの花形選手という過去はあるものの、優柔不断で女たらしのしがないサラリーマン、ウサギ。しかし、その妻ジャニスも妊娠中であるにもかかわらず、毎日酒浸りで家は散らかり放題。そんな閉塞感に満ちた環境からの脱出を試みるウサギ。ひょんなことから知り合った女性ルースと同棲生活に入るも、独りよがりな言動から、その生活も行き詰まってしまう。その一方で妻の実家が所属する教会の牧師エクレスと奇妙な友情を育む経緯は、読んでいてちょっとほっとする。『ライ麦畑』の大人版という気も…
読了日：10月25日 著者：ジョン・アップダイク
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32879044
■「知」の挑戦 本と新聞の大学 II (集英社新書)
「�機廚茲蠻擦て睛討如�読み応えがあり、なおかつ興味深く読めた。橋下徹についての講義で、赤木智宏の著作が取り上げられたのが、とりわけ印象的。普通に考えたら、真逆に位置する筈の人達が橋下を支持するというパラドックスには、言いようの無いもどかしさを覚える。この現象は今後更に突き詰めて考えていかねばならないと思う。単純に楽しめたのは、やはり福岡伸一によるもの。フェルメールの作品に当時のアマチュア科学者であったレーウェンフックの影響が少なからずあったのでは？という氏の仮説はにはかなりの説得力があり、興奮を覚えた。
読了日：10月22日 著者：姜尚中,一色清,中島岳志,落合恵子,浜矩子,福岡伸一
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32822029
■サラジーヌ 他3篇 (岩波文庫)
表題作の「サラジーヌ」は、入り組んだ物語の構造とサスペンス物を彷彿とさせるどんでん返しに些か度肝を抜かれた。大抵の小説は読み進めていくうちにある程度のオチは見えてくるものだが、この作品は全くと言って言い程読めなかった。それ以上に入り組んでわかりにくいのが、最後に収められた「ボエームの王」。冒頭で話者が入れ替わり、その話者と軸になるストーリーと複雑に絡んでいて、一読しただけでは、話の構造が把握できない。逆に言えば、その複雑さがこの話の肝かもしれないが。そのかわり文体が平明だったので、すっと読むことができた。
読了日：10月21日 著者：バルザック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32805350
■「知」の挑戦 本と新聞の大学 I (集英社新書)
頁数の制限があるとはいえ、やはり突っ込みが足りないという印象が拭えない。新たな知のあり方へと読者を導こうという意図があるのならば、ある程度詳細な注釈を付けたり、巻末に参考文献を掲載するなどの配慮が必要だったのではないか？個人的に一番興味深く読めたのは加藤千洋による中国論。国家レベルでは緊張関係が続いているが、街中では中国人留学生が殆ど違和感無く闊歩しているという現状を理解する上での一つの手がかりとなった。また、あんな得体の知れない国と真っ向から戦争をしようというのは、殆ど狂気の沙汰という気がした。
読了日：10月21日 著者：姜尚中,一色清,依光隆明,杉田敦,加藤千洋,池内了
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32797467
■東方的 (講談社学術文庫)
本書に収められた論考が主に九十年前後というのが妙に印象的だった。タイトルにもある東方的なもの、多用体、四次元…めくるめくような刺激的なタームに魅力を覚えるものの、現在において本書が提起したようなテーマを追求するような雰囲気は皆無だという事実はとてつもなく重い。また、それと同時に著者のアクロバティックとも言える論の進め方は非常に魅力的であるのと同時に、つい眉に唾を付けたくなるのも事実。個人的には、「はじめに」で言及している東方のマリアとソフィアについて、更に突っ込んだ論考がなかったのが残念だった。
読了日：10月21日 著者：中沢新一
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32787559
■英国の近代文学 (岩波文庫)
明晰な晦渋体…先に読んだ著作の解説にあった言葉が幾度となく想起された。明晰な文体に惹かれて読み進めるものの、その言わんとするところは何か？ということがなかなか掴めない。でもなぜか惹かれてしまう。本書の解説でも述べられている著者の深い教養と見識に裏打ちされた豊饒な世界は通り一遍的な読み込みではとても歯が立たないということだろう。それはそうと、本書に解説が一切無いというのが気になる。英文学になじみのない一般の読者が本書を読んでも殆ど理解出来ないだろう。できたら詳細な解説をつけた改訂版を出して欲しい。
読了日：10月17日 著者：吉田健一
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32694146
■ニッチを探して
吾妻ひでおの『失踪日記』を思わせるホームレス生活の描写が妙にリアル。とりわけ空腹時における食物への渇望の描写が読者の食欲をもそそる。それはともかくとして、本作のテーマであるニッチという概念は色々な意味で示唆的。ニッチとは考えようによれば何処にでもあるが、また何処にも無いとも言える、それこそ宗教的でもあるし哲学的でもある。このあたり色々と考えを巡らせる価値がありそうだ。終盤で道長が絶体絶命の窮地に追い込まれたときは、さすがにヒヤヒヤさせられたが、最終的にピンチを脱したのには思わずホッとした。続編への期待大。
読了日：10月13日 著者：島田雅彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32599543
■可笑しい愛 (集英社文庫)
作者唯一の短編集だとのこと。そのせいか、他の作品にはない渇いたユーモアが感じられるような気がする。冒頭に収められた「だれも笑おうとしない」など、主人公の頑なさのゆえか些か分別を欠いた言動に、戯画的な要素さえ感じてしまう。また、タイトルが示唆するごとく、どれも恋愛を扱っているのだけれど、その大半が中高年によるそれを描いているということで、その年代にさしかかっている者としては、少なからず身につまされるものがある。ただ、ある程度チェコの歴史的背景を知らないと分かりづらいところがあるということを指摘しておく。
読了日：10月10日 著者：ミラン・クンデラ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32522508
■ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
正直あまり期待しないで読んだのだけれど、予想以上の面白さで、内容もしっかりしていた。とにかく橋爪、大澤両氏のキリスト教及び聖書についての造詣が深いのに驚かされる。また、科学やマルクス主義、無神論など、一見して反キリスト教と思われる物も、実はキリスト教の枠組みの中にいるという指摘には大きな示唆を受けた。ただ、カトリックにおいて大きな要素となる典礼やマリア信仰についてもっと突っ込んで欲しかったという不満が残る。できたら続編を出して、キリスト教の聖職者や神学者人とそのあたりのことについてより深く議論して欲しい。
読了日：10月9日 著者：橋爪大三郎,大澤真幸
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32509669
■美しき夫たち
解説にもあるように、その殆どのエピソードがアメリカのミドルクラスの中年男女が繰り広げる不倫や離婚や色恋沙汰を扱ったもの。不倫はおろか結婚もしたことがない僕のような者でも、同じ中年男性として、人生の折り返し地点をこえた人達が織りなす人間模様には少なからず身につまされる。ただ、アメリカ人の特性というべきか、悲哀を帯びがちな別れを描いても、どこかカラッとした要素を感じさせるので、読んでいてあまり陰惨にならないのが良い。最後に収められた「もう一人の女」の終盤で、主人公が妻の不倫相手の元妻にキスされる場面が好き。
読了日：10月2日 著者：ジョンアプダイク
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/32332209
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