「はーい、皆さんこんにちはー! みんなのアイドルちゃんですよー!」
「やだっ、あの娘薬でもキメてるのかしら」
「インド人もびっくりデース」
「ちょっと、酷くない!?」
===
古ぼけた洋館の正面で突然スマホを取り出して、
開口一番そんなことを言っちゃう娘ってちょっと怖いね?
マッチョとインド人はちょっと離れてヒソヒソ話。
アイドル?っぽい娘はそんな彼等にショックを受けているみたい。
ぎゃーすか、ぎゃーすか。
真っ昼間だというのに大声で喚く3人はとってもうるさい。
私がご近所さんだったら箒を片手に怒鳴り込むところだよ!
「もー! 撮影の邪魔しないでよ!」
「だって、ねェ? 録画なんかしてどうするのよォ」
「ここ、電波通じないんだから生配信できないの! 仕方ないじゃない!」
「インド人もびっくりデース。 あ、カレー食べマスカ?」
「食べないよ!?」
HAHAHA。
やたら陽気にマッチョとインド人が笑い出した。
やだっ、これが噂の『コント』ってやつなのかな。
どこかにカメラを構えた人とか居る?
「私だって本当なら生配信したいの! でも電波ないからできない! OK!?」
「なーんだァ、それならそうと言いなさいよォ」
「言ったわよ! 依頼主の所で! 撮影するって!」
「オー、インド人もびっくりデース」
「インド人さんはそれしか言えないの!?」
あ、ソレわたしも思った。
===
ぷりぷり怒って撮影?を始めるアイドルちゃん。
マッチョとインド人は『ヤレヤレ』って言っているけども、
たぶん悪いのはこの二人、だよね?
「今日は何と、噂の『悪霊の館』にやってきました☆」
「カップルが悪霊を見たという噂に始まり次々と噂が湧き出る洋館−−」
「ここには一体何が潜んでいるんでしょうか? 楽しみです!」
むー、カップルを驚かせたのは本当だけど、わたしは悪霊じゃないよー。
ガンッ!
抗議も兼ねてちょっと強めに窓を鳴らしてみる。
「ひぅっ!?」
「あら、ひっくり返っちゃったわアイドルちゃん」
「びっくりデース」
えっ、なにこの娘。白目向いてピクピクしてる。怖!?
あ、胸を押さえだした。あれ、やり過ぎちゃった?
「うぐぐ、く、薬−−!」
「ちょっと、アンタ大丈夫? 筋肉足りてる?」
「どいてろデース。 薬はこれデスか?」
「そ、それ−−」
「舌を少し上げて、そうデース、飲み込まないでくだサイね?」
インド人、『びっくり』以外も喋れたんだ。
マッチョは筋肉をしょんぼりさせてスクワットしているけれど、
それに一体何の意味があるのかしら。
「大丈夫? 寒くない? いま筋肉で空気を温めるワ!」
馬鹿だわ。こいつ本物の馬鹿だわ!
===
しばらくすると、アイドルちゃんも落ち着いてきたみたい。
インド人の手を借りながらちゃんと立ち上がったわ。
よかった、わたしのせいでポックリ逝かれたら困るもの。
「ありがと、インド人さん」
「心臓が悪いんデスか?」
「ちょっとね、昔から弱いんだ」
「そんなので大丈夫なの? ここ、悪霊の館よォ?」
「まぁ、これでもそれなりに修羅場は潜ってるから☆」
スクッと立ち上がったアイドルちゃんがスマホを回収しながらそう言う。
しばらく眺めていた彼女は、スッと画面をマッチョとインド人に向ける。
なになに? 何を見せてるの?
「ほらほら、この辺ちょっとみてみて」
「アラ、さっきの映像じゃないの」
『ガンッ!』
『ひぅっ!?』
「この窓、明らかに揺れているわよね?」
「本当デース、びっくりデース」
「確かに、この窓だけ揺れてるわねェ」
えっ、もしかしてさっきのやつ?
あれ、何かやらかしちゃった!?
===
「チラッと変な影も移ったし−−クロね」
「まァ、探索者として集められたんだもの。 そうでなくちゃ筋肉が泣くワ」
「びっくりデース」
そう言ってアイドル、マッチョ、インド人が館を見上げる。
みんな、驚くほど真剣な『目』をしている。
肝試しとか、冗談交じりに館へやってくるいつもの連中の『目』じゃない。
『幽霊』の正体を突き止めて、何かするつもりの『目』だ。
身体はないのにブルっと背筋に悪寒が走った。
怖い。この人達、『普通の人』じゃない−−!
「さっ、中に入るわよ。 マッチョ、バーンとやっちゃえ!」
「やらないわヨ。 依頼主から鍵貰ってるンだから」
「−−なんでこんな時はまともなのよ」
「良いオンナは空気を読むのよ」
カチャリ、とマッチョが玄関の鍵を開ける。
アイドルちゃんはグチグチ言いながら何かをポケットに戻したけど、
えっと、見間違いじゃなければピッキングツールだったような−−?
マッチョを先頭に、アイドル、インド人と順番に中へ入っていく。
怖い−−でも、やらなくちゃ。
だって、ここは大切な友人との思い出の場所だから!
決意を新たに館の中を移動する。
絶対に、あの人達に負けやしないんだから!
===
「きゃぁー!? で、出た!? あれ!? 意外と可愛い?」
「カレー、カレーを、カレーを食わなければ!?」
「おいインド人! 発狂してる場合じゃねェだろうが−−よォォォ!!?」
がっしゃーん☆
===
−−マッチョが飛んだよ。
フライングマッチョ
−−2階の窓から落っこちた。
フォーリングマッチョ
−−でも跳躍に成功したよ。
ジャンピングマッチョ
−−お陰で無傷だ、やったね。
ナイスマッチョ
===
「マッチョー!? インド人も何か変だし!?」
「カレー、カレー、カレー、、、、」
「アイドルもびっくりの状況よ!? 撤退、てったーい!」
ポイッとインド人を投げ飛ばして、アイドルちゃんも−−飛び降りた!?
アイドルちゃんは華麗に着地。最近のアイドルって凄いね!?
インド人は−−落ちながらダンスしてる!?
「次はこうはいかないわよー!」
そう言って、3人はスタコラサッサと去っていった。
えっ、また来るの? 嘘でしょ?
===
その日から、『たんさくしゃ』達は毎日やって来るようになった。
次第に私も持ちネタが尽きて、彼等を『びっくり』させられなくなってきた。
も、もう無理、限界!
お願い、誰か、助けてーっ!!!
〜 セッションにつづく 〜
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