さて、ぐずる夕香を連れて我等は一名町唯一の商店街へとやって来た。
何分狭い街故、それほど多くの店舗はないがまぁ良いだろう。
我等は堂々と『こすぷれ』なるものをして、街を歩いてゆく。
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時は戻り、八幡神社を出た頃。
階段を降り終わった辺りで外人が何やら折り紙を作っているのが目に入った。
はて、このような所で折り紙なんぞ折ってどうするというのか。
外人が言うには、どうせ商店街に服を買いに行くなら宣伝をした方が良いのではと。
次々と折り紙で動物等を作っていっては後ろを歩かせる。
最初は私達5人(?)だけだった筈なのに、気付けば長い行列ができていた。
子狸も幽霊もその様子を凄い凄いと褒め称えている。
私も思わずその技量に目を見張る。この外人、やりおるのう。
ただ、夕香だけは注目を浴びるのではと終始ビクビクしておったが、
注目を集めるのが目的なので諦めてもらう他ないだろう。
さて、そうなってくると私達の格好もそれっぽくした方が良いのではないか。
とりあえず子狸は变化で狸耳と尻尾が生えた少年に化けてみる。
幽霊は−−まぁ、ドレスに黒髪縦ロールというだけで注目を集めるじゃろう。
ついでなので私も翁の面から狐面にチェンジしておく。
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商店街に付く頃には我等は周囲の注目を集める集団となっていた。
フン、白昼堂々と姿を現すのは何十年ぶりだろうか。
時折我を指差して何やらヒソヒソと話す輩も居たが、
我の異様に恐れをなしたに違いない。
子狸と折り紙達は周囲に愛嬌を振りまいている。
女子供は可愛い可愛いと写真を撮り続けているが、我も撮って良いのだぞ?
そう思いつつズイッと近付けば何やら引きつった笑顔で離れてゆく。
何故だ、解せん。
(※見た目は狐面を付けたスーツ姿のマッチョです)
さて肝心の夕香はというと、外人の燕尾服の後ろに隠れていた。
頭をギュウッと押し付けて、縮こまっている。
いかんな、それではいかん。今回は夕香の度胸付けも兼ねているのだ。
いつまでもそうして後ろに付いていては夕香の為にならん。
さてどうしたものかと思案する我の視界にTVをじっと見つめる幽霊が映る。
どうかしたのか、と尋ねると幽霊も何かお役に立ちたいとのこと。
なかなか良い心掛けではないか。だが、それとTVに何の関係がある?
すると突然、誰も見ていないTVに夕香の姿が映る。
夕香は笑顔で手を振りながら、『尾三輪のハロウィンよろしくね☆』と言って消えた。
な、なんだアレは。一体如何なる妖術か。
我が驚いていると、幽霊がペロッと舌を出している。
どうやら彼女はTVなどに好きな映像を映し出すことができるらしい。
それで試しにやってみたのだと言ったが、いや凄いだろうソレ。
我はすぐさま幽霊にお願いしてこの商店街、いや町のTVをジャックしてもらう。
なんとなく、今の我等であればソレぐらい出来るような気がしたのだ。
程なくして幽霊は町全体のTVをジャックしてみせた。
商店街の、ご家庭の、会社の。
この町全てのTVに夕香の姿が映し出される。
夕香(の姿をした幽霊)は、
『10/31尾三輪のハロウィンパーティーよろしくね☆』
『今、一名商店街で宣伝をやっているから皆来てね☆』
と言って消えた。
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直後、商店街全体がザワついた。
今の放送を見た人が店から飛び出してきたりもした。
あ、何人か気絶してるけど、まぁ致し方あるまい。
そんな商店街で折り紙と、愛嬌を振りまく子狸と、そして我はよく目立った。
人々は徐々にコチラへ視線を向け、何事かと質問をしてくる。
主に外人が受け答えに終止し、ハロウィンパーティーについて説明する。
むむむ、幽霊め、やるではないか。
こうしてはおれん、我も幽霊に負けず劣らぬ宣伝をしてみせようではないか!
