4年間も毎日、記憶がなくなるまで飲んでいたら、私の肝臓はすっかりフォアグラになり
何回も入院するハメになった。
体を壊して飲めなくなったので、テンに店をあげようと思った。
しかし、不思議な物で、あれだけ客を持っていたテンだが、自分が店を仕切るとなると
全然、うまくできない。
私が店に出なくなったら、売上は急にガタ落ちになった。
そして、運が悪い事に、この時期に、複数の広域暴力団を巻き込むような大きな事件が勃発した。
詳細を書くと、場合によっては、今でも殺されるかもしれないので、これは流石に書かないが
別の3団体の若頭や組長代行といった、かなりの上の役職の方を含む30人以上が集結して
殺すだの、腕を落とすだのと、はげしい事態になった事だけ書いておく。
この事件により、もう水商売をやるのが、面倒くさくなった。
潮時だなと思った。
人と話すのが面倒になって、ちょっと鬱状態になった。
家からでるのが面倒になった。
人と話すのが苦痛になった。
そして、ちょうどファイナルファンタジー11という、オンラインのゲームと出会い
これにハマり、約1年間、ホスト時代の貯蓄だけで、何の仕事もせず
家からも出ず、鬱の引きこもり生活をする事になる。
ゲームをする時間は尋常ではなかった。
1日に18時間はゲームをした。
のこり6時間は睡眠時間なので、起きてる間は全部ゲームという生活を365日以上したという事になる。
こうなってくると、コンビニで買い物するときに、店員さんの目を見るのもイヤな感じになる。
会話なんてとんでもない。
お箸がどうの、温めますか?とか聞かれてもガン無視だ。笑
知らない人との会話なんかうっとうしくて、する気にならない。
リアルを捨てて、ヴァナディール(インターネットゲームの世界)に生きた。
今までいた、たくさんの友達との交友は全て遮断した。
この時、交友を遮断しかなったのは
テンと、横矢裕(ユタカ)という人間の2人だけだった。
先週の従業員紹介に出た名前だ。
このユタカというやつは、ペンギンを立ち上げる時に、カクテルの事や、料理の事を知った人間が1人もいなかったので指導してもらう目的で、従業員にした人間だ。
性格は最悪だし、女には全然モテないのだが、重要な役割だったので、チーフと言う役職を与えた。
途中で、ウチを抜けて、色んな店を転々としたのだが、暇そうなのでネットゲームに誘ったという次第だった。
そして、テンも、ネットゲームに誘った。
そのネットゲームつながりであり、さらにリアルのつながりがある、3人としか実際には会話しない感じだった。
その現状が良いとは思っていなかった。
貯金の残りも2000万円を切った。
そんな鬱状態から、気合いで、脱出しようという気持ちになって重い腰をあげたのは
1年以上ひきこもった後だった。
よし、酒が飲めないのならレストランをやろう!!
今、流行りのアジアンレストランがいいんじゃない?
田舎の高知じゃダメだ!!
まず、千葉、そして東京進出だ!!
と、思った。
アジアン料理とはどういうものか?
それを勉強するべく、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシアなどを周った。
そして、バリ島に行った時に、とあるオッサンに
『バリ島に本社がある方が迫がつくよ!』と、そそのかされた。
それもいいなーなんて、軽い気持ちで、バリに会社をつくり
レストランを作った。
これが一筋縄では行かなかった。
色んな人に騙され、ぼったくられ、最悪を極めた。
本当はテンと、ユタカと3人で、1店舗をやるつもりだったが
ユタカがどうしても、在バリ日本人の為の日本食料理屋が出したい!と言ったので
その意見を取り入れて、2店舗作る事にした。
これが思ったより、お金がかかった。
1つはレギャン通り、日本食料理の方は空港の近くに作った。
ユタカの方は、私がやりたかった感じの店ではないので、ユタカに任せた。
このユタカに任せたのが最低の結果を生んだ。
店は暇だし、店のお金を取って麻雀しにいくし、ロクに店にいないし。
こんな経営では潰れるのを待つだけ。
私は個人的に、ユタカには200万円以上貸していたので
この状況は最悪の最悪だった。
本当なら、費用折半で、売り上げから、初期投資の半分を返してくれれば
それでいいよという、かなり甘い契約だった。
しかし、ユタカは、店が潰れそうになった時に
「俺は、店の折半は払う必要がない!契約書がないだろ?」と言い出した。
