生まれつき親知らずがない男

放置して死亡したケースも！「親知らず」処置してますか？
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僕は歯医者が嫌いだ。

だから、本当にどうしようもないことにならないと、歯医者には行ったことがない。

就職して2年目くらいだったか。
そのどうしようもない事態が起こった。
以前、虫歯になって治療してもらったことのある奥歯の詰め物が取れ、そのままにしておいたら、その詰め物が取れた穴が虫歯になったのだ。

あの時は、少し噛んだだけでも、電撃のような痛みが脳髄に走った。
食べられないというようなレベルじゃなかった。
噛み合わせることすら、痛くてできないのだ。
三叉神経の痛みは、陣痛の痛みに匹敵すると言われるが、これが本当なら僕は男で本当に良かったと思う。

僕は、当時付き合っていた彼女に付き添われて、泣く泣く歯医者に行った。
歯医者が嫌いな僕が歯医者に行くなんて、よっぽどのことだ。
歯医者に向かう間、彼女は僕に向かって、

「これは、きっと歯を抜かれるなぁ〜。」

と嬉しそうに言った。
歯を抜かれるんなんて、とんでもない。
歯医者に着くまでの間、何度家に引き返そうと思ったか。
彼女はいわば、僕をちゃんと歯医者に連れていくために、ついてきたのだ。

結局、歯医者では、歯を抜かれずに済んだ。
だが、先生にはめちゃめちゃ怒られた。
こんなになるまで放っておくなんて、どういう事だ、と。
歯茎を切開し膿を出し、神経を抜いた。
そして、菌を殺すために、そこにクスリを入れ、新しい詰め物を被せる。
治療が終わるまで、1ヶ月以上かかった。

実はその治療の時に、僕は歯のレントゲンを録った。
すると、レントゲンには歯が28本しか写ってなかった。
人間の歯は、親知らずを含めると32本である。
つまり、僕のレントゲンには親知らずが写っていなかった。

歯医者嫌いの僕は、もちろん生まれてこの方、歯を抜いてもらったことは一度もない。
だから、レントゲンに親知らずが写っていなかったということは、僕には生まれつき親知らずが生えていないということになる。

どうやら、まれに生まれつき親知らずがない人というのは居るらしい。
人間の永久歯は32本で、本来、親知らずは抜かずともすべて生え揃うものなのだ。
だが、昔と比べ、人は固いものを食べなくなった。
そのために、顎が退化して、昔と比べ今の人は顎が細くなっていき、親知らずが生えてくるスペースがなくなってしまったのだ。

いわば、親知らずのない人は、人間のその進化の過程の最先端というわけだ。
顎に親知らずの生えるスペースがないなら、親知らずは生まれつき必要ないということになるからだ。

まあ、そんなことより、僕は親知らずの事で歯医者に行かなくて良いことが何より嬉しい。
そして、歯を抜かれずに済んだのが何よりラッキーだ。