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2012年06月15日19:41

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釈迦マル主義者・遠藤誠とそのサークル

その後、縁あって釈迦マル(釈迦+マルクス)主義の遠藤誠弁護士と知り合った。
きっかけは、ある出版記念パーティーだった。スピーチに立った遠藤先生は、驚くべき挨拶をした。
「昭和天皇を殺すことは、地上の法では罪となるが、仏の法においては無罪である」
実は、この程度の発言は遠藤氏にとってはなんでもないことなのだが、初めて聞いた僕にはショックだった。ここにいるのはヘルメット姿の学生ではなく、着飾った大人の男女なのだ。
その当時、僕には映画「ゆきゆきて神軍」のファナティシズムと戦友愛のイメージが強烈に焼き付いていたので、その主人公・奥崎謙三氏の「天皇を殺すことは地上の法では罪となるが、しかし神の法においては無罪である」との強烈な思想を直ちに想起した。遠藤氏は奥崎氏の刑事事件の主任弁護人を長らく勤めたのだった。
それから間もなく、僕は遠藤氏の主宰する「現代人の仏教の会」に出席するようになった。会合は隔週木曜日に開かれ、教材は現在のところ法華経である。そこではK研究所で学んだ法華経の基礎的知識が大いに役立った。
それはともあれ、遠藤氏の授業法はとにかくテキストを舐めるように一語一語、丁寧に解説するのだ。だから、法華経なら法華経が終わるまでに何年もかかる。
それはもちろん、法華経は一生かかっても究み尽くすべきテキストであるからそのやり方もわかるが、遠藤氏は毎月第三土曜日に行われる「心の触れ合う会」という名の社会科学研究会でも同じやり方を採用している。
こちらのテキストは、別にマルクスの原著というわけではなく、誰も古今の名著とは思わないであろう新書版だが、それでも断固として同じやり方を貫くところに遠藤氏の凡人には計り知れない信念があるのだろう。
僕の楽しみは授業の終了後に行われる自由な討論会である。出席者の名前は出さないが、いずれも一騎当千のつわものたちである。
遠藤誠弁護士は、「内山愚童を偲ぶ会」も主宰している。内山愚童は大逆事件に連座して処刑された曹洞宗の僧侶である。「天子、金持ち、大地主、人の血を吸うダニがいる」の名調子で始まる檄文を本堂の床をくり抜いた文字通りの地下印刷所で発行した。
毎年命日にあたる一月二十四日、箱根の林泉寺で執り行われる法要に何度か参加した。反天皇主義者が集まって怪気炎を上げるのだが、ときには右翼も来て談論風発、とにかく面白い人には面白い。
この会合を九二年に僕が放送用のニュースとして「行われます」の形で早朝流したが、放送した局はなかったようだった。……以上 「新興宗教精神世界遍歴記 著者=結城麟(ゆうき・りん)
発行=平成5年8月5日 発行所=株式会社国書刊行会
同書119〜121ページより引用いたしました。

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