所沢に移り住んで、もう15年になる。まさかこんなに長くここに住もうとは思わなかった。
最初のころはずいぶんぶっきらぼうで愛想のない町だなと思っていたが、最近ではざっくばらんでくだけた町だなというふうに印象も変わってきている。
仕事を終えて駅に着くと、ホッとすることも多くなった。
冬の季節になると所沢駅西口にはかなり大がかりな電飾が設えられ、ロータリーのいちょうの樹二本にもLEDによるイルミネーションが施される。
11月末だったか、西武ライオンズの若手選手ふたりが点灯式のセレモニーでスイッチを入れたのだった。
プロ野球を語れるほど詳しくはないが、長年住んでいると自然とライオンズびいきにもなる。電飾の青色でさえ、ライオンズカラーに見えてくるほどだ。
今季は残念な結果に終わったが、来季はどうだろう? 優秀な新人が入団してくれるのは嬉しいが、細川捕手のホークスへの移籍は痛いなぁ。
話を戻すと、
飾り付けられる前のいちょうには、夕方になると、たくさんのムクドリが飛んできて、羽を休めていた。ロータリーの外周に植えられたケヤキにもムクドリ集団は鈴なりになり、盛大にフンを落とし、タイルにこびりつかせていた。
あの人間様には迷惑なムクドリたちも、イルミネーションの季節になると、ただの一羽も訪れなくなる。
いったい彼らはどこへいったのだろうか?
どこか余所の街へか、たとえば多摩湖周辺などの――近場の森へか、それとも、もっと温かい地域へと飛来していったのか?
ムクドリの習性や、渡り鳥かどうかなどを、調べようとも思わないが、それでも多少は気になる。
帰る場所があるうちはいい。雨露をしのぎ、横になる場所があるうちは。
ねぐらを奪われてしまったら、いったいどこへ行けばいいのだ。
きれいに飾られた駅前は、鳥のみならず、あらゆる迷惑なものを排除する。
帰る場所があるうちは幸せだ。疲れをいやし、明日に備えられるうちは。
西友で夕飯の材料を買って、帰ったらそく、湯舟に飛びこもう。
ほんとうは気づいているくせ。誰かの不在で秩序が成り立っていることを。
【今日の一曲】
ジャケットからの連想でトーク・トークのラストアルバム「ラフィング・ストック」より「New grass」。
一ヶ月前、池袋ディスクユニオンにて購入、以来浸りっぱなし、未だに飽きない。
線路の継ぎ目を連想させるスネアの鳴りが秀逸。どの曲も音響の配置がまことに素晴らしい。
どうか温かいねぐらにありつけますように、無事に年の瀬を越せますように。
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