時は現代。ドイツによる占領が間近に迫るフランスでは、外国人迫害が本格化していた。パリから各地へ逃げる人々が日に日に増えるなか、反体制の闘士だったゲオルクも当局の目を逃れ、なんとかマルセイユまでたどり着く。自殺したドイツ人作家ヴァイデルのパスポートを偶然手に入れたことで、国外脱出を決意するゲオルク。最も安全な客船でアメリカを経由しメキシコに渡るのだ。ヴァイデルになりすまし、アメリカ領事館でビザを手に入れたゲオルクだったが、出航までの日々の中で医師リヒャルトとその愛人と知り合ってしまったことが、彼の運命を変えることになる…
「未来を乗り換えた男」。
以下、ネタバレを乗り換えた男。


捨てた者と捨てられた者、どちらが先に相手を忘れるか?…というフレーズが忘れがたい印象を残す、現代版「カサブランカ」。移民排斥のメタファーのため、敢えて現代を舞台にしたというのが少々ややこしい。1940年を舞台にしても成り立つハナシなんですけどね。幕切れのセンチメンタルっぷりはなかなかです。
病院で働くアントワーン・ベッソンと、実家に帰った妻ミリアムの離婚調停聴取が始まった。2人の娘ジョセフィーヌは18歳になるからいいが、争点は11歳の息子ジュリアンの親権である。アントワーンは共同親権を主張し、週末や休暇中にジュリアンと過ごす権利を要求する。しかしミリアムは、DVを根拠にそれを拒否、ジュリアンが家裁の聞き取りで話した供述書も提出する。その中でジュリアンは、アントワーンがミリアムに対し嫌がらせや暴力・恫喝を行っていたとハッキリ答えていた。しかし家裁は、アントワーンの訴えを聞き入れてしまう。ミリアムは子供たちを連れ新居に移り、アントワーンの手が届かない生活を手に入れようとするが、隔週でジュリアンをアントワーンに会わせなければならない。当のジュリアンは、顔も見たくないアントワーンと週末を過ごすことになるのだが…
「ジュリアン」。フランス映画です。
以下ネタバレ。


DVの映画ですが、父親=アントワーンがわかりやすい悪漢でないところがリアルであり恐ろしいところ。冒頭の夫婦の主張が食い違うところでは、正直どちらの言い分が正しいのか ハッキリしません。ミリアムと子供たちが結託してアントワーンを悪者に仕立てようとしているのかも…とすら思えてきます。
しかし、ジュリアンが本気で父を怖れ嫌悪していることが解ってから、アントワーン&ジュリアンの2ショットに堪らない緊張感が漲って行きます。ジュリアンなりに頑張って、嘘でママを守ろうとしていくのに、ことごとく裏目に出てしまうあたり…溜息出ちゃいますよね。アントワーンの強い執着心がじわじわと沸点に向けて上昇する展開も、イヤーな気分にさせて来ます。そういえば、映画はアントワーンの生活感をほとんど映しませんでした。独りで時間を過ごす場面がないんです。彼の人生が、家族無しでは成立しないとでも言いたげに。リアル「シャイニング」なドラマとして、観る価値のある作品でした。
巧いな、と感心したのは、クライマックスで登場する猟銃への伏線。冒頭に狩猟クラブに参加していることが示され、実家に寄る時に猟銃保管を頼むものの、父と口論になって荷物を全て引き取るという展開になり、「まさか…この映画に銃が出てくるのか…?」と不安になっていると、これが最適かつ最悪な使われ方をするというクライマックスね。
ですが、不満な点というか不可解な点も。それは娘ジョセフィーヌの一連の描写。学校サボって彼氏といちゃいちゃしているこの娘の存在意義はなんだったんだろうか。破綻したアントワーン&ミリアムの対比としてのジョセフィーヌ&サミュエルだったのか?ジャンル映画的着地を見せる映画なら、 正直ジュリアンが一人っ子だった方が良かったのでは?
完成度が高いとは言えないが、まずまずオススメの一本でした。今年最初の、2019年ベスト子役映画の候補作(笑)
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