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2011年02月17日01:51

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塀の上で

 喜連川(栃木県さくら市)には一度行ったことがある。
 風薫る五月、新芽の萌える穏やかな季節に。
 地元の小学校の校長から「この町の財政は安定してます」と教えてもらった。
 刑務所があるおかげです、と付け加えるのを忘れなかった。

 昨日、雪かきをしながら、ぼくはずっと考えていた。喜連川はずいぶん寒いんじゃないかと。

 府中市で仕事をすると、否応なしに意識させられる「壁」。
 三億円事件で有名な、府中刑務所の近辺を歩いていたとき、
 壁にもたれかかって談笑している高校生と思しき男女のグループがいた。
 それが刑務所の壁だってことを意識してないかのようだった。

 I... I remember Standing by the wall       “Heroes”
 デビッド・ボウイを口ずさみたくなるほどのまぶしさと、
 なんて無神経なと憤る気持ちが、ぼくのなかでないまぜになった。
 壁を無効化する意識の働きは、そこに住まうものにとっての処世術なのかもしれない。
 でも、頼むから壁の向こうに思いを馳せる想像力を持っておくれ。

 雪かきをしながら、ぼくはずっと考えていた。喜連川の冬はずいぶん厳しいんじゃないかと。


>昨年12月に東京拘置所から栃木にある“喜連川社会復帰促進センター”へ移送され、はや2か月がたちました。これまでの刑務作業は紙袋作りなどを行っていましたが、1月に入ってからは本格的作業に従事しております。
>センター内にある病棟の衛生係で朝、昼、夕食の配食や食事後の回収作業などをしています。食事がない日はありませんから365日、毎日になります。出来上がったおかずを手際よく公平に皿へ分けるのですが、ここが気を遣うところです。ほかにも毎日、仕上がった洗濯物を各室へ届け、平日は週2回、施設にある本 (官本)の貸し出しの役目もあります。今、まさに修行中の身といった具合です。


「塀の上でかれは、きわどくバランスをとっていた。しかし向こう側に落ちるのは時間の問題だった」
 紋切り型の断罪をのたまう、うすら笑いのコメンテーター。
 間断なく送りだされる「二分間憎悪」に曝され、ぼくらの知覚は麻痺させられている。
 だが、どうか忘れないでほしい。いついかなる時代にも真実は隠蔽されていることを。






【今日の音楽】
 還暦過ぎてもいまなお現役で、ムーンライダーズとソロの、両輪の活動を続けている鈴木慶一。
 かれが最初に結成した「はちみつぱい」は、あがた森魚のバックバンドを務めたことでもよく知られている。
 70年代初頭の風景に、どっぷり浸かった歌詞とアレンジだのに、今日性を持っていて、不思議と古びない。



 ループ作りの名手としても知られる(『アウトレイジ』を参照)が、慶一さんの真骨頂はやっぱり「旋律」だ。
 




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