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2011年03月09日03:53

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ささやかな確執

 ひと雨降った翌日は晴れ、今日から事務所の外で採取してきた土壌サンプルを分別する作業に取りかかった。
 編み目の異なる円筒状の金網を三つ積み重ねて、そこにサンプルの土を入れ、水で洗い落とし、濾過してゆく。ホースの先にノズルを装着し、勢いよく水を吹きつけ、泥を洗い落とせば、目の粗い順に金網に残るって寸法だ。
 そういう単純作業はさぞかし倦むと思われるだろうが、さにあらず。泥が跳ね汚れもするが、やっていてなかなか楽しい。時間の経過を忘れるほどだ。少なくとも室内での整理作業より気が紛れる(第一、眠くならないしね)。
 まあ、ひとり気ままに水の戯れやっていると、何か視線を感ずる。コンクリートの塀の上を見あげてみれば、最近事務所付近に居着いた猫が、不思議そうな顔をして、ぼくを覗きこんでる。
「何してんの?」
 ――悪いけど猫くん、きみに構ってる余裕はないのだよ、なにせぼくは仕事中だからね(それに、あいにくなんの持ち合わせもないし)。
 猫はしばらく作業を観察していたが、やがて興味を失ったらしく、より日当たりの良い場所に移動していった。
 休憩中、さっきシカトした猫を探した。よく資材置き場やプレハブ小屋の床下に潜っている。今日はどこだろう。
 しばらくあたりを調べてみると、停めてあるライトバンの下から、か細い鳴き声が。身をかがめてシャーシの下を覗きこむと・・・・・・いたいた。

フォト

 携帯で彼(彼女?)の姿を収め、満足したところで、始業のチャイムが鳴った。持ち場に戻ったぼくは、濾過して粒子の粗い順に選別したサンプルを、水切り籠に新聞紙を敷いた上に広げた。そいつを戸板の上に並べて天日で乾かすのである。
 ぼくは仕事に没頭し、しばらく猫のことを忘れていたのだが――
 昼食後、戸板の上の水切り籠を確認しに行ったところ、なんと、生乾きのサンプルが方々に四散してるではないか。
 ――やられた。あのヤロウ、水切り籠を蹴散らしていきやがった!
 ぼくが途方に暮れていると、背後から、ニャオーンとふたたび鳴き声がした。
 単管で設えられた物置用の櫓の上から、さっきの猫がこちらを睨下している。
「ぼくのふだんの通り道に、そんなもの置いたあんたが悪いんだよ」
 さっき相手にしなかったのが悪かったのか、それとも無理やり写真を撮ったのがまずかったのか。
 フフンと鼻で笑われたような気がした。いやあの猫、確かに笑っていたよ。仕返ししてやったぜ、ってな態で。





【今日の一曲】
 いろいろ気が滅入ることも多いけれど、そんな時はオールタイムOKの、とびきりポジティブなやつを聴くに限る。
 スティービー・ワンダーの“Do I Do”なんかどうだろう。長尺曲だが、雄大さを味わうには必要な時間の長さだ。
 クインシー・ジョーンズ的と何かに書かれていたが、ぼくはスティービーなりのフィーリー・ソウル解釈だと思う。


 それにしてもネイザン・イースト! あんたのぶりぶりしたベースはホンマに超弩級や。さすがはバンドマスター。


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