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2007年09月01日19:41

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2000光年の彼方に

青春18きっぷが一枚余っていたから、北関東の未乗の路線を周った。
栃木の烏山線と群馬の吾妻線である。
この二線は盲腸線であり、地域も微妙だったから、今迄、乗る機会が無かった。

上尾を6時8分に出る各駅停車で大宮へ出て、大宮から、6時35分発の宇都宮行きに乗車する。
E231系のロングシートであった。

朝が早かったから、久喜を過ぎた辺りから記憶が途切れ途切れであり、小山を出たのは覚えているが、後は宇都宮まで記憶が無い。
7時52に宇都宮に着いた。
この街は遠い昔に住んでいた事がある。
しかし、今や当時の面影は無い。
朝食に駅の蕎麦を手繰って、10番線に行く。
既にキハ40の2輛編成で、ホームに停車していた。
車内はロングシートに改造されており、これには興ざめであった。

8時5分に発車して、東北本線を二駅、宝積寺へ。
そこから烏山線と分岐する。

烏山線は平坦線だと思っていたが、以外にも勾配がある。
時にこれはと云う見所は無いが、典型的な田園風景中を走るローカル線で、これはこれで楽しい。
烏山の手前で軽い山越え、トンネルを潜り抜ける。
高低差があるのか、沿線を流れる川が、途中で滝の様になっていて、岩に砕けた水が白く泡立っている。

烏山線はかつて、「999」が大ブームだった頃に運転されたミステリートレイン「999号」で、終着のアンドロメダになった駅である。
今は駅の数に合せてか、七福神が飾られている。
各駅に七福神のイラストが掲げてあり、車輛にもそれぞれ、イラストが描かれている。
私が乗ったのは、恵比寿神と弁財天であった。

烏山では次の列車まで30分程の時間があったから、町中を歩いてみる。
山間の田舎町で見所も多数ある様だが、車で無いと動きが取れない。
この町は山あげ祭と云うのがあって、日本最大の野外劇らしい。
京都の、壬生狂言の様な物なのだろうか?
川魚は豊富な様で、駅前で鰻とあゆを焼いている店があった。

9時33分発の宝積寺行きで、再び宇都宮へ向けて出発する。
朝方は気にならなかったが、冷房装置が故障しているらしく、窓を空けて扇風機を回している。
いよいよ国鉄らしくなり、夏のローカル線の旅は、特に気動車はこうでなければならない。
沿線の田圃も良く実って、稲穂が頭を下げている。
余りにものどかな風景である。
途中、典型的な、テレビ等で出て来そうなステレオタイプの腐なのが乗って来た。
やはりと云うか、期待通りと云うか、人目も憚らずBL漫画を読んでいる。
何故こう云う物を堂々と列車内で読めるのかが解らぬ。
表紙もドギツいのだから、せめて周囲に解らぬ様、ブックカバーくらい付ける配慮があっても良かろう。
列車内は公共の場であり、それに相応しいお行儀も必要であると、私は思う。

この列車は宝積寺行きだから、宇都宮に行くには乗換えをせねばならない。
7分の接続で10時22分発の両毛線直通の高崎行きに乗る。
107系のロングシート車であった。
次の目的は吾妻線であるから、この儘、高崎まで行っても良いのだが、吾妻線の末端区間、万座・鹿沢口と大前の間が一日たったの5往復しか走っておらず、この儘高崎へ行っても二時間近くの待ちとなる。
どうせ待つのなら、かつて暮らした事のある宇都宮に、久方振りに降りてみる方が良い。
そんな訳で宇都宮で途中下車する事にした。

宇都宮の街も大分変わってしまった。
せっかくだから、二荒山神社をお参りして、中心部を東武デパートまで歩いてみた。
二荒山神社は中心街の小高い小山の上にある、宇都宮の守護神的な神社。
その片隅に、蕪村の碑があった。
なんでも、蕪村は宇都宮に滞在した事あるらしく、句も詠んでいたと云う。
「鶏は羽にはつねをうつの宮柱」(宰鳥)
宰鳥とは与謝蕪村がこの頃使っていた号で、恥ずかしながら、蕪村が宇都宮を訪れていた事を初めて知った。

その後、オリオン通りの商店街を抜けて、東武デパートまで歩く。
もはや当時の面影も無いが、まだ小さかった私が、両親に手を引かれて、こんなアーケードの下を歩いていた様な気がする。
商店街の中程で旅行会社のキャンペーンをやっていて、バーバパパの着ぐるみがいた。
宇都宮にいた頃に丁度、アニメをやっていたから、何だか感慨深い物があった。

東武デパートは、三階に東武宇都宮駅がある。
デパートの中に電車の駅があるのが珍しかったから、今でも良く覚えている。
この電車でも金沢へ行けるのなどと云って、両親を困らせていた事を思い出した。
走る車輛は変わってしまったが、今でも東武デパートの三階のガラス戸を開けたら目の前に東武電車が、行き止まりのホームに白い車体を並べていた。

再び、オリオン通りを、今度は駅に向かって歩く。
あるビルが気になったから、入ってみる。
5階建てのビルで、一階こそお洒落なブティックが入っていたのだが、その他の階には
アニメイト、まんだらけ、メロンブックスなど、そう云う関係の店ばかりであった。
確か、アニメイト宇都宮店は駅前を右にいった、外れの所にあったはずだが、一体いつ移転したのだろうか?
そのアニメイトで、らき☆すたの制服を着た人がいた。
余りに唐突に現れたから、店員かと思ったが、手に賞品の入った袋を持っている。
だから、客だと知れたが、なんとも大胆な事だ。
この私でもそんな大胆な事はした事無い。

