(Jo^▽^)ノぁぃ♪
最近、我が家の電子レンジが不調だ、パナソニック NE-FL 100-W
https://panasonic.jp/range/products/NE-FL100.html
発売は 2020年11月1日なので6年前だ
調理時は、レシピ通りの調理時間でも十分な加熱が出来ない
レンジ出力600W表示だが、500Wのレシピで対応している
分解するにも内部は高電圧なので、外部から出来る事から始める
「JIS規格では」
そこで調べて見るとJIS規格では測定方法が決まっている様だ
JIS法の 500mL×2 ビーカー方式に基づく
500mL×2 の水(攪拌)を 60 秒加熱(攪拌) → 平均温度上昇 ΔT を測定 → 出力(W) = ΔT × 70 という計算式が使われます。
水量:500mL × 2 個(合計 1L)
加熱時間:60 秒(+予熱 2 秒)
計算式:出力(W)=ΔT×70
「実際に計測」
我が家には「ビーカー」が無いが、温度上昇がさほど無いようなので、プラスチックのタッパーでも良かろう、耐熱の丼などでは、容器に熱が奪われてしまうからだ
キッチンの量りで正確に(500ml)計測、温度は放射温度計で計測 両方共16.2℃
「加熱」
2個のタッパーを62秒加熱して攪拌する、加熱にバラつきが出るからだろう
温度計測 23.2℃ と 22.8℃ = 平均 23℃ - 16.2℃ 6.8(ΔT) × 70 = 476W
やはり出力低下している
「入力電力を計測」
では電子レンジの入力電力は正常か確認する
「入力計測」
標準では銘板 1360W(有効電力)の様だ、実際に計測する
ACの入力電圧はAC105V 1Lの水を手動設定600Wで加熱中の回路電流は10.28A = 1079W
この電力は皮相電力だ、内部電源がPFC(力率改善整流回路)かどうかで判断が変わる
・PFC回路なら力率は限りなく1に近いから実効電力1079W
・PFCで無ければ皮相電力1079VA 銘板 1360W(有効電力)と そのまま一対一で比較はできない
一方で、JIS相当の水加熱テストで 約476W しか出ていない → 実効出力が落ちている事実 は揺らがない
「消費電流計測」
付属の「内部配線図」からはPFCか否かの判断が出来ない
PFC回路かどうかは、回路電流の波形観測で確認出来る
PFC回路であれば、電源の電圧に同期した電流波形となるが、整流→平滑 では高調波(ウサギの耳)が観測出来る
所が頼みのオシロに接続する電流プローブは故障中です
シヤント抵抗を使用する、と言ってもタップケーブルに低抵抗を接続するのは面倒な事だ
そこで「裏技炸裂」 タップケーブルで電子レンジを接続して、ケーブル両端の同じ電極を観測する、電流は10.28Aなので電圧降下も観測出来るだろう
テスターで測定するとAC0.14Vが観測出来る、これだけ出てればオシロで表示出来そうだ、ケーブルの抵抗値は不明だが、値を見る訳で無く波形をみるので波形振幅は気にしない
「電流波形」
ゼロクロス辺りが怪しいがPFCとして動作している様だ
従って力率は限りなく1に近いから実効電力1079Wが確定した
「どこでロスっているのか?」
ここまでの外部計測結果を整理すると、次のような状態になっている。
・定格出力:600W 自動で加熱すると初めは900Wで加熱らしいので「手動で600W設定」
・JIS相当の水加熱テスト:476W(約80%)
・銘板消費電力:1360W(有効電力)
・実測消費電力:1079W(PFC動作確認済 → ほぼ有効電力) (約79%)
つまり、入力側も出力側も「2割低下」しており、「入力だけ弱い」「マグネトロンだけ弱い」という単純な故障ではなく、電源〜インバータ〜マグネトロンまで“系全体”がデレーティングされた状態 と考えられる。
「PFC動作の確認」
内部配線図からは PFC の有無が判断できなかったため、ACラインの電流波形を観測して確認した。
電流プローブが故障中のため、タップケーブルの電圧降下を利用して波形を観測する“裏技”を使用した。
・テスターでケーブル両端の電圧降下:AC 0.14V
・オシロで観測した電流波形:電圧波形とほぼ同相の正弦波
→ PFC が正常に動作している 従って、1079W は皮相電力ではなく 実効電力(有効電力) と判断できる。
