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2010年12月07日00:47

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[名古屋弁講座] 奈良時代の言葉を今に伝える雅やかな方言。

残念ながら名古屋弁は、一般にキタナイとされているようです。語感が。
確かに、話し言葉の終わりが「〜がね」「〜がや」「〜ぎゃあ」ですからね。
一方。
大変に美しい終助詞も、同時に備えているのが、心憎きところ。

「なも」

これです。
起源は奈良にあるのだとか。
ああ、でも若者は使わんね。
お年寄りでしたら。
でも知多半島の辺りでは、リアルに使われてるの、確認できてない。
濃尾平野の奥の方でしょうか。

「やっとかめだなも。」
てカンジで使うんだけど。
そういや、
「やっとかめ」
てのも有名みたいだけど、知らん。
全く日常で耳にすること、ない。





頻出するフレーズのほうを、お教えいたしましょう。
古語でしか残っていない雅やかな美しい表現。

「よー言わんわ。」

これです。

使用例。
例えば、おばさんふたりが喫茶店から出ようとする時。

「おばさんA」は、ちょっとしたお礼のつもりで誘っていた。
なのに「おばさんB」は、ハンドバッグをガサゴソしてる。
あ、さては自分の分の勘定は自分で払おうとしているな。

そんな時、「それには及ばん」ということを伝えるために「おばさんA」が「おばさんB」に対して思わず発する言葉。
それが、
「よー言わんわ。」

そしてこのあとの展開は、皆様ご想像の通り。
「いいわいいわ払うで」
「そりゃ悪いわ、ええで、自分で払うで」
「いや、こないだもだったで、ここは出させて」
とかなんとか。
お決まりで、延々続くわけです。
「いいわいいわ応酬」と申します。



文法的に興味深いのは、
「言えん」じゃなく
「言わん」になっているところです。
「can」の意味は、「よー」の段階で既に含まれていることになります !!

普通、注目されるのは、
「よー」が来たら、後には必ず否定の表現が来る、
ということ。そこにはすぐ気が付きます。
(うしろの語に影響をあたえる副詞を、「陳述の副詞」といいます。)
しかし気付くべきもっと重要なポイントがあったわけです。



では、これを踏まえて。

この例文を名古屋弁に訳してみましょう。

標準語 :
「見ちゃいられない。」

 ↓ 

名古屋弁 :
「よー見ん。」

はい。いかがでしたでしょうか。お分かりでしょうか。
「よー見れん。」とか
「よー見られん。」とかでは誤りだということが、ご理解いただけるでしょうか。

「I can't do it.」
は、
「よー、せん。」であって、
「よー、できん。」ではない。
お分かりでしょうか。



ところで今までお話してきたなかで、
古文の授業を思い出した方は少なくないかと。
そうです。

「え〜ず。」
と同じですね。

「(かぐや姫は) 重き病をしたまへば、え いでおはしますまじ。」(竹取物語)

「えも言はず」
なんて表現も、ございましたね。
「えも言へず」
ではないのですよね。
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