エスカレーターで一階に戻るが、途中、コスプレ衣装を置いてる店もあった。
ハルヒの制服や銀魂の真選組、テニプリの衣装などかなりの品揃え。
確か私の記憶する所、京都にはコスプレ衣装の専門店は無かった。
京都にも無い物が宇都宮にあるとは、やはりここは北関東の中心なのだ。
商店街の裏手のフィギア屋には、ガンダムの盾が飾ってあった。

駅に戻り、うさぎやの「チャット」を求める。
このお菓子は、宇都宮ではお使い物に良く利用される銘菓で、ウチの連中も好物だから、実家に送っておいた。
私も勿論好物なのだが、バラ売りはしていないので、購入は控えた。
流石に一人で10も20もは多過ぎる。
丁度、頃あいも良く、12時23分の上野行きで小山に向かう。
30分程揺られて、小山に到着。
ここで13時7分発の両毛線高崎行きに乗換える。

両毛線は88年春に、一度乗車している。
新幹線の高架下の、薄暗いホームに165系電車が停車していて、喜んでいたのを覚えている。
今日は107系を覚悟していたのだが、運の良い事に115系であった。
今回、最初で最後になるだろうクロスシートに感激する。
発車して暫くすると、やけに牛小屋が目立つ。
小屋の中で、黒い牛が退屈そうに寝そべっているのが見える。

東武の高架が迫って来て、栃木に着いた。
栃木などと云う大層な市名ではあるが、なんて事は無い田舎町である。
栃木から先は田園風景が広がっていて、もう牛小屋は無かった。

なんだか、やたらと眠たく、佐野を過ぎた辺りから記憶が無い。
目が醒めたら、高崎に到着していた。

次の吾妻線の大前行きは14時52発。
ただ、車輛は小山からの両毛線の115系がせの儘、大前行きになった。

上越線を渋川まで行き、ここが吾妻線の始発駅である。
吾妻線は吾妻川に沿って走っている。
沿線は、草津を筆頭に万座、川原湯など名だたる温泉が湧いており、上野から直通の特急が何往復も設定されている。

吾妻線に入り暫く行けば山が狭まり川面が車窓の近くに迫る。
どんよりと立込めた雲と、山々から湧き登る靄が、既に境界線も解らない。
吾妻渓谷を舐める様に列車は走っている。
一瞬、コンクリートの柱みたいな物が見えた。
これが日本で一番短いトンネルである樽沢トンネルで、意識していたから気が付いたが、まず見落としてしまう短さで、全長僅かに7.7メートル。
車輛一輛分よりも遥かに短い。

草津温泉の玄関である長野原草津口駅で大半の乗客が下車し、残った客も、終点の一つ手前の万座・鹿沢口駅で降りてしまった。
万座・鹿沢口駅は駅名に「・」が着く珍しい駅で、万座温泉や鹿沢温泉の玄関駅であるが、ホーム一面の面白みの無い高架駅だった。

万座・鹿沢口から大前までの一駅は、一日僅かに5往復の閑散区間。
4輛編成の列車に10人ちょっとの乗客がいるが、どうやら殆ど皆、鉄らしかった。
大前には16時41分に到着。
折返しの発車は17時13分で、30分程時間があるが、駅前に温泉施設があるだけの山間の無人駅で、鉄な乗客が思い思いに写真を撮り始めた。
駅脇の畔道から、床下の機器類を熱心に撮影しているのもいた。
大前駅の標高は、駅銘板によると840.37メートル。
流石にこの時間になると、かなり冷え込むから、車内で発車を待っていた。

17時13分に発車して、元来た線路を戻って行く。
途中駅から特に乗客が乗って来る訳でも無く、車内は閑散としている。
川原湯温泉駅で、渓谷沿いの道をJRバス関東の、バスが並走していた。
行先は、どうやら新宿と読めた。
草津温泉辺りから直通のバスでも運行しているのだろうか。
駅を出てから暫くは並走していたが、やはりこちらの方が速度も早く追抜いてしまった。

相変わらず、山々には靄が掛かっていて、日が暮れて来たから、車窓は碧い絵具を流し込んだ様に暗く、輪廓がはっきりとしない。
靄が霧に変わって、列車ごと包み込んでしまったかの様である。
絵具は段々と濃くなり、終いには黒い墨となって、車窓を塗潰してしまった。
塗り残しの白やオレンジや赤い光が流れていた。

渋川で結構な乗客があったが、それでも混むと云う事も無い。
結局、ボックス一つを占拠した儘、高崎に到着。
4分の待ち合わせ、19時1分発の上野行きに乗る。
211系のロングシートで、いつも通勤で乗る路線であるから、あまり良い気はせず、旅が終りを告げ、日常に降り立ったと感じた。
上尾到着は20時18分。
偶然にも、会社帰りに良く乗る時間帯の電車であった。


画像一枚目、烏山線のイラスト。
弁財天ですが、もう少しアキバ系のイラストなら、と思うのは私だけか?

二枚目、宝積寺駅の七福神。
しかし、宝積寺と云えば、島本育ちからすれば宝積寺は天王山麓にある、通称宝寺。
確か、打出の小槌が寺の宝にあったな…

三枚目、吾妻線大前駅に停車中の115系


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