４月１２日午後１０時４０分頃、約１年間スキルス胃癌を治療してきた妻がこの世を去った。
４月２日午前８時頃、妻が鼻から出血した。以前から鼻を掃除したら出血していたが、すぐに止まっていた。
だが、いつもとは違っていた。トイレで力んだだけで出血し、３０分経っても止まらない。
昨年の４月から癌を治療している病院に緊急入院。
とりあえず、耳鼻科医がレーザーで止血を試みるが、完全には止めることは出来ない。気道内に血液が入らないように吸引するが、妻は悲鳴をあげていた。
血液検査の結果を聞くと、赤血球、白血球、血小板が異常に減少していて、輸血を行わなければならなかった。血小板が日赤から届くのに２〜３時間かかるということだった。
血小板が届き輸血したが、出血はとまらなかった。抗がん剤の副作用で入れても壊されてしまう…。鼻だけでなく、口の中の粘膜、歯茎等からも出血しているようだった。
毛細血管ならちょっとしたことで、どこでも切れて止まらない状態だった。
頭蓋骨内等で出血があると危ない。鼻や口や胃腸等のように出口があるところなら溜まるまえに出せるが…。出血すると止まらないので、出血を伴う手術も不可能な状態…。
血液検査での各項目の数値は日を追うごとに悪化した。
入院した翌日、癌治療の主治医から説明と謝罪を受けた。抗がん剤の副作用でこの状態に陥り、その副作用が弱まるのには、あと１週間かかり、数日がヤマであると。
耳鼻科医からは、最善を尽くすが（看護士による１時間毎の吸引や監視強化等）、血の塊が気道を塞ぎ窒息しても責任を取れないと。
私は、妻の横に補助ベッドを置いて寝ずの番をすることにし、少しでもおかしいと感じたらナースコールをすることにした。
入院４日目から、血小板の数値が上昇しだしたが、赤血球や白血球の数値は横這い…最後まで横這いだった。入院２日目ぐらいから腹水が溜まりだし、やがてパンパンに張ってしまった。
数日後、出血は止まったが、妻は会話が出来ない状態のまま。意識があるのか無いのか分からない状態に陥った。
モニターが示す心拍数は、なんと１４０回／分。通常は７０〜８０程度だから約２倍。それが約１０日間続くことになる。
いわゆる炎症反応があるかどうか判断に用いる、CRP＝C反応性蛋白 (C-reactive protein)の数値が、入院２日目から４０代に。だが熱が出ない…やはり異常…血小板の数値が上昇しだした頃からようやく微熱が出るようになったが、出たら出たで解熱しなければない。
あちこちで感染症が起こり出したのかもしれない。
レントゲン写真を撮るとやはり肺炎を起こしていると。頼みの綱の尿も出なくなって、体中がむくみ出した。
痩せ形な体形な上に、約１０�疏蕕擦謄�リガリだったのに…ふっくらして来て痛々しかった…くるぶしが分からないぐらいに…。
４月１１日の朝の採血で、前日までの検査では基準範囲内だったＡＳＴ（ＧＯＴ…基準範囲５〜３５）が１００２、ＡＬＴ（ＧＯＰ…２〜４０）が４５７となってしまった。黄疸を示すビルリビン関係の各数値もかなり高く、黄疸が眼球にもハッキリ分かるほど現れた。
とうとう来るべき時がやって来てしまった。
４月１２日午後２時頃、私が病室を離れていた間に、血中酸素が８０％を切り出しアラームが出っ放しになり、血圧も８０を切り出した。家族が言うには８分間続いていたと。看護士は酸素の量を増やしただけだとも。
そんなことでは、一気に心肺が停止する。静かに眠らせてやりたかったが、妻の両親と妹夫婦が病院まで１５分程度の距離に来ているので、どうしても持たしてやりたかった。
脚等を摩って励ましてやるとアラームが出ない範囲まで復活して来た。妻の両親が到着したあとも摩り続けていたら９５〜９８％ぐらいで安定してきた。
しかし、午後１０時４０頃、妻は力尽きた。朝から粘膜が出だしてきちんとつむれない瞼をシッカリ２回閉じ、一拍おくようにまたシッカリ２回閉じ、涙が流れた。
きっと何か言いたかったのだろう。『さようなら』か『ありがとう』か。それとも『やっと楽になるわ』か…。悲しいかな、妻は瞼しか動かせなかった。
私は妻に、『また会おう』と言葉をかけた。
暫くして、妻は静かに息を引き取った。
享年５３歳（満５１歳）。
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