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2011年03月06日14:24

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怪談TPP

西部ゼミナール
(2010.12.18放送)

中野
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『このTPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイという非常に小さな国同士が協定を結んでいた所に、アメリカが入り、オーストラリア、ペルー、ベトナム、最近ではマレーシアがその交渉に参加するという事になり、現在その交渉のルール作りが行われてるというお話です。かなり急進的に貿易の関税自由化を目指すという事で、モノだけじゃなく人やサービスも含めて“統合的”になっていると聞いています。予め「米は例外」といった例外品目を提示しての参加は認められないとの事で、コレを多国間でやります。因みに類似の自由貿易の協定でアメリカと韓国の2国間でやってるモノは“FTA”といいます』

西部
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『FTAというのは“フリー・トレード・アグリメント”の略ですね』

中野
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『2010年10月の初旬に、菅首相がこの参加を検討する所信表明をしました。11月初旬のAPECまでの僅か1カ月の間で、コレだけの包括的な話を急にするという唐突感さが先ず異常です。しかもこの議論はかなり大切であるにも関わらず、マスメディアだけでなく、政府或いは経済界が「開国か鎖国か」とか「平成の開国をすべきかすべきではないか」といった単純極まりない分類でやっています。日本は今、鎖国なんかしていません。平均関税率も世界的にみると低いですし、農業に限定した平均関税率もかなり低い方です。完全な貿易自由化と完全な鎖国の間に、山ほどバリエーションがあるのにですよ』

西部
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『さっき聞いてビックリしたんだけども、日本の農業の関税は778%でしたっけ?』

中野
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『モノにもよりますが』

西部
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『平均で言うとEUより低いんですよね』

中野
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『計算の仕方はいろいろありますがEUより低いです。TPP参加国はみんな農業王国が多いのでこの中では高めですが、世界で見ると特に高い訳じゃありません。非常に気になるのが、議論のレベルがあまりにも単純だという事と、「TPPで日本の農業が危ない」とする一方で「TPPをやると輸出を伸ばせる。製造業は得をするが農業は損をする、どっちがいいのか?」といった農業vs製造業みたいな話で議論がなされている所です。私の見立てでは製造業がTPPに参加して輸出を拡大する事は出来ません。TPPが「アジア太平洋の貿易のルールの基本になる」とか「コレに乗らないと世界の孤児になる」といった議論がされていますが、交渉に参加しているシンガポール、ニュージーランド云々の9カ国に、日本を加えてGDPでどれだけ大きなシェアがあるかと言うと、この10カ国のうちアメリカが67%、日本が24%、オーストラリアは5%…9割が日米で、あと残りの7カ国で4%なんです』

西部
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『7カ国で4%…』

中野
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『しかもアメリカと日本以外の国は、みんなGDPに占める輸出の割合が3〜4割の外需依存国なので、日本が輸出できそうな内需で計算し直すと、アメリカが73%、日本が23%、オーストラリアが3.7%、残り7カ国で0.1%…だからTPPで「アジアの成長と共に日本が輸出を伸ばす」と言ってますが、0.1%なんです。アジアの成長とか全然関係なくてコレは実質的に“日米自由貿易”なんです』

西部
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『アメリカとジャパンの関係であって、それに入らなければ世界の孤児になるという事自体が統計上全くの間違いだと』

中野
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『コレが本当に東アジアや太平洋のルールになる為には韓国と中国が入らないといけません。しかし韓国はFTAを選んでいます。理由は、アメリカや日本に輸出したい国が7カ国もあって、みんなアメリカの味方。この中に入るのは不利だから韓国は2国間でやっているんです。中国が入らない理由は“人民元問題”といって為替のコントロールをしちゃってるんで、自由貿易、関税以前の基本的な段階でつっかえちゃってます。そうすると大体このメンバーになるんです』

西部
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『アメリカに対して工業、製造業の輸出増などは関税撤廃しても見込まれないというのは?』

中野
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『日本は先ずアメリカに輸出するという事を考えないといけないんですが、オバマ大統領は「5年間で貿易輸出を2倍に拡大する」と輸出拡大戦略の為にTPPを活用すると言っています。アメリカが輸出できそうな国はこの中では日本しかないので、つまりアメリカは日本に輸出したいと言っているんです。現在失業率が9.8%のアメリカに日本は輸出なんか出来ません。そこで疑問なのが、なぜアメリカは貿易黒字を増やしたいのに自由貿易をしようとしているのか?なぜ関税を撤廃しようとしているのか?この理屈は簡単で、アメリカが輸出を拡大する方策は関税じゃなく“為替”なんです。だから関税は全然関係ないんです』