「では、どこでロスが発生しているのか?」
PFC が正常である以上、一次側の整流・平滑までは大きな問題は無い。
しかし、PFC 付き電源には特徴がある。
・一次側平滑コンデンサが容量抜けしても → PFC が電流制御で“隠してしまう”
・リップルが増えにくく、波形も正常に見える
・しかし重負荷時には PFC が補正しきれず、
→ バス電圧がわずかに低下し、全体の出力が落ちる
今回の「入力も出力も2割低下」という症状は、まさに 一次平滑コンデンサの容量抜け で説明できる典型パターンである。
もちろん、他にも候補はある。
・高圧コンデンサの容量抜け
・高圧ダイオードのリーク
・マグネトロンのエミッション低下
・インバータ素子の損失増大や保護動作
しかし、「軽負荷では正常、重負荷でだけ落ちる」
という挙動が確認できれば、一次側の容量抜けが最有力になる。
「まだ外部で出来ること」
このレンジは 600W / 500W / 150W の切り替えがある。
もし 150W モードで JIS 相当の水加熱テストを行い、150W がほぼ規定どおり出るなら、
→ 重負荷時だけ PFC が踏ん張り切れない
→ 一次平滑コンデンサの容量抜けが濃厚
逆に、150W でも 80% 程度しか出ないなら、
→ 高圧系やマグネトロンの“絶対性能低下”が本命
この追加テストは、分解前にできる最後の切り分けとして有効である。
「150Wでテスト」
JIS のテストは 600W で 1L なので、150W なら水量は 1/4 の 250mL で良い。
1000ml→250ml にする理由は、1000mlでは温度上昇が少ない=放射温度計の「分解能」から誤差が増える
S/N比で考えるなら、ノイズフロアーに近づくと誤差が増えるのでS=信号を大きくして計測とする
同じくタッパーに 250mL を入れ、初期温度を測定してから 150W モードで加熱する。
「計測結果」
温度計測
テスト前:17.4℃
テスト後:24.0℃
温度上昇 ΔT = 24.0℃ - 17.4℃ = 6.6℃
JIS式に従い、出力(W) = ΔT × 70 = 6.6 × 70 = 462W
ただし水量は 1/4 なので、実質出力は115.5W
「150W設定に対して 115.5W(約77%)」
600W テストでは 476W(約80%)だったが、
150W テストでも約77%と、ほぼ同じ比率で低下している。
つまり、
・重負荷(600W)だけが落ちているのではない
・軽負荷(150W)でも同じ比率で低下している
・PFC や一次側の「重負荷時だけ踏ん張れない」故障ではない
・系全体が一定比率でデレーティングされている
という結果になった。
この挙動は、
・マグネトロンのエミッション低下
・高圧コンデンサの容量抜け
・高圧ダイオードのリーク
・インバータの高圧生成能力低下
といった高圧〜マグネトロン側の“絶対性能低下”が本命であることを示している。
600W でも 150W でも約80% に揃って落ちている為、「一次側の容量抜けで重負荷だけ落ちる」パターンとは異なる。
結論として、このレンジは 高圧系またはマグネトロンの劣化による“全域デレート”状態に入っていると判断できる。
「どこまで修理するのか?」
ここまでの外部計測だけで、
・表示600Wに対して実効は約480W
・150Wでも約115Wと、全域で約8割スケール
・PFCは動作しており、一次側の致命傷ではなさそう
・高圧系またはマグネトロンの劣化が本命、というところまでは追い込めた。
ただし、ここから先は「どこまで踏み込むか」の世界になる。
・マグネトロンの交換は、高電圧・マイクロ波・シールド構造の問題もあり、個人で安全に行うのはかなりハードルが高い
・一方で、高圧コンデンサ(いわゆる電界コンデンサ)の容量抜けであれば、部品入手と交換自体はまだ現実的なラインにある
現実的に個人で手を出せるのは、せいぜい高圧コンデンサの交換までだろう。
そこまでやっても改善しなければ、「マグネトロン本体の寿命」と割り切って、このレンジは“実験教材としての役目を終えた”と判断するのが妥当かもしれない。
エンジニアとしては、ここまで外から詰めて、「どのブロックが怪しいか」を言語化できただけでも十分勉強した。
