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2017年11月21日18:57

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PL記録:ゆうやけこやけ(狐の社で)リプレイ風小説 その7

「ハロウィンパーティーだってぇ?」

そういえば今ぐらいの時期は学園でもそのような催しをしていたねぇ。
確か、子供達が仮装して練り歩く祭りであったような気がするけどよ。
外人に聞いてみりゃ、大体そんな感じで合ってるらしい。

「し、しかしうてのような者が外来の祭りに出てもよいものか−−」

心配する夕香に俺っちと外人がハロウィンの説明をする。
『海向こうのお盆』という説明でどうやら得心がいったらしい。
心配から一転して好奇心でいっぱいになった夕香の狐耳がぴこぴこ揺れる。

「てぇことはだ、夕香の嬢ちゃんはそのままの姿で大丈夫な筈でぃ」
「この狐耳と尻尾は消さなくても良いのか? うては別に消してもいいのだが−−」
「俺っち達が来た時だって隠れてなかったじゃねぇの」
「あ、あれは久しぶりの来客に思わず心踊ってしまって−−!」
「祭りの最中にぴょこっと出るぐらいなら最初から出しときゃえぇのよ」

まぁ、この町の大人達は何だかんだと妖に縁深い奴等ばかりだ。
それというのも俺っちのような悪戯妖怪が夜な夜な現れているせいで、
子供の頃からそういう奴等に慣れちまっているのよなぁ。
いやぁ、俺っちもまったく罪深い存在だぜ。


ハロウィンの概要を説明しつつ、どうしたものかと俺っち達が話している中。
座布団でころころと転がっていた子狸がじぃっとこっちを見ていることに気付いた。

「どしたぃ、小狸よぅ」

子狸はのんびりした様子で『百鬼夜行』みたいだと言った。
『百鬼夜行』、なるほど言い得て妙じゃねぇの!
いいねぇ、いいねぇと俺っちは独りで盛り上がる。
子狸はころころしつつ、そんな俺っちを楽しそうに見ている。
 

幸いこの一名町には狐も狸も大勢いやがる。
それに町中の妖怪達や、山々に潜んじまった妖怪達だって沢山いる。
こいつらも集めてやれば平安の都の百鬼夜行に負けず劣らずの規模になるはず。
こいつぁ−−楽しみになってきたぜ!

百鬼夜行ってことで夕香にもハロウィンがどのような祭りか理解したのだろう。
一層耳と尻尾を揺らしながら楽しそうに話を聞いている。
幽霊ちゃんもそんな様子を見てどことなく期待しているように見える。

一名の町でハロウィン百鬼夜行。
うんうん、いいじゃねぇの。人だけじゃなくて妖だって楽しめるのはいいことだ。
これは山々を駆け巡って妖達に声をかけるっきゃねぇな!




===


 


さて、祭りの大枠が決まったら次は場所だ。
この奥の社もそれなりに広さはあるが、祭りをやるには少々手狭だ。
どうしたもんかと首を捻る外人に、そういえば先程見た『分社』のことを伝える。

「尾三輪の分社? なんじゃ、うてはそのようなものを知らんぞ?」

尾三輪の総本社に住んでいる筈の夕香が首を捻る。
やっぱり夕香は分社のことを知らねぇみてぇだ。おかしいねぇ?

だが、少なくともあそこは尾三輪の物であるはずなので使っても問題ねぇだろう。
分社ってだけあって社は小じんまりしているが、敷地の広さはなかなかだ。
祭りをやるにはちょうどいい場所なのは確かだ。

これで祭りの大枠と、場所は決まった。
後は宣伝と、一応下の八幡神社に挨拶ぐらいはしておくべきか。

「うてが言ったと伝えれば、八幡の鈴音も嫌とは言わぬだろう」

流石御年500歳の化け狐。
300年ほど前に建てられた八幡の狐神に臆する必要はないと来たか。
 

俺っち達はそこから更に計画を詰めていく。
ハロウィンは10月の末に行われるから、正直時間はあまりない。
それに、一名町も町とは言っても小さな田舎町だ。
人間の力ではとてもじゃないが大きな祭りを開くことは難しいだろう。