西部
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『つまりドル安に誘導して輸出し易くする為ね』

中野
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『すなわち、アメリカの戦略は恐らくこうです。

→味方をする国々がいっぱいある中に日本を巻き込んで“多数決”で自国に有利なルールを決めて行く

→日本に農業の関税を撤廃させる代わりに、関税を撤廃してみせる

→その後ドル安に誘導する

→日本の工業製品の競争力は減殺される。減殺されなければ現地生産する為に工場を建てさせる

実は既にそうなっていて、為替リスクとかあるので、例えば自動車産業はアメリカで販売する自動車の66%が既に現地生産のモノなんです。ホンダなんて8割が現地生産なんで既に関税なんか関係なくなってる。

→ドル安誘導で比率がドンドン高まる。日本には輸出先を提供しないし、日本企業に雇用を奪われる事もない

→ドル安に依って競争力を強化された農産品が、関税の防波堤を失った日本市場に襲いかかる

→黒字が貯まって行く

こういう仕組みになっているので、どう考えたって日本はTPPで輸出なんか拡大できっこないという事なんですよ』

西部
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『言葉汚いけど鎖国か開国かの前に、日本はアメリカに対して「レイプしてください」男でいえば「去勢してください」と言ってるような哀れな姿って事ですよね』

中野
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『私はハッキリ言ってアメリカか中国の官僚になりたかったですね。日本をカモにするのは赤子の手を捻るようでこんなに簡単なものかと。日本にこういう条件を突き付けて「鎖国にしたいのか」と言えば、みんな「日本は開国しないと生きていけない」と言ってコレに参加する、経団連も政府もこうゆう思考回路の人達ばかりですから。それでいて「日本国家には戦略がない」なんて言うので理解できません』

西部
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『この平成の20年間を見返すと、誰も言わないけれど、一番犯罪的というか世論をミスリードしているのは財界と思いますね。今回は見事にそうで「世界の孤児」も米倉経団連会長の発言でしょ。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、そういう国とTPP結ばなければ世界の孤児になるなんて…ほんの僅かでしょ?』

中野
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『シンガポール、マレーシアはGDPよりも輸出の方が大きい外需依存国。チリ、ブルネイ、ペルー、アメリカ、オーストラリアは鉱物資源や農産物の輸出力のある国。ベトナム、マレーシア、ペルー、チリは低賃金労働を輸出したい国。よく「TPPに早く参加した方が日本に有利なルールが作れる」と言いますが、有利なルールを作る為には利害が一致する国と組まなければなりません。みんな一次産品の競争力があったり、外需依存度が強かったりしていて、一次産品の競争力がなく、工業品の輸出国で、しかも内需が大きい日本は、何処と組んでルールを上手く作れと言うんでしょうか』

西部
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『連携と言っても結ぶ為には、共通の基盤がないと成り立たないよね』

中野
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『そういう事なんです』

西部
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『アメリカは世界の金融を握っていて金融操作でドル安に持ち込む事に依り、日本からの輸出を難しくする強力な手段を持っている事と、中国に対してもそうですが、日本の企業は既に現地生産に乗り出しているから、現地生産は日本からの輸出じゃないって事ですからね』

中野
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『農業は、為替リスクや関税リスクを回避する為に現地生産する事なんて出来ないんです』

西部
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『まさか向こうに行ってね…』

中野
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『だから農業は確実にやられるんです』

西部
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『こんな恐るべき事が、しかも急にでしょ?例の尖閣問題その他で民主党がドンドン落ちこぼれて行く。それの起死回生のつもりでTPP。自由という言葉は徹底的にポジティブ・ワードだと。もう…』

中野
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『雰囲気だけです』

西部
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『実に子どもっぽいですね。昔から“自由の履き違い”という言葉があって、規律が無ければ無秩序と混乱をもたらすだけだと、こんな事中学生にでもなれば分かる話ですよ。ところが日本は経団連、民主党、年齢から言えば60、70歳にもなって子どもですら分かる話を“自由”という漠たるイメージだけで「開国だ!」なんて言って。これ以上開国なんて止めて貰いたい』

