ノルウェー、オスロ。
舞台女優のノーラ・ボルグは、やや神経症気味で劇場支配人からセラピーを受けるよう指示されるほどだ。ある日、実家で一人暮らしていた母が亡くなった。家の所有権は、ノーラと妹アグネスが幼い頃に家出した映画監督の父グスタヴにある。そのグスタヴが、葬儀を機に現れた。そのうえ分厚い脚本を携え、実家を舞台にノーラをヒロインにした映画を撮りたいと言い出す始末。父親らしいことを何もしてこなかったくせに、家族で映画撮ろうぜとは何様だよとノーラは拒絶するが、グスタヴはこの新作に固執し、映画祭で知り合ったハリウッド女優レイチェルをヒロイン役に迎えてやる気満々で…
「センチメンタル・バリュー」
バラバラの父娘が、それぞれの視点から家族を見つめ直していく映画。憎んでも離れても、やっぱり親子…というありふれた着地ではあります。
この世には本気で憎みあって殺人に発展する親子関係もあるし、完全に縁を切ったまま臨終の時すら立ち会う気もない親子関係もある。本作ボルグ家の父娘関係は実は最大公約数的。会えばハグもするし孫の誕生日には食事会に招きもするが、心の底では娘が父を許す気は一切なく、父も素直に言葉で謝ることができない不器用ぶり。まぁ、ごく普通の仲悪い一家というのはこんな感じでしょう。特殊なのは、父が映画監督で長女が女優、次女が歴史学者という点。彼らのコミュニケーションはハグでも会話でもなく「脚本」と「映画」なんだよね。そして舞台が「家」という点。これ引越し繰り返す一家だったら絶対上手く着地しなかったよなと思う。あの家があるから脚本ができ、和解できたんだよな。グスタヴが脚本で「ちゃんとノーラのことを見ていたよ」と知らせ、家がかけがえのないセンチメンタルバリューであることを伝えたのは良かったが、気の毒なのがレイチェルですね。彼女が単にキャリアにハクつけるためにヒロイン立候補するバカ女優だったら笑えたけど、生真面目で性格が最高すぎる女優(エル・ファニング好演)だったことで、ちょっとグスタヴに感情移入しづらくなってしまったのが難。
ま、9歳の孫にハネケの「ピアニスト」とギャスパー・ノエの「アレックス」のDVDをプレゼントしちゃう爺さんってのはファンキーで楽しいけどね。エリックが立派な変態もといシネフィルに育つことを願うよ^_^
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