奨励会。正式名称は新進棋士奨励会。
そこは「将棋のプロ棋士になる」という同じ目標を持つ仲間ではなくて全員がライバル。周りにいる人を一人でも蹴落としていかないと上に上がれない場所。
奨励会の六級に入るには県代表になれるくらいの棋力が必要で、アマチュア四〜五段程度の実力と言われてます。21歳までに初段、26歳までに四段(=プロ)になれないと退会というルールがