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2015年07月31日20:47

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田中宇の国際ニュース解説 無料版 ★ウクライナ危機の終わり

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015年7月30日 http://tanakanews.com/
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★ウクライナ危機の終わり
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http://tanakanews.com/150730ukraine.htm

 ウクライナ危機は、米国が、ロシア敵視策の一環として扇動して起こしたも
のだ。昨年初め、ビクトリア・ヌーランド国務次官補ら米国の外交官たちが、
親露的だった当時のヤヌコビッチ政権を倒す極右勢力の政治運動を加勢してウ
クライナの政権を親露から反露に転換した。反露新政権がウクライナ東部のロ
シア系国民を抑圧し始めたので、ロシア系住民はウクライナからの分離独立を
要求して内戦になったが、米国はそれをロシアのせいにした。

http://tanakanews.com/140305ukraine.php
危うい米国のウクライナ地政学火遊び

 ウクライナの反露政権が、セバストポリ軍港のロシアへの貸与をやめると表
明し、ロシアがもともと自国領だったセバストポリを含むクリミア自治州の分
離独立・回収に動くと、米国はそれをロシアの侵略行為と非難し、欧州を巻き
込んでロシア制裁を開始した。米国は最初から、ウクライナの政権を親露から
反露に転覆すれば、ロシアがクリミアを回収し、米国がロシアを非難する格好
の口実になると考えていたのだろう。

http://tanakanews.com/140320russia.htm
露クリミア併合の意味

 今年初め、露独仏の努力でウクライナ東部の停戦協定(ミンスク2)が締結
された後も、米国は、停戦違反を繰り返すウクライナの反露的なポロシェンコ
政権を支援し続けている。米国は、NATOや、欧州の対米従属状態など、自
国の覇権体制を守るため、ウクライナの内戦を起こしてロシア敵視を強化し、
米国が欧州を引き連れてロシアと恒久対立する新冷戦体制を作ろうとしており、
危機はまだまだ続くというのが、これまで多い分析だった。

http://tanakanews.com/150218ukraine.php
ウクライナ再停戦の経緯

http://tanakanews.com/140919ukraine.htm
安定に向かいそうなウクライナ

 ところが今、米国は突然、ウクライナの内戦を急いで終わらせようとする動
きを始めている。7月16日、米国の圧力を受けて、ウクライナのポロシェン
コ大統領が、東部地域に自治を与える憲法改定の法案を議会に提出した。同日、
米国からヌーランド国務次官補がウクライナ議会に乗り込み、議会の3分の2
の賛成が必要な憲法改定の法案が間違いなく可決されるよう、圧力をかけた。

http://english.pravda.ru/news/world/16-07-2015/131360-poroshenko_ukraine_constitution-0/
Poroshenko to change Ukraine's Constitution under Western pressure

 これまでウクライナ危機をさんざん扇動してきたヌーランドが(おそらくオ
バマの命を受け)危機を沈静化する憲法改定をしろとウクライナに圧力をかけ
るのは皮肉だ。圧力の効果で、東部の親露派を敵視して自治付与の憲法改定に
反対してきた議員たちもしぶしぶ賛成し、法案は288対57で可決され、憲
法裁判所の判断を経て正式決定することになった。

http://thehill.com/blogs/pundits-blog/international/249396-kiev-and-the-rebels-agree-that-ukraine-divided-cannot-stand
Kiev and the rebels agree that Ukraine divided cannot stand

http://www.nrcu.gov.ua/en/148/602620/
Ukraine's Constitutional Court begins hearing amendments on decentralization of power

 東部に自治を与える憲法改定は、ミンスク2の停戦協定に盛り込まれた、ウ
クライナにとっての義務だった。ロシアは以前からウクライナに憲法改定を求
めてきたが、ウクライナは拒否していた。憲法で東部に自治が与えられれば、
内戦は終結し、ロシアとウクライナの対立も下火になり、ウクライナ危機が解
決に向けて大きく動く。これは、ロシアが切望し、米ウクライナが拒否してき
た展開だ。

http://www.rt.com/news/310064-ukraine-constitution-decentralization-nuland/
Ukraine passes `historic' constitutional changes to comply with Minsk agreements - Nuland

 米国がウクライナ問題で急にロシアに譲歩するようになったのは、米国がイ
ラン核問題やシリア内戦、ISISなどの中東の諸問題でロシアに頼らねばな
らなくなったため、中東諸問題の解決の主導役をロシアにやってもらう代わり
に、ウクライナ問題で米国がロシアに譲歩することにしたからだ、と解説され
ている。だからイラン核問題が解決された直後のタイミングで、米国がウクラ
イナに自治付与の憲法改定をやらせたのだという。米欧は、中東の問題解決を
ロシアにお願いするため、ウクライナを見捨てたとも評されている。

http://sputniknews.com/politics/20150729/1025186549.html
US, EU 'Give Up' Ukraine to Seek Russian Political Support

http://www.rferl.org/content/ukraine-as-a-bargaining-chip/27157301.html
Ukraine As A Bargaining Chip?

 しかし、イランやシリアの問題解決との交換という筋書きは、よく考えると
おかしい。ロシアは、米国が何も譲歩しなくても、独自の国益に沿ってイラン
やシリアの問題解決を進めていたからだ。米国はロシアに譲歩する必要などな
かった。

http://tanakanews.com/140309russia.htm
プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動

http://tanakanews.com/141205russia.htm
中露結束は長期化する

 米国がウクライナ問題でロシアに譲歩した理由の一つは、イラン核合意の締
結にロシアの協力が必要で、イランと核協約を結ぶ前に、米露が交換条件につ
いて談合していたと報じられている。しかし、イラン核合意は少し前まで、米
国よりロシアが推進を希望し、米国はむしろ推進を邪魔する方だった。ロシア
は、米欧に制裁されたイランが最も頼りにしてきた国だ。米国がロシアに譲歩
したのは、ロシアがイランをけしかけてISISを潰す戦いをやらせてほしい
から、とも言われているが、ロシアは米国に頼まれなくても、ISISと戦う
イランを支援してきた。

http://www.businessinsider.com/obama-iran-syria-2015-7
Obama: Iran must play a role in ending Syria's civil war

http://www.reuters.com/article/2015/07/24/us-mideast-crisis-syria-kerry-idUSKCN0PY1VL20150724
Kerry to talk with Russia on Islamic State fight and role Iran might play

http://tanakanews.com/150420iran.php
イランとオバマとプーチンの勝利

 米国は、ロシアがシリアのアサド政権と反政府派を交渉させ、シリア内戦を
終わらせてほしい。その際、アサド大統領をやめさせてほしいので、米国はウ
クライナ問題で譲歩したという説もある。ロシアはずっとアサドを支援してき
たが、最近、米国に頼まれ、プーチンらロシア高官がアサドを見放すような言
動をしているとも報じられている。

http://www.wsj.com/articles/russia-seen-reassessing-support-for-assad-1438037002
Russia Seen Reassessing Support for Assad

 しかし、今のシリアには、アサド政権以外に、シリアの国家としての統合を
維持できる勢力がない。アサドを辞めさせたら、シリアはリビアのように国家
崩壊し恒久内戦化する。サウジやトルコは「(親イランである)アサドを辞め
させるなら、ロシアと一緒にシリア内戦終結に協力しても良い」と言っている
ので、ロシアはアサドを見放すかのようなそぶりを見せているが、実のところ
ロシアはアサドを辞めさせるつもりなどない。

http://www.politico.com/story/2015/07/barack-obama-mideast-peace-iran-deal-syria-isis-120654.html
Obama eyes next diplomatic steps with Iran

 米国はまた、ロシアがシリア内戦の終結を主導する際、サウジアラビアなど
アラブ諸国とイランの間を取り持ってほしい、とも要請している。これまた、
米国に頼まれなくてもロシアがやろうとしてきたことだ。米国のロシア敵視は、
今や「ふりだけ」だ。米国は、中東とウクライナの両方で、ロシアを有利にし、
強化している。米国によって強化されたロシアやイランは、米国の単独覇権体
制を崩し、多極型の覇権構造に転換する動きを強めている。

http://atimes.com/2015/06/russia-moves-to-middle-ground-on-syria/
Russia moves to middle ground on Syria

http://www.reuters.com/article/2015/07/24/us-mideast-crisis-syria-kerry-idUSKCN0PY1VL20150724
Kerry to talk with Russia on Islamic State fight and role Iran might play

 今思うと、米国の隠然としたロシア強化策の始まりは今年5月、ケリー国務
長官が2年ぶりにロシアを訪問してプーチンに会った時からだった。この時、
ウクライナ問題で米国とロシアが直接交渉する連絡ルートが初めて作られた。
ウクライナ危機の当初から、ロシアは危機の黒幕である米国と直接交渉するこ
とを切望したが、米国はずっと拒否してきた。

http://tanakanews.com/150517coldwar.php
負けるためにやる露中イランとの新冷戦

 それが5月に大転換し、米露が直接ウクライナ危機について話し始めた。米
国のヌーランド国務次官補と、ロシアのカラシン外務次官が双方の交渉担当と
なった。ウクライナ危機を起こした張本人であるヌーランドが、危機を収拾す
る担当者もやるという皮肉な事態の始まりだった。これ以来、中東とウクライ
ナの両方の問題について、米露間の連絡が密になった。最近では6月25日と
7月15日に、オバマとプーチンが長時間、電話で話をしている。

http://www.theatlantic.com/international/archive/2015/07/ukraine-crisis-russia-united-states/399785/
Is the United States Selling Out Ukraine?

 7月のイラン協約後、米国が中東の諸問題でロシアに頼る傾向がさらに強ま
っているが、米露双方は「新世界秩序」とも言うべきこの新たな事態を、なる
べく目立たないよう運営している。たとえば、米国がウクライナに圧力をかけ
て東部に自治を認める憲法改定をやらせたことは、ロシアにとって大喜びのは
ずだが、ロシア側は「東部の勢力と相談して自治を与えるのがミンスク2の合
意だったが、ウクライナ政府は東部に相談せず憲法を改定しており、合意違反
でけしからん」と怒る演技をしている。

http://sputniknews.com/world/20150717/1024739547.html
Kiev's Proposed Constitution Fails Minsk II Despite Nuland's Bluster

http://tanakanews.com/141118russia.htm
プーチンを怒らせ大胆にする

 米国中枢で軍産複合体がクーデター的な戦略乗っ取りをやらない限り、ウク
ライナ危機は今後もう再燃せず、下火になるだろう(報道だけで、対立が激化
しているかのような幻影が流布し続けるかもしれないが)。911やイラク侵
攻あたりから続いてきた多極化のプロセスは、山場を迎えつつある感じだ。



この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/150730ukraine.htm

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