農家で暮らすアグネスは、毎日森の中で過ごす風変わりな女性。ある日、妹たちにラテン語を教えにくる青年ウィルと恋に落ち、子を宿した。追い出されるように実家を出たアグネスは、ウィルと結婚、彼の生家の屋根裏で生活するようになる。だが長女スザンナが誕生すると、ウィルは家業に嫌気がさして塞ぎこむように。アグネスはウィルが物書きとして羽ばたけるようにとロンドンへの単身赴任を勧めるのだった…
「ハムネット」
以下、生きるべきか死すべきか、それがネタバレだ。





字幕で追う限り、ウィルの姓がシェイクスピアだとわかるのは、アグネスと弟が劇場にやってくるクライマックスのみ。もちろん最初の「ハムレットとハムネットは同意語」みたいなテロップもあるし、最初から判りきってるんだけど、少なくともシェイクスピアの名を強調はしていない。というのは多分、これがシェイクスピアの話というより普遍的な、今昔問わない家族の話だからと言いたかったのだろう。全然ハナシの展開は違うけど、思い出したのは篠原涼子の「人魚の眠る家」。子を亡くした夫婦間の溝と罪悪感という点でね。
仕事に追われて家庭を顧みない「古い父親」である俺にはウィルの気持ちもアグネスの気持ちも理解できるし今更ながら反省もしている。母を失った経験から母親である責任感と神への不信が極端に強いアグネスと、想像力と空想でしか本音を語れないウィルが「ハムレット」を通してお互いに軛を外して自己解放するラストには大泣きした。
バックリーもメスカルも名演だったが、驚愕なのがハムネット役の少年ジャコビ・ジュープ。ハムレットを演じたお兄ちゃんノア・ジュープも悪くないけどなんといってもジャコビくんですよ。不気味なほどに巧いので要注目ですな。映像も音楽も素晴らしいし、傑作と呼ぶにやぶさかじゃない一本。ぜひ。
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