だが、俺っち達『妖』が手を貸したとすれば話は別よ。
特に狐と狸の变化は素晴らしく『何にでも化けられる』と豪語する程だ。
こいつ等の力を借りりゃステージも簡単に設営できるに違ぇねぇ。

ライトだって人間の使うもんにゃ勝てねぇが、狐火や鬼火を使えば十分よ。
それに、人間のライトは電気っつーもんが必要らしいけど、俺っち達には関係ねぇ。
電気の通ってない田んぼ道や山道、分社の辺りだって問題なく照らせるだろうよ。

後はそうだねぇ、音響関係か。
まぁ『うわん』じゃねーけど人間たちに『そらみみ』を聴かせるぐらいはできらぁ。
ちょいとびっくりするかもしれねぇが、祭りって事になりゃ平気だろうよ。

ハロウィンの準備は妖の手を借りれば問題ねぇ。
けど、これは夕香が『自分から人間に関わる』ためのお祭りよ。
ちらっと夕香の方を見るが、夕香は祭りに思いを馳せてばかりで緊張感の欠片もない。

もし夕香が主役で、自分から人間と関わらないといけないと聞いたらどうなるだろうか?
この引き篭もりのことだ、途端に社に引っ込んでしまうに違いない。

(やっぱりコイツを一度町に連れていく必要はあるだろうねぃ)

祭りの大舞台にいきなり登場させて、さあ仲良くしようってのは難しいだろう。
まずは夕香を人間と触れ合わせて、『度胸』をつける所から始めなきゃいけねぇ。
そう言うと、案の定夕香はビクッと耳を震わせてそわそわしだした。
 

「い、いやしかし、うてはその、別に町に下りなくとも−−」

先程までの浮かれ様はどこにいったのか、一転してオドオドしている。
こんな様子じゃいざ祭りになっても主役になんてなれそうにもねぇ。
どうしたもんかと思案していると、子狸が夕香の袖を引っ張る。

「な、なに? 一度行ってみるべきだと? いや、しかし−−」

なかなか踏ん切りがつかないのだろう、言い訳をもごもごと口にしている。
本当、筋金入りの引き篭もりで人見知りじゃねぇか。
もしかして神様って奴はみんなそんなモンなのかね。

そこまで考えて、ティン!と閃いた。
そうか、『神様』だ。他の神様と会わせてみればこいつの考えも変わるかもしんねぇ。
丁度この下に八幡があることを思い出した俺っちは、その事を夕香に話してみる。

「八幡の鈴音と会う? ま、まぁ鈴音であれば会うに吝かではないが−−」

思った通り同じ神様であればそこまで抵抗はないようだ。
まぁ、鈴音ってヤツとは何度も会ってるみたいだし、安心感もあるんだろうけどよ。
とりあえずこれで夕香を社から引っ張り出す段取りはできた。
後は鈴音と引き合わせて、そのまま街へ繰り出せばいい。

だが繰り出すって言っても理由は必要だなぁ。
面をくるくる回転させながら辺りを見回していると、幽霊ちゃんが目に留まる。
そうだ、どうせなら幽霊ちゃんも巻き込んじまおう!




