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2005年12月08日01:05

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防研談吉

ぅおぅ!はっと気付くと1ヶ月も日記更新してません
ですた。ま、ネタがないとしょーがないんですがw

先日、所用で恵比寿にあるNIDS・防研・図書館(注)※1に立ち寄った。

所定の調べものを済ませてふと顔をあげると、正面に70代後半の
ご老人が黙々と戦史を調べ、何かをノートに書き写している。
周りではNHKのアルバイトDATAマンの女の子がコピー取りに忙しく右往左往している。

そのご老人の額のはげ上がり様や風情が先年他界した父の面影に
一寸似ていたものだから、、そー言えば、軍隊に居た時の父のことは
あまり聞いたことがなかった事を思い出し、調べて見たくなった。

オレ:「あの、対潜関係の資料は何処にありますか?
    対潜学校とか、その辺りなんですけど、、、」
司書官:「あ〜対潜関係の資料の殆どはね大戦末期殆ど焼却
    されたか米軍に接収されたんで無いんですよ。」
オレ:「そうですか残念です。マルロク金物とかあれば、、」

その瞬間、司書官の眼鏡の奥がキュピーンと光り、

「○六金物ですね?少々お待ちを!」

言うが早いかPCでマイクロファイルを猛然と検索し始めた。

遠い昔、俺は一度だけ親父に聞いたことがあった。

「な〜父ちゃん、父ちゃんはどうやって戦争から生きて帰ってこれたんね?」
親父は、
「戦争の終わり頃は海軍も、もう乗る船がなくてなー、
後はマルロク金物か泳いで竹槍か・・」

この答えに子供心にもがっかりしたもんだった。子供相手だと
思って金たらいや竹槍で突撃なんて馬鹿にしている。さては
よっぽどしょーもない部隊だったのだろうと思い、それっきり
その話は聞くことはなかった。その時の 『 マルロク金物 』 と
言う言葉がやけに記憶に残っていてつい口を衝いて出た。

司書官が書架から埃を被った文献を数冊引っ張り出し

「今、すぐ出てくるのはコレだけです。後は地下書庫から
 EVで揚げて来る事になりますがお待ちになられますか?」

オレ:「いや、取りあえず、コレだけで、、、」

フォト



埃を払うとその資料の表紙には、こう書かれていた。
対潜学校第一期〜五期『甲標的/九三式酸素魚雷改・奇襲特殊兵器実験○六カナモノ』と。
「○六カナモノ」とは「人間魚雷・回天」の機密保持用開発秘匿名称(コードネーム)なのですと、
司書官は事も無げにそう言って文献を俺に渡した。

それらの資料には大戦末期に海軍で開発された水中特攻用兵器
「回天」「蚊竜」「海龍」「伏龍」等の図面・写真、対潜学校
の名簿、予備学生の手記、覚書、日記、遺書などがあった。

名簿にオヤジの名前を見つけた。後は食い入る様に読み耽った
手記の中にもオヤジの名前をところどころ見つけることができた。
そこには家族も、おふくろですら知らない青春時代のオヤジの姿があった。

お調子者でナマイキで鼻っ柱が強く、上官殿ににタコ殴りされたり、
横須賀で戦地帰りの陸戦隊のお兄様方と博打の勝ち負けで揉め喧嘩して逃げたりw 
俺らが知らないやんちゃなオヤジがそこにはいた。
手記の所々に散見される名前から皆からも愛されていたようだ。

親父、その頃のあんたと一度飲みたかったなあ、生きてる内にこんな話したかったなあと思い、
それらの手記を読んだ。しかし、その手記や日記を綴った親父の同期の方の半分は
訓練中に海底に着底したまま帰らぬ人となり、またその半分の戦友は出撃し、
豪州シドニー湾に、ウルシー湾、グアム、フィリピン等で散華していった。


フォト


最後の休暇から戻った親爺殿は横須賀・田浦の基地で終戦を迎え、武装解除をうけた。
うちの親父の様に生き残った人々の多くは親父同様、既に鬼籍に入った方も多いのだろう。
水中から竹槍(機雷付き)で船を刺す『伏龍』や○六カナモノ等のトンデモ兵器。
終戦のローレライや男達の大和に比べぶべくもない余りに地味でリアルな
「海の特攻」(Midget Submarine suicide attack)の現実。
親父は子供の俺にも決して嘘は言っていなかった。
ちょっぴり目頭が熱くなりそこまで読み終えると、
さっき正面で黙々と調べものをしていたご老人が俺の脇に立ちしげしげとこちらを眺めている。

「ほう、水雷学校のことをお調べですか?」

もう、閉館時間。周りにはさっきまで調べものの人々も
姿を消していた。

俺は時計を見やり、、
「ええ、対潜学校とその関連なんですが、もし宜しかったらそこら辺で、、、」

俺とご老人は防研を出て恵比寿の赤提灯街へと向っていった。



来年,これ等のわだつみに消えた人々の記憶は「出口の無い海」
として横山秀夫・著 山田洋次脚本で映画化される。






(注)※1→
NIDS 【The National Institute for DefenceStudies】
防衛庁・防衛研究所


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