ロンドン…
配管工の夫コートリー、22になる息子モーゼスと暮らす中年女性パンジーは、清潔好きで些細なことがいちいち気になる女性。朝からモーゼスのだらしなさにダメ出しをして、外に出て店に入れば店員と口論になる毎日。ある日、美容師の妹シャンテルから、今度の母の日にママの墓参り行こうと誘われるのだが…
「ハード・トゥルース」
以下、ネタバレの日に願うこと。



小さいながらも白くて清潔そうな庭のある一軒家から始まる映画。住んでいるのが黒人一家で、だからといって貧困とか差別とかをテーマにしていなさそうな印象。息子は立派にニートになっており、母親のパンジーはそんな息子にガミガミと怒鳴り嫌味をぶつけてくる。当の息子も夫もパンジーには慣れっこで、いちいち反論しないで黙ってやり過ごす。ま、ある意味「普通の一家だな」とぼんやり観ていると、今度は美容師シャンテルの物語に移行。客のノロケだかグチだか分からない旦那の話を延々聞かされ、やや狭いフラットでは社会人として頑張る娘2人とバカ話に花を咲かせて笑顔が絶えない日々……この対照的なパンジーとシャンテルが実は姉妹だと判り、ストーリーが進んでいくという構成。
…これ、双極性障害(プラス強迫神経症)患者とその家族の姿を淡々と映し出す映画です。精神科は門外漢だけど、かなり特徴的な症状だと思う。夫がやるべきは彼女をメンタルクリニックに連れて行くことで、決してスルーすることじゃないよな。ただ夫の絶望感も理解はできるけど…
作り手の「意地悪」が炸裂するのはクライマックス。普通ならモーゼスが花を買ってきたという事実を聞いたパンジーの「ありがとう」でエンドマークにするところを、コートリーがギックリ腰になるとこでエンドにしている点。先に希望が見出せない終わり方だと思ったなぁ。
パンジー役マリアンヌ・ヴァン=バプティストの凄まじく素晴らしい演技だけでお釣りが来る作品。人として女として妻として、そして母として生きねばならないという「厳しい真実」を前に壁にぶつかってしまった主人公。その姿に憐憫を感じるだけじゃなく、己を投影して見るべきだろうな。必見。
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