===


 

「ようよう、幽霊ちゃん。 幽霊ちゃんから見て夕香の服装ってのはどうだい?」

俺っち達の話合いをぼうっと見ていた幽霊ちゃんに唐突に話を振る。
ハッとした様子の幽霊ちゃんは、夕香の服装を見ながら思案する。

幽霊ちゃんのドレスもまぁ相当だが、
少なくとも幽霊ちゃんなりの『淑女』をイメージしたもののはずだ。

対して夕香の紫の和服は『神に相応しいと村人が思った』イメージの服装。
自分で選んだ物ではないから、やっぱりどうしても齟齬がある。
端的にいうと、『似合ってない』のだ。

幽霊ちゃんと一緒にその旨を夕香に伝えると、彼女はびっくりする。
そりゃまぁ昔の人間ならともかく、今の人間のイメージには合っていないだろう。
しかも夕香はずっとこの社から出ていないから世の流行りにも疎い。

夕香の服は今の流行りとは縁遠いということを、これでもかと伝えてみる。
最初はそんなことはないと言っていた夕香も段々と不安になってきたようだ。
ここぞとばかりに幽霊ちゃんと一緒に畳み掛け、無理矢理説得する。


「ううむ、そ、そうなのか。 最近の流行りとは一体どのような−−」

興味を示し始めた夕香に対してあれやこれやと流行りを吹き込む。
ふんふんと聞いている夕香はあくまで『興味がある』程度だろうが、
今はそれぐらいで良いだろうよ。

大事なのは『夕香が興味を示した』ということ。
下の八幡に下りた後、興味を理由に街へと引っ張っていく。
最初の一歩は不安で一杯だろうが、興味から踏み出す勇気を持てばいい。

『ぷろでゅうさぁ』って奴はそう言いながら学園の子を『すかうと』していた。
まぁ、断られることも多かったが、何人かの子供達は間違いなく興味を持っていた。
もしかするとそのまま『あいどる』の道を踏み出した子も居たかもしれない。
 

これでハロウィンの計画はあらかた出来上がった。
後は実際に行動するだけよ。

外人や子狸はそのまま社に泊まると言っていたが、
俺っちと幽霊は『明日また会おう』と約束して奥の社を後にする。

気が付けば、あれだけ降っていた雨は上がっていた。
空を見上げた俺っち達はおやっと不思議に思う。
雨が降っていた筈なのに何処を見ても雲一つない夜空が広がっているじゃねぇか。

もしかすると、さっきの雨は夕香が降らせた雨だったのかもしれない。
俺っち達を帰すまいと、独りにはなりたくないと。
そういった夕香の寂しさが、あの雨を降らせていたのだろう。
 


夜の山道を下りながら、幽霊ちゃんとそんな話をする。
でもまぁ大丈夫だ。これからはもう『孤独』に悩む必要なんてなくなる筈でぃ。
その為に、俺っち達はハロウィンの祭りを計画しているんだからよ。

(だけど、それは夕香だけの話じゃねぇのよ)

隣でふよふよ浮いている幽霊ちゃんを見ながら面の内でそう思う。
幽霊ちゃんも『自分から行動する』ことを知らなかった筈だ。

死んで、幽霊になって混乱していたからって理由があるかもしれねぇ。
だが、そんな幽霊は程なくして未練を忘れ、成仏しちまう。
長い間を生きてきて、そういう奴等を沢山見てきた。

けど、幽霊ちゃんとそいつ等は決定的に違う点がある。
幽霊ちゃんは俺っち達と『つながり』を持ったという点だ。

有象無象の幽霊じゃない、『幽霊ちゃん』を知った俺っちには、
彼女がこのまま成仏してしまう事に耐えられねぇ。
それは、学園の妖として子供達を見守っていた面霊気だからこその想いだ。

14歳の幽霊ちゃんが自分から成仏するのは仕方がない。
でも、妖怪としての楽しさも知らずに、いつの間にか居なくなるなんて寂しいじゃねぇか。

夕香だって『死にたくない』と言っていた。
幽霊ちゃんだって長く生きれば『成仏したくない』と思ってくれるかもしれねぇ。
そう考える猶予を、その機会を俺っちは彼女達に用意してやりてぇ。

(なるほど、これが『ぷろでゅうさぁ』ってヤツの気持ちなのかもしれねぇな)

俺っちは美術室の定位置に戻りながら、そう思った。


〜 その8に続く 〜
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