【あなたの瞳にコンピテンシー、コンピメガネ】
よく分からん…。
チラシの見本が来た。
【メガネセット5000円!】
と大きく書かれている。
レンズ無料!フレームとレンズのセットで5000円!
安価でメガネを作れるというのが当社の売りだ。
しかしその実態はというと…
あくまでも5000円【から】なんだす。だす?
チラシにはデカデカと
【メガネセット5000円!】
と書いてるんだけど
要するに客を呼ぶためのエサにすぎなくて、
実際は
・グレードの高いメガネフレームに変更
・綺麗に仕上がる薄型レンズに変更
・レンズにカラー・傷汚れ防止コート(レンズのグレードによってはUVカット後付けも)の追加
で高単価に変えさせる商法だった。
普通に販売すればみんな五千円のモノを買っていく。
「形状記憶のフレームがおすすめですよ。UV加工いかがでしょうか?非球面レンズの方が疲れにくいですよ」
色々おすすめして平均単価20,000円を超えるぐらいまではいくが、予算以上に吊り上がっていくお値段にお客様はいい顔をしていない。
「そりゃあ高いのにすれば品質いいでしょうよ」
ですよね。
無理売りはしなかったのでそれ以上単価は上がらなかった。
大阪の本部から電話が来る。
トミヤマとかいう大阪のオジサンだ。
「トネガワさん!客単価が2万円とはどういうことや!」
と。
「大阪の中心エリアは三万超えてるんやで!どういうことやねん!あほんだら!」
「5000円でメガネ出来ますて客呼ぶのがワシ等の仕事や!その客に3万5万のメガネ売るのがアンタの仕事やろが!」
…。
脳みそ腐ってんのか?
既に世の中では
【それなり大手のメガネ屋が詐欺まがいの販売をしている】
って話題になってたりしてるのだが…。
当社の本部の人間やスーパーバイザーと呼ばれる人間は
「押し売りじゃねーんだよ!情報提供なんだよ!安いメガネも作れるけど、高機能なものもありますよってオススメすれば高いのが売れるんだよ!売れないのはお前の説明が悪いからだよ!」
と早朝研修で豪語する。
どれだけクレームが来ようが高いものを売れる事が正義だ。
実際に返金になったりってのがあんまりないんだからそれが正解なのかもしれないけどね。
「安いメガネだとお子さんの目がもっと悪くなるかもしれませんし…」
そんな意味のことをいかにマイルドに脅迫するのかが販売力なのかもね。
この会社では。
先日実家に帰ったら、新聞にメガネ店への苦言が投書で載っていたとうちの親も言っていた。
一方で夕方のTVのニュースでは五千円メガネが特集されていて安い安いとはしゃいでいる…。
すげえアンマッチな感じ、なんだこれ。
洗脳に染まって客を食い物にできれば楽なのか…
何が楽なんだ?
意味不明だろ。
「今度は2000円でメガネ出来るてセールやるんやから!ワシらが呼んだお客にちゃんといいメガネ売るんやで!頼むわホンマに!」
大阪商人を自称する営業部のおっさんは言いたいことを言って電話を切った。
テメエが買えよクサレメガネ野郎が。
はあ…
営業部とかなんとかいうんだけど、実際にお客様と接して販売するのはお店な訳で。
本社の営業部員とかいうのがそんなに何人も必要なのか疑問でしかない。
辞めたいな…。
数日前にきた【要らない社員ランキング】で見事2位にランクインした俺だったが、本来店長は対象外ということで、再配信された時には名前は消されていた。
店長は売れない店に固定だと手も足も出ないから…みたいな?
