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2010年08月28日20:19

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映画の感想文 『怪談』



小泉八雲の原作を、小林正樹監督が映像化した文芸チックな怪談映画。
出演陣も堂々たるオールスター・キャストで、その顔ぶれを見てるだけでも楽しめる。
長いけどね。

第一話『黒髪』
浪人中の若侍(三國連太郎)が仕官する為に嫁さん(新珠三千代)を捨て、とある武家に婿入りする。
ところが、恐ろしくプライドの高い後妻とは円満な夫婦生活が送れない若侍は、かつての嫁さんが恋しくなり、国守の任期満了と同時にかつての自宅へ舞い戻る。
未だに自分の事を待ってくれていた嫁さんに「俺が悪かった」とワビを入れ、ヒシと抱き付く若侍。
が、その翌朝。家は朽ち果てており、嫁さんもまた黒髪だけが残る骸となって朽ち果てていた。
廃屋と化したデカい屋敷をブチ壊しながら逃げまどっている内に、若侍もまた醜く老け込んでしまっていた…。

原作は『和解』という題名で、結末もどちらかというとしんみりさせるタイプの物語だったが、映像化に際しては嫁さんの復讐劇になっていた。
原作を強引にねじ曲げてる気がしないでもないのだが、主演が三國連太郎なので自業自得だよなーと妙に納得。

第二話『雪女』
木こりの茂作(浜村純)と巳之吉(仲代達矢)は吹雪の為に帰り道で足止めを食らい、やむなく掘建て小屋で一晩過ごす事になる。
そこへ雪女(岸恵子)が現れ、茂作を白い息で凍死させるが、巳之吉は「まだ若いから」という理由で「私(雪女)の事を誰かに話したら殺す」と脅されながらも、とりあえず見逃される。
それからしばらくして、相方の死や恐怖体験のトラウマからも立ち直った巳之吉はピンで働きに出ると、帰り道にお雪(岸恵子)という女性と知り合い、何だかんだあった後にめでたくゴールイン、三人の子供を設ける。
近所のオバさん連中(菅井きん、野村昭子、千石規子)からのウケも良かったお雪だったが、ある晩に巳之吉の恐怖体験カミングアウトを聞くに及んで遂に豹変。
「それは私だよ!」と自分の正体をカムアウトし、「子供を大事にしなかったら殺す」と脅し付けた上で家を飛び出した…。

仲代先生は好きな役者さんなんだけどゴメンナサイ、18〜20そこそこの若者には見えませんでした!(爆)顔が出来上がってるんだもん。
岸恵子の雪女もハマり具合はどうかなぁ、微妙だけど美しくは撮られていたのでこれはまぁ良しとする(←偉そう)。
空に映る巨大な眼の映像がシュールレアリズム感たっぷり。原作再現度自体はかなり高い。

第三話『耳無し芳一の話』
盲目だが琵琶の名手である芳一(中村嘉律雄)は、鎧姿のお侍さん(丹波哲郎)に連れられ、「さる高貴なお身分の方々」の為に平家物語を披露する事になる。
ところが、その面々は壇ノ浦の合戦で死んだ平家一門の亡霊たちだった。夜毎の演奏にやつれて帰ってくる芳一の身を案じた住職(志村喬)が、雨降りの夜に出ていく彼を寺男たち(田中邦衛、花沢徳衛)に尾行させると、人魂が飛び交う墓石の前で歌い続ける芳一の姿が。
住職は、芳一の全身に般若心経を書き連ね、対亡霊ステルス作戦を敢行するが、耳だけ経文を書き忘れた為に、お侍さんの亡霊は芳一の耳だけを千切って持っていってしまう。
恐ろしく、そして超痛い思いをした芳一だが、その後は演奏の依頼がジャンジャン舞い込み、一躍お金持ちになったという…。

中村嘉律雄の芳一は、線が細くて声もボーイソプラノ風、普通に若者然としている。仲代先生とは偉い違いだ(←しつこい)
壇ノ浦合戦の様子も異様な様式美的に再現されており、見応えは充分。
『ゴジラ』第一作といい、『七人の侍』といい、シメの台詞を尤もらしく語る志村喬も素敵だ。
強いて難を挙げるとすれば、芳一を送り迎えする亡霊(立場的には下っ端の筈)が丹波先生である為に、亡霊たちの中では一番偉く見えてしまう事だろうか(笑)。

第四話『茶碗の中』
お侍さんの関内(中村翫右衛門)が喉の渇きを潤す為、お茶を飲もうとしたら茶碗の中には謎の男(仲谷昇)の笑顔が映っていた。
何じゃこりゃあ、と思いつつも大胆に一気飲みした彼はその夜、茶碗の中に映った男・式部平内に出くわす。
「そなたはそれがしに酷い仕打ちをなされたのですぞ!」と言いがかりを付ける平内を刺す関内。平内は壁の中へと消えていった。
非番の夜、家でゴロゴロしていた関内の元へ、平内の家来を名乗る三人のお侍さん(佐藤慶、天本英世、玉川伊佐男)が訪ねてくる。
「主人の傷が癒えたらお返しにまた来ます」と不気味な事を言い出す三人を、問答無用に槍で突き殺す関内だが、殺してもまた現れる三人に取り囲まれ、関内はゲラゲラと狂った様に笑い続けた…。

山中貞雄の映画出演で知られる前進座の重鎮・中村翫右衛門の熱演にシビれる。戦前の『人情紙風船』でも軽快な演技と動きで目を引いていたが、槍での立ち回りにおける機敏な動きは健在。
仲谷昇も不気味にカッコ良かったし、三人組の中に天本英世の姿があったのも何だか得した気分(←何の得だか)。

で、最後のダメ押しに驚愕の結末(って言う程の事でもないけど)が待ち受けているけれど、ここでは黙っておく。
気になった人は観てね。
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