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2006年07月01日13:27

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蛇蝎のごとく

茹だるような蒸し暑さ 泣きそうな梅雨の曇天の中
知人の葬儀に参列する。昔の仕事仲間だった。
仕事仲間、いや最初の先輩で、仕事の師匠であり
戦友 だったかも知れない。

仲間内でその男は『蝮』と呼ばれていた。
俺が初めて会った時にはヤツは既に中堅の営業で、
ラグビーで鍛えた筋肉質の体、ギロギロした眼
多少エラの張った顔から連想される正にドンピシャの渾名だった。
主に新規クライアント専門に他社のシマ(縄張り)を侵食する
ケッコーHardな役回りを与えられており、一度喰らいついたら離さない執念深い性格、
癖のアル奴、一匹狼、スタンドプレイ、喧嘩上等、肉食凶暴、独特な嗅覚、
優秀だが扱いにくい等などいいも悪いも社内で評判に事欠かない男だった。

俺はと言えば、仕事の右も左もわかんない新卒の小僧で、生意気盛りが仇となり、
早々にCR局を追ン出され、出来たばかりのSP(現プロモーション)局に転がり込んだばかりだった。

諸先輩のプロジェクトのお手伝いの退屈な日々に飽き飽きしてきた頃、ある日、あの男(マムシ)はプラっと俺の部署にやってきて、こう言った。

「オメー、イベントやんねーか?これからはイベントの時代だ。オレと組んで云々…」

仕事は某大手出版社の老舗週刊少女漫画誌のファン謝恩イベント。アニメ化の絡みのあるKey局からローカル局まで駆け回りなんとかタイアップの話を纏める。そこの鬼編集長○河内氏より「ファンとの手作り感がイイ」等とお褒めの言葉をいただき取り敢えず大成功。プランナーの第一歩を歩み始める。

それを皮切りに今度は巨大週刊少年漫画誌の○藤編集長も同じような企画をやりたいと言い出し全国行脚のキャラバン等の構築を手がけてることになる。このクライアントに限らずマムシは競合と言わずプレゼンと言わず次から次へと色んな案件を持ってきちゃジーンズの会社やら、車の会社やら色んな客先へ俺を引っ張り廻してくれたっけ。獲れた仕事もありゃ獲れなかった仕事もあった。その間色んなことを教わった気がする。

「臆病であることも武器の一つだ。必ず備えるからな」
「カッペはいいが“イモ”にはなるな」
「商品の弱点を探せ。その隣に訴求点は眠っている」etc

プレゼン前夜、深夜のオフィス。「そんなPLANで勝てるのか?」と会議席上で胸倉掴んで
ド突き合い、唾を吐きかけ詰り合い。そんな殺伐としたプレゼンからプレゼンの日々だったが、
ケッコー楽しかった。何より勝って帰ってきて、夕方飲むビールは何事にも代えがたい最高な味だった。二人して銀座でハシゴも度々やったよな。
そんな翌日はBOSSも目ぇつぶって渋々、目ンタマ飛び出るよーな領収書ハンコ押してたっけw
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いい時代だったということもあったろう。やがて俺もクライアント周辺をカサコソ綿密に調べ上げ周到にPLANを打ち込むSTYLEからいつしか「蠍」と渾名されるようになっていた。まあ、いつもマムシとツルんでいたからかも知れないがw 実際オレ等二人がオリエンなり、プレゼンの席上に姿を現すと見知った顔のDやHの営業が「また、お前らかよ?」てな嫌な顔したもんだった。
正に「蛇蝎」でも見るような目で、、、
そんな競合他社の視線が楽しくてまたバリバリ仕事をこなしたもんだった。

マムシと二人して客先に喰らいついたこともあった。
ウチだけプレゼン抜かしてくれた新宿のクルマ屋さんのマーケティング部長。
二人で二週間通い詰めて地下の喫茶店で…

「いいか、オマエ等 俺はこれから、このソファに“161D”のオリエン資料を忘れてゆく。たまたまオマエ等が後に来て拾って朝一番で受付に届けるんだ。いいな?その後、追い駆けで押しかけプレゼンするもしないも自由だ。いいか?オレは何にも知らない。ここでオマエ等とも会わなかった。兎に角、朝一番で受付まで書類をもどしとくんだゾ。」

二人して他人さんの人情に涙した日だった。一番仕事が楽しかった頃かも知れない。

ある日、マムシがデスクにやってきて
「オレ、独立するんだ、、」と突然オレに告げた。

その頃にはおいらも社内のアチコチのTEAMからお座敷が
かかるようになっていて浦安の巨大ネズミ遊園地のキャステ
ィングサテライトの仕事やらで忙しくしていてマムシとは
しばらく社内でも疎遠になっていた。なんか勝手に裏切られた
ような気になって「あ、、そう」としかその時は言えなかった。

「何でもっと早く相談してくれなかったんだよ!」と
喉元まで出掛かっていたのに。

一緒に来て欲しかったのかも知れない。
マムシの普段ギロギロした目が心なしか淋しそうだった。
それが生きているマムシを見た最後になろうとは、、

大企業に対してスタンドプレイではなく組織で狩りをする時代がそこまで忍び寄っていた。
マムシが去って程なくして俺も競合他社に引き抜かれるようにして辞めた。
人を介して風の便りに元気にしてると聞くだけで十分だった
狭い業界仕事してりゃ、またどっかで会うこともあるだろうとタカを括っていたが、
それきり昨日まで二度と会うことはなかった。
通夜を済ませて、一人で銀座にでた。

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昔二人でよくハシゴした辺りを歩いてみた。もう殆ど昔飲んだ店は無くなっていたが
1軒だけ残っていた第一ソワレドビルの地下のBARで供養代わりにと一人で飲む。

マムシよ、昔はアンタみたいな癖のあるADマンがもっとゴロゴロいたような気がする。
いまじゃ殆どみかけなくなっちまったが、、こんなことになるんなら、も一度だけアンタと仕事したかったな。俺は紆余曲折あったがアンタに最初に言われた言葉守って、
世界蹴鞠杯や万国びっくりショーのイベントやってきたゼ。もう後の祭りなんだが、、

オレは暫くまだこの浮世でカサコソのた打ち回ってそちらに逝くが、
そんときゃ、あっちでまた色々教えてくれや。 今夜は献杯…
MAMUSHI rest in Peace… じゃ、またな。

昔、銀座の代理店に競合他社から蛇蝎のごとく嫌われたADマンがいた。

まだ平成になる前、昭和の御世のお話。



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