まあ、それは私のミスなので、いいとしよう。
ユタカは、借金を返す為に、日本で仕事をすると言って、日本に帰った。
そして、そのまま、消息不明となった。
探し当てて、電話したら、結婚したし、お金なんかない! と断言された。
次に電話したら着信拒否された。
今、現在まで、ユタカは、未だに、私を無視し続けている。
もう一店舗は、1回目のテロがあった真ん前のレギャン通りに作った。
ユタカが別店舗担当になったので、こっちはテンと2人で作った。
一生懸命に頑張ったけど、2回目のバリ島の自爆テロによって、壊滅的なダメージを受けた。
レギャン通りは、全く人通りがなくなった。
思ったより、初期投資がかかってしまったので、すぐに運転資金が尽きた。
残念だが、あきらめて、閉める事にした。
テンは日本に帰った。
この時点で、貯金の2000万円は、ゼロになった。
この時期に日本では大変な事があった。
泣きっ面に蜂とは、まさにこの事か。
専門学校の時からの親友のツネちゃんの嫁からメールが来た。
日本からのメールだ。
前回、日本に帰った時に、どうしても、ツネちゃんに会いたくて、広島まで車で行った。
久しぶりに色んな話をしたが、どうも覇気がなかった。
元々、元気ハツラツという感じのヤツじゃなくって、すごく頭が良く、色んな人間の気持ちを理解できるクセに、世の中を斜めから見て、自分の理屈を通すような、完璧に天邪鬼みたいな人間だった。
そんなヤツが、その時に限って、昔を懐かしむ事を恥ずかしく思ったり、好きだという表現を笑いで表す時に微妙な表情をしていて、そして何よりとても疲れているように見えた。
柄じゃないというか、変な感じだった。
奥さんからの、メールの内容は
そのツネちゃんが、先日から行方不明になったと、いうのだ。
当然、私は「大丈夫だから、心配するな」と返信していたのだが。
毎日、メールをやりとりした。
そして1週間後、ツネちゃんが自殺したという内容のメールが来た。
どうして、そうなる前に俺の所に来なかったんだろうか。
バリが遠すぎたのか、それとも俺は眼中になかったのか。
いや、そんな事はないだろう。
クソほど悔しいし、死ぬくらいなら何でもできたろうと、悔やまれない。
と、いうか、未だに信じられない。
コイツは、そういう逃げ方をするヤツじゃ絶対なかった。
日々のストレスは俺には当然理解できないけど
それなら、すべてを捨てるつもりで一度、バリに来てもらいたかった。
よく、聞くと、家の書置きに
『○○さんに騙された』
という走り書きがあったらしい。
おもいきり怪しいと思ったので、その事件を色んな方向から調べた。
どうも、暴力団絡みで、自殺に見せかけて殺されたというのが、正しそうだった。
調べてくれた人が
「ますらおさん、この件、探るの結構、やばいですよ」言ってきた。
すごい心の葛藤があった。
もし、殺されたとして、相手を見つけ出して、刑務所に叩き込めるまでの力が私にあるだろうか。
警察や弁護士まで全部グルの可能性もあった。
そんな広島の暴力団に、私1人でどうにかなるものだろうか。
実は、バリ島に移住する時に、結婚し、バリ島に来てから娘も出来ていた。
私は、家族を守る事を考えて、すこしビビってしまった。
ツネちゃんにも、ウチと同い年の娘がいた。
この子とウチの娘と、お揃いのカバンとかをもらった事もあった。
ツネちゃんの親父さんは、ツネちゃんが亡くなる1ヶ月前に亡くなった。
この遺産相続のお金で、自動車工場を作る予定だったらしい。
それに絡んだのが○○さんだ。
ツネちゃんのおふくろさんは、ツネちゃんがメモを書き残した○○さんの事をビビってしまって
何も口にしない。
ほっといてくれしか言わない。
ツネちゃんの奥さんは、涙も枯れていた。
奥さんに色々頼られたのに、私は何もできなかった。
色んな悪そうな友達、弁護士の繋がり、色んな方面から調べた。
不幸な事に、奥さんが、飛び込みで頼った弁護士がいたのだが、調べると、この弁護士は
相手のバックのグループの弁護士だった。
道理で、奥さんに不利になるような事ばかり進めると思った。
しかし、私にはお金もなかったし、広島にもコネがない。
バリにいたからとか、それは言い訳でしかない。
本当に、無力だった。
無二の親友のために、何の役にも立てない。
何が親友だ。
嘘つきか、私は。
その時は、本当に何をする気も起きなかった。
ただただ、海を見つめて毎日を過ごした。
つづく
ログインしてコメントを確認・投稿する