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2012年09月10日20:10

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館長庵野秀明 特撮博物館 〜特撮に変わらぬ愛と黙祷を〜

http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/index.html

9月9日、息子を連れ立って観てきました。
途中、近くのセブンイレブンでチケットを購入し、入館すると、チケットブースに若干の並び列があるものの入場待ちの表示は『0分』。


ラッキー、空いてるんじゃね?空いてるべ、キタコレ。



甘かった…orz

展示室内、大!渋!滞!!

それもそのはず。
入り口で申し込んだ音声ガイド(シングル500円/ペア800円)の内容が、超絶面白くて、普通の美術展示ならば、興味の無いコーナーをすっ飛ばしてサクサク進んでしまうところ、逐一音声ガイドのボタンを押しては、詳細な解説を訊いてしまう為、12時に入場して博物館を出たのは16時という長丁場。

しかし、これが、面白いのなんのって、全然疲れません。
時間が長いというより、むしろ、時の経つのを忘れるというのが正解です。

しかも、我々は時間と混雑の都合上、ラストのジオラマへの入場を諦めて、ジオラマの外枠から写真を撮ったくらいですので、ちゃんと最後までみっちり体験していたら5〜6時間くらいになっていたと思います。


展示内容は、古くは、ゴジラシリーズでおなじみの東宝特撮や、円谷ウルトラシリーズをはじめとする作品で使われた、着ぐるみやメカ模型をはじめ、なんちゃらマンといった類のヒーローマスク等、現存する設定資料をこれでもかと集めに集めて一堂に会したこってり味のちゃんぽん状態。
超絶リアル路線のウルトラホーク1号と、無理矢理変形ロケット人間のマグマ大使金ピカロケットが同列に扱われているのは、さながら、『天は、特撮の上に特撮を創らず特撮の下に特撮を創らず』といった趣すら漂ってきます。

しかして、ヒーロー番組単体のモノならばいざ知らず、おはようこどもショーの番組枠内5分間だけに登場していた、『レッドマン』のマスクを展示するに至っては、好きが高じ過ぎてゲテモノマニアの域に達しているとさえ言えましょう。

そんな中、メイン展示を張るのが、『巨神兵』。
ナウシカで、未成熟状態で担ぎ出されたそれが、体中腐敗しながら王蟲の群れをビーム一閃で駆逐するシーンを担当したのが、本企画プロデュース/庵野氏の本格的なアニメーターデビューというのは有名なオハナシ。

今回は、その『巨神兵』をミニチュア特撮でやってしまおうという、漢の心意気がギンギンに燃え盛る熱い展示が素晴らしすぎます。
最初に完成フィルムを見せて、その製作過程をメイキングで種明かしするという凝った展示内容に小学5年生男児(10歳)は大喜び。

ビルぐしゃぁーん → ひゃっはー
液体どばちゃぁぁ → うっひょー
イヌわんわんわん → あひゃひゃひゃひゃひゃ
トリぱたぱたぱた → ギャハハハハハハ
(実際に観たヒトだけホクソエンデクダサヒ)




『たった1回ぶち壊す為だけに、ミニチュアをバカ丁寧なほど精巧に作り上げてレイアウトし、それを何の躊躇も無く破壊する』
特撮とは、要するに神の所業の疑似体験ではあるまいか?
世界を創り上げ、思い通りに破壊する、そこには、人間の根源的な衝動、原始的な欲求を満たすものがあるように感じました。

しかし、これら、一連の製作過程が、NGを出す毎に振り出しに戻るという高コスト体質であることは、火を見るより明らかです。
CGで炎も重力も慣性法則も自在に描けるようになった今現在、わざわざ特撮を用いて映像を作り出す事の意味合いが何処にあるのかと問われても、明確な答えを出せる方は多くはいないでしょう。

かつて、アマチュア時代の庵野氏は、DAICON4オープニングアニメーションで名を馳せましたが、その内容は『特撮世界がアニメ世界に打ち勝つ』というコンセプトでした。
(モスラの幼虫はヤマトにのしかかって沈没させ、轟天号のドリルはホワイトベースを粉砕、ウルトラホーク1号は分離合体してバルキリーを撃墜する…)
庵野氏は、この時、既にアニメーションの無限の可能性に気付いており、描画技術の向上が、いずれは、特撮の映写テクニックを追い越してしまうことを予感していたのではないでしょうか。



今回、モチーフに用いられたのが、『巨神兵』であることは、単なる偶然ではないような気がします。

なにより、この展示で公開されたフィルムは、タイトルこそ『巨神兵、東京に現る』ですが、その実態たるや、アニメ版ナウシカの前日譚なのです。

『巨神兵』が焼き尽くした世界の先にあるのがナウシカの世界と考えると、果たして、焼き尽くされた特撮世界の地平の彼方にある新世界こそがアニメーションの地平に違いないと思えてくるのは、考えすぎでしょうか。
ワタクシには、『巨神兵、東京に現る』が、死期を迎えた特撮に対する、庵野氏なりの精一杯の送り火に思えてならなかったのです。



ところで、特撮を凌駕したアニメ産業も、その後のゲーム産業の隆盛で人材流出に見舞われ、今や、かつての勢いはありません。
(ポケモンとか、既にアニメが作品としての存在ではなく、新作ゲームを売る為のマーケティングツールに成り果てている始末)

そのゲーム産業ですらも、今は、既に停滞〜衰退期に移行しているとか…
いやはや、エンタテインメント産業の栄枯盛衰の加速ぶりには、ものの哀れを感じざるを得ません。
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