カクテルは三口で呑み干せと、誰かが言っていたのを思い出した。
ちょうど三口で飲み干せる、洋梨のヘタのようなそのグラスの分量は
値段分の手頃感と、もう少し愉しみたいと思わせる不足さを兼ね備え
色とりどりに並べられたサンプルの魅惑と、バーテンダーとの会話とが
外的空間と内的空間とを彩り、寛げ、時間を醸し出してゆく。
不意に、アルポンテのあの日々をフラッシュバックして落涙しそうになった。
久しく忘れていたこの甘美を取り戻したいとは思わないけど
ただ、ひたすらに懐かしいのだ。
懐かしくて慟哭しそうになるのだ。
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