直ちに影響なくても、中長期的にはどうか？

牛乳などで基準超える放射線
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≪枝野幸男官房長官は１９日午後の記者会見で、福島県内の牛乳と茨城県内のホウレンソウから、食品衛生法上の暫定基準を超える放射線が検出されたと発表した。「直ちに健康に影響する数値ではない。冷静な対応をお願いしたい」と述べた。
　牛乳が取れた場所は、福島第１原発から３０キロ強の距離だったと説明。牛乳、ホウレンソウの扱いについては「摂取制限、出荷制限が必要かなどについて早急に検討する」と述べた。≫

　放射線量については、「●●マイクロシーベルト」なんて単位がすっかり馴染になるくらいに最近のニュース等で毎回登場するようになったし、「直ちに問題となる数値ではない」云々といった話が「専門家」と称する人たちによって説明されているようだが、どうも本当のことだろうかと疑ってしまう。

　よく話に出るのは、「胸部レントゲン撮影１回分」とか「CTスキャナー１回分」の放射線量であるが、ああいうものは１回限りで一瞬のことであるが、住民たちは、同じ場所に住んで、放射線に晒され続ける訳である。有毒な物質であってもごく少量であれば、すぐに何か問題のある症状を引き起こさない場合がある。でも、だから問題がないということではなくて、微量ずつでも継続的に体内に蓄積されていけば、やがて致命的な結果をもたらすことになるであろう。

　要するに、現在の放射線量を測定して、問題があるとかないとか議論するヒマがあれば、「元から断つ」こと、つまり放射線が発生している状態を一刻も早く解消するしかない。そうでないと、チェルノブイリ原発の周辺同様に福島県はやがて人が住めない場所になってしまうことだろう。

　既に「レピュテーショナル・リスク」（風評被害）は、ほぼ改善不可能なレベルにまで達している筈である。今後、福島県産の農作物はとても売り物にはならないだろうし、福島県内の工場で生産された商品も避けられる可能性がある。それどころか福島県内への商用での出張だって社員に拒否されるかも知れない。トラックの運転手が嫌がるから福島県内への物資輸送が進まないという話をどこかで聞いた。福島支店への転勤などは特別手当でも出さないと受け入れてもらえなくなる可能性だってある。

　こうした被害の損害賠償責任を仮に東電１社で負った場合、東電は破綻するかも知れない。水俣病におけるチッソと同じ立場であるが、被害額はこちらの方が遥かに莫大な金額になるであろう。

　以上のようなことを考えると、日本のように狭い国土で原子力発電を今後も継続するということは、民間企業には耐えられないリスクを抱え込むことに等しい。

　取り得る選択肢としては、「原発は一切やめる」か「国策として国の責任で継続する」かいずれかであろう。

　前者の場合には、原発で賄っていた電力を調達する代替手段を講じる必要があるが、一朝一夕にはそのようなうまい手段を確立させることはできないだろう。そうなると現在やっているような「計画停電」を今後も継続しつつ、電気の無駄遣いは極力避けて、いろいろな家電製品なども省エネタイプにシフトして、電力供給可能量の範囲内で何とかするしかない。電力を食う工場などの生産拠点の海外への移転は益々拍車がかかることになり、国内の雇用機会は益々減少することになるだろうが、やむを得ないことである。

　後者については、国策として原子力発電に拘る説得力ある理由が示せないと国民の賛同を得られないであろう。原子力技術の保持だけであれば、海外の原発設置を受注すればよいということになろうが、こういう大事故を起こした日本のメーカー（具体的には、三菱重工、東芝、日立の３社）にわざわざ発注する国などないだろう。そうなるとこれら企業の原発部門はスリーマイル島事故後の米国同様、海外企業に部門ごと転売するしかないかも知れない。
　
　あるいは発想を転換して、今回の事故で汚染され尽くした福島県に日本中の原発を全部集約してでも、国策としての原子力発電を維持するというのであれば、政府は福島県民に相応の補償を払って退去してもらう必要があるが、そこまでして原子力技術の保持に拘らなければならないとは僕には思えない。

　話がどんどんと逸れて行ってしまうが、まだ福島の原発事故は解決しておらず、放射能漏れの元が断てていない状況下で、問題があるとかないとか議論しても始まらないし、たぶん中長期的に検証しないと結論が出せない問題だろうと思う。そして中長期的にはたぶん問題なしとは言い切れない筈である。軽々に「問題ない」などと言う連中については、今後はぜひとも福島第１原発の前にでも連れて行って、自分で放射線を浴びながら喋ってもらうのがよいと思う。カイワレを食べさせられていた管さんを思い出す。