一般の社員は【ラウンダー】と呼ばれて色々な店に行くので客単価とかあげられるだろうという事らしい。
俺の名前がランクインしていた事を同期に聞いても誰も知らない様子だった。
皆が見る頃には差し替わっていたらしい。
俺は自分の店があまりに暇だったので、情報ツールの【送受信】ボタンを押しまくっていたので、見ることが出来た。みたいだ。
見なければ辞める判断ももう少し遅くなったかもしれない。
そういえば同じ時期
東京営業部に2人しかいないスーパーバイザーのもう1人。カマダさんからも電話が来た。
「おいトネガワ!お前の店の通信料金高すぎんだよ!お前私用の電話とかかけてんじゃねーだろうな!?」
どうやら情報ツールの送受信にも金がかかっていたようで、怒りの電話だった。
こういうのって定額にするもんなんじゃねーかと思ってたけど、違ったらしい。
インターネット黎明期ですからね。2003年の春頃。
店長とは言え、春が来て社会人3年目になったまだまだクソ雑魚ナメクジな俺な訳です。
分からないことがあればイチイチ長野北部から東京に電話したりして聞いたりもしてたから、電話代も高かったみたいで。
たまに1人勤務の日はインターネットでエロサイトとか閲覧もしてた…いやなんでもない。
何でもないんだ。
店のインターネット閲覧可能なパソコンは、Webでメガネを作れるサービス※
【インターメガネ】をお試し出来るようになっていたのでお客様が触れられる位置にあった。
これでエロサイトを閲覧しようと思うと入口に背中を向ける形になる。
なので、エロサイトを見ながらも常に背後に注意を払わなければならない。
目指せゴルゴ13。背後には誰も立たせない。事だ。
「(メガネの)加工に夢中になってるとお客様に気が付かなくなるから、10秒に一度顔を上げて入口を見ろ!」
スーパーバイザーのカマダさんやワタベさんは常に俺達にいっていた…。いいアドバイスだ。いいこと言うじゃんおめー。
俺は5秒に一度振り向くようにした。
やるじゃん俺。さすが俺。親友のタケヲに
「エロ大将!」
と言われただけの事はある。
ある…。
しかし当時はクリックにも通信料掛かっていたのか、電話代は万単位でかかってたらしい。
そんな事あるかね?
まあいい。
とりあえずスーパーバイザーは御立腹だ。
彼は更に言う。
「お前の店クソ赤字だからよ、このままだったら長野から更に四国に飛ばしてやるからな」
え?
弊社では男性社員は入社1年ぐらいすると武者修行と称して地方に飛ばされるのです。
拒否も出来なくはないですが、出世コースに乗る最低条件がこの地方出張。別に出世とかも考えてないですけれども。義務感があるわけですよ。
「あいつは逃げた」
とか
「あいつが逃げたから俺が飛ぶハメになった」
とかあるからね。
一人暮らし始めたら地方に飛ばされた俺にさらなる罰を与えようというのです。オープンから赤字垂れ流してる店に転勤させておいて?
しかもこのカマダという男は家庭の事情とかで異動を拒否したって話で。既存の売れてる都内の店で高単価を売ったからって出世して…。
お前が言うかっていうね。
寝る間を惜しんで飲み歩いているって豪語している人なんですけどね…なんだよ家庭の事情って。
何なんだこの会社。
ああ、もう辞めるしかないのかね。
悩みながらも春日部と須坂を行き来する日々。
時代はまだ就職氷河期。
辞めて俺なんかに次の会社はあるのだろうか…?
同期のタケダ(金持ってそうな美人)に話してみれば、
「辞めてどうすんの?ここで駄目なら何処行ってもだめだよ」
そんな回答。養ってくれ…いや、なんでもない。
彼女にも愚痴を言ってみたり。
辞めようか、どうしようか…。
そんなある日。
彼女から改まったメールがくる。
毎週春日部のアパートには帰っているのだが…
『ハナシガアルノデカエッテキテホシイノデスガ』
え?え?
続く。
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※インターネットでメガネが出来るサービス…パソコン画面を使って視力検査を行い、顔の画像にメガネの画像を載せてみて、自宅に送ってもらえるサービスを開発していた。発想は20年早かったが画面での視力検査は無理があった。VRゴーグルとか使えば実用化できそうな気がする。
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