我は商店街の裏道を走り、商店街の反対側へ出た。
このまま真っ直ぐ商店街を突っ切れば、夕香達の居る場所。
息を大きく吸い(人体模型だけど)、大きく吐き出す。
ユクゾッ!
「フハハハハハハハ! 我は尾三輪の狐なるぞ!」
「来る10月31日、八幡神社裏の尾三輪の社にてハロウィンパーティーを行う!」
「皆、こぞって来るが良いぞ! フハッ、フハハハハハハ!」
美しいフォームで商店街を一直線に駆け抜ける。
道行く人々は先程のTVジャックと相まって奇異の目をコチラに向ける。
途中、何人かの奥様方が気絶していたが、我の美しさに見惚れたのだろうか?
なにはともあれ、我は夕香達の近くまで走り抜けた。
そのまま夕香の周りを2度3度駆け回り、そのまま商店街の外へ走り抜ける。
フハハ、これでこの祭りの主役が夕香であることを印象付けられたであろう。
我はそのまま魂が叫ぶまま走り続け、
商店街で店を構える卒業生からの通報で駆けつけた、
一名学園の守衛のオジサマに捕まって説教される羽目になった。
何故だ、何故我だとバレたのだ。
===
守衛のオジサマの説教から逃れて戻ってくると、
衆人観衆の真っ只中で夕香が立ったまま『気絶』していた。
な、何故あ奴はこんな所で気絶しておるのだ!
(※ 幽霊とか面霊気が好き勝手やったせいです)
折角人々の注目を集めたというのに、肝心の主役が気絶してどうする!
人の輪の外でグヌヌと歯軋りする我は、夕香に近付く幽霊を見た。
幽霊は夕香に近付くと、スルリと夕香の身体の中に入ってゆくではないか。
すると何ということか、夕香がハッと飛び起きて笑顔を振りまき始めた。
そのまま手を振り、愛嬌を振り撒き、ハロウィンパーティーを宣伝する。
周囲の人々もそんな夕香の様子を微笑ましそうに見ている。
わーい、すごーい!
我も思わずその様子に拍手をしてしまう。
辺りを見れば、スマートフォンで動画を撮影している者も居るではないか。
これは、凄い宣伝効果があるぞ!
周囲を見渡していた我は、とある子供で目が止まる。
アレは−−確か昨日学園で驚かせた少年!
少年が夕香の姿に気付いた時、夕香(in 幽霊)も少年に気付いた。
「「あっ!」」
二人は息ピッタリに声を上げる。
周囲はそんな二人を気遣ってか、少年が通れるように道を開けた。
「あ、あの! 昨日はありがとうな!」
「う、うむ! お前も無事に帰れたようで何よりじゃ!」
「えーっと、ハロウィンパーティーやるんだって?」
「うむ、そうじゃ。 お主は来てくれるかの?」
「もちろん!」
微笑ましいやり取りが繰り広げられている。
周囲の人々も口々に『俺も行くぞ!』『私も!』と言っている。
くそっ、お前ら最高だよ。思わず我も目頭を熱くした。(人体模型だけど)
一通り宣伝し終わった後、夕香(in 幽霊)は外人と何やら相談している。
ええい、人が邪魔であそこまで行けぬ!
こらっ、ちょっと押さないで、止めて!
内臓が!内臓が落ちちゃう!
零れかけた内蔵を押し込んでいるうちに、相談は終わったようだ。
二人は一緒に夕香に着せるための服を求めて近くの店へと入っていこうとする。
ははあ、成る程。夕香が気絶しているうちに服を買う算段か。
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我も慌てて服屋へ入ろうとしたが、その肩をがっしりと掴まれる。
恐る恐る振り返ると、守衛のオジサマが笑顔で立っていた。
あの、その。
「ちょっと、こっち来てくれるかい?」
我は大人しく彼に付いて行くことにした。
我にだって、怖いものは、ある。
〜 その10に続く 〜
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