80%の出力でも調理可能なので、取り合えずゆっくり修理に移るとしましょう
しかし80%の出力の原因が何処かの故障ならば、使用を続けると発火の可能性も無きにしも有らず
なので早々に分解修理して、発火の可能性を潰しておこう
「いよいよ分解してみる」
「高電圧注意」の警告が有る
インバータ基板からマグネトロンまではヒーターケーブルのみの配線の様だ
ここまでの解析でインバータ基板かマグネトロンが出力低下の原因だろうから、マグネトロンから外して見る
内部は非常にシンプルだ、以前の電子レンジと比べても簡素なつくり
「マグネトロン」
マグネトロンは「発振管」なのでヒーター電圧とアノード電圧(数千ボルト)を与えると発振を始める
しかし、インバータ基板からはヒーターのケーブルが繋がっているだけである。
「インバータ基板」
インバータ基板を外して見る、非常にシンプルな作りだ
以前の電子レンジの様な電解コンデンサは無い、パワー素子はブリッジダイオードとFETのみだ
回路を追ってみる、PFC(力率改善整流回路)で有る事は事前の調査で判明している
PFCコントローラ BD4250FS
通常のPFC回路が扱うパワー回路では
1)ワールドワイド入力(AC80V〜AC260V)に対応する
2)非絶縁でPFC回路がDC400V近辺まで昇圧
3)DC400V→目的の電圧へ「絶縁回路」で昇圧する
「シンプルなパワー回路」
この回路は非常にシンプルだ、ダイオードブリッジ→フィルタ回路→FETでドライブ
ここまでは他のPFC回路と同じだが、ここからが違う
1)FET出力→トランス→絶縁回路でヒーター電源を供給
このヒーター電源はPFCのパルスが直接掛かる、ヒーターは数十kHzで駆動される
マグネトロンは真空管なのでヒーターは「白熱電球」と同じで、直流でもパルスでも「電力」が供給されれば動作する
2)FET出力→トランスの高電圧側はセンタータップで出力されていて、倍電圧整流回路で数千Vに昇圧
この高電圧の+側は回路のGND -側は1)の絶縁されたヒーター回路に接続
つまりマグネトロンのアノード電圧は、GND(0V)とヒーター(カソード)間に供給される
なので今までの電子レンジの様な+数千ボルトの配線が無い、ヒーターの負電圧回路のみの配線と成る
画像に有るコンデンサ(2個)は、センタータップ倍電圧昇圧回路に併設されてるフィルタコンデンサ
その上に有る黒いデバイス(2個)は整流ダイオード、内部にはダイオードがシリーズに接続されてて、耐電圧10kV級の物だ
今までの電子レンジと違う点は、PFC出力→倍電圧整流回路→フィルタ回路で平滑用の電解コンデンサは無い
これが意味する事は、出力波形は「全波整流と同じ脈流」と成る
マグネトロンのアノードには脈流(100Hzか120Hz)が供給される
なので電子レンジの定格消費電力が脈流の平均電力と言う形で供給される
従ってインバータ回路の構成は
AC100V → EMIフィルタ → PFC →高周波インバータ → 高周波トランス → -HV & ヒーター電源
なんとシンプルな事
「電子レンジの症状」
電子レンジの症状は外部からの計測で
600W → 476W(80%)
150W → 115W(77%)
実効消費電力 1079W(86%)
全域で同じ比率で低下
PFCは正常でDCバスが無いので一次側電解コンデンサは無い
この条件から導かれる答えは
1)高圧フィルムコンデンサの容量抜け
2)高圧ダイオードのリーク
3)マグネトロンのエミッション低下
この3つだけ。
「基板を計測」
先ずはコンデンサ実測
8.2nF → 8.36nF
5.6nF → 5.46nF
正常範囲だ
ダイオード2個の計測
パワエレ開発で使用してるAC200Vの絶縁トランス+スライダックで、10kΩの抵抗器を負荷としてダイオードのVFを計測
ダイオード UX-C2Bの順方向電圧(VF)は、最大 13.5V (IF = 19mA時) 計測結果は略正常
「マグネトロンの性能劣化」
以上の結果からマグネトロンの性能劣化が決定的と成った
マグネトロンの劣化では他の故障とは違い、突然の停止や発火の可能性も低いので、このまま80%出力で使用する
マグネトロン自体の修理は出来ないので代替品を探す
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