中野
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『開国する事が良い事で平成の開国だなんて、よくそういうバカな事が言えるなと。じゃあ幕末・明治の開国は何だったのかという話ですよ。欧米列強より開国させられて開国した後、ずっと富国強兵をやって、日露戦争をやって、独立・関税自主権(※)の回復の為に一生懸命戦った。このTPPは、やっと回復させた関税自主権を失う為にやっている。明治は今と違って偉いと思ったのが福沢諭吉。文明開化で開国で攘夷鎖国を批判したと云われてますが、彼の論説に“開鎖論”というのがあって、

「外国人に交わるに、先ず彼我の分界(境界)を明らかにし、一切万事彼は彼たり、我は我たりと大見識を定めつつ、我が欲する所の事を行い、我が向かう所の道を直行して左右を顧みるざることなり」

自国を考えて自国利益の為に突き進む事が鎖国であると言っています。

「鎖国の策にして、果たして行われるべきものならば、断じて速やかに着手せざるべからず」

国内情勢、海外情勢を十分検討した上で開国というならばそれでいいし、自分はそう言っていると。だけど鎖国すべき時はしろと言っているので、まさに開鎖論で「開国が良くて鎖国は悪い」なんて事を言ってたんじゃないんですね』

※関税自主権
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E7%A8%8E%E8%87%AA%E4%B8%BB%E6%A8%A9

西部
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『関税自主権を取り戻す為に日清・日露の戦争までやってのけて。自分の国の国益を考えながら自分で決める権利が関税自主権ですよね。それを今TPPに入って放棄しちゃうという』

中野
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『明治の人達は開国すると同時に、いわゆる自主防衛ですね、自分で防衛して、富国強兵というのを常に思っていて。開鎖論でも福沢は唱えてるんですね。従ってかなり軍事的な事も書いていて、鉄道を敷いて、いざとなったら兵を動かせるようにし、敵が攻めて来ていざとなったら首都を宇都宮(栃木県)か甲府(山梨県)に移して戦いを続けろと。そういった事を考えた上で開国しろというのが、福沢の言っていた事なんですね』

西部
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『明治維新や明治の開国という雰囲気を持ち出して来て、平成の開国とか、この国を変えるとか…』

中野
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『自由貿易というのは、安いモノ、安い労働力の製品が国内に入って来て物価が安くなるって事なんですね。TPPで言うと米も牛肉も関税が無くなったら、牛丼1杯250円が50円とか60円とかになるって話なんですけど、今デフレで困ってる日本なのに、それがもっと激しくなるんですよ。アメリカもデフレしかかって物価や賃金が下がってますので、自由貿易でアメリカの製品が入って来るという事は、デフレも一緒に輸入されるという事なんですよ。デフレが困るという話の中でTPPや自由貿易という話は普通出てこないんですよね』

西部
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『西 周(にし あまね)という明治の学者さんが言う「自由」の元々の意味は「自分のやる事には真っ当な理由がある」と。今の場合は真っ当な理由が無い訳ですよ。このTPPに断固として批評なり批判なりしているエコノミスト関連者が異様に少ない。嘘話の事をブルシットと言うんです。ブルは牡牛、シットは小便の意味で、牡牛の垂れ流す小便のような事をアメリカではブルシット、嘘話という意味なんだけど、このTPPも相当のブルシットですね。労働が豊富な国と、資本の豊富な国がちゃんと交易させると、労働の豊富な国は労働を沢山使うような産業に特化して、資本の方は資本と、それでお互い自由貿易やるとお互いが豊かになるというのは“生産要素が自由に移動出来ない”という条件の下なんですよ。肝心要の資本が簡単に外国に輸出できる近隣窮乏化政策(※)になるって事は、アメリカの経済学者は相当主張し始めてるんじゃないですか?日本では中野さんぐらいですね』

※近隣窮乏化政策(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E9%9A%A3%E7%AA%AE%E4%B9%8F%E5%8C%96%E6%94%BF%E7%AD%96

中野
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『このTPPを何かイメージだけで、中国を包囲する為だとか戦略家ぶるヤツが居るんですが、どうしてそうなるのかは説明しない。今日説明申し上げた通り、TPPで包囲されているのは日本なんですよ。参加しない韓国の方が頭いい』

西部
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『正月になると日本人も少しは目が覚めるかも知れませんよ』

中野
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『信じるか信じないかはあなた次第です(笑)』


【参考画像】
「信じるか信じないかはあなた次第です」のフレーズでお馴染みのハローバイバイ・関暁夫氏

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