春先の超話題作だったのですが、6月末にのこのこと、地元の単館系劇場で観てきました。
http://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/
取立て屋/サンフン(ヤン・イクチュン)は、学はないが腕は確か。
今日も今日とて、下っ端を連れ立って借金の回収に赴く。
取立てに情け容赦は無用、相手をボッコボコにドツキ倒して、きっちり、満額回収が彼のスタイルだが、凄惨な現場で立ち尽くす若手を腕力で叱咤激励してしまうところが玉にキズ。
そんなある日、サンフンは、町で一人の女子高生/ヨニ(キム・コッピ)と出逢う。
すれ違いざまに道端に吐いたつばが、彼女にかかってしまったのだ。
勝気なヨニの言動に、サンフンは、思わず手をあげてしまうが、なんだかんだ、ヨニから治療費をゆすられそうになってしまう。
こうして、最低人と女子高生の奇妙な連帯関係が始まるのだが…
暴力の連鎖から逃れられない社会の底辺層のやり場のないエネルギーのドグマを鮮烈に描くスタイルは、どこか、井筒和幸の作風に似ているようで、やたらと暴力描写に血の匂いと殴る側の痛みを感じさせるところが共通しているように思いました。
しかし、井筒監督のそれが、どこか突き放したような、遠景で全体像を淡々と捉えるのに対して、この監督は、過剰なまでにキャラクターに対してレンズを肉薄させることで、個々の事情を際立たせる手際が確かな力量を感じさせます。
暴力と暴言を行使することでしか、自己表現できない主人公の姿は、先日観た、『プレシャス』の母にも通ずるものだと思います。
『プレシャス』の母が、己の愚かさを理解したことを表現するのに、『言葉にならない言葉を必死でつぐむ』というシーンが用意されていましたが、この作品は、同様のプロットについて、『暴力からの離脱を拳(こぶし)で語らせる』という、絵的なセンスが抜群でした。
当初、サンフンが、自分の肉親をボコボコにした両手は腫上がり、生傷だらけですが、ヨニとの交流を通じて、彼の拳から、どんどんと傷が消えていきます。
そして、その傷が全く無くなったときに、彼は、真人間として生まれ変わるわけですが、そこには、これまでの暴力に対する手痛いオチが、アリ地獄のように口をあけているという自業自得の地雷原。
ラス前に、とある人物の行く末がロストしたと思わせておいて、ちゃんと、最後の最後に観客の心臓を万力で締め付けるかのようなオチにもってくるあたりのしたたかさも侮れません。
公式サイトでも出ていますが、キスも手をつなぎさえもせず、ただ、2人が泣き崩れるだけなのに【ラブシーン】として映る、夜の漢河のシーンは、思わず涙腺が開きそうになりました。
ご覧になっていない方は、ぜひ。
間違いなく、今年を代表する作品のひとつであると断言させていただきます。
ところで、映画ファンの間では、ヨニ役のキム・コッピが、多部美華子に似てると評判でした。
確かにスティルを見る限り、その通りであると思います。
でも、実際にスクリーンで動いている彼女は、もっと、自身のの弱さを棘を出すことで防衛しているような複雑な感じを受けましたし、さらに格段に似ているヒトを発見したので、個人的には大喜び。
誰に似ているかというと…
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ゲキレンジャーのメレ様、こと、平田裕香嬢!!
http://gekirenzya.up.seesaa.net/image/A5E1A5EC.jpg
嗚呼、誰か、ヨニちゃん主演で『メレ様エピソード0』を作ってくれぇい(萌えモード突入)。
ワタクシ、確実に観に行く人間を少なくとも一人知ってますw
<閑話休題>
この作品を観に行ったのは、横浜の黄金町にある『シネマジャック&ベティ』。
場所柄、結構、どきどきしちゃったんですが、この界隈は、昔からの赤線やらちょんの間やらの『裏風俗の吹き溜まり』。
川沿いには、場末のストリップ小屋『黄金劇場』が、相変わらずの、劇場と書くのもはばかるくらいの掘っ立て小屋みたいなボロボロの佇まいで【健在】だったりして、おまけにお隣のピンキィなマッサージ店もピンピンしてたりして、鑑賞前から、人生裏街道の侘びさびをひしひしと感じたりして、この作品の雰囲気に超絶シンクロしてしまったことを付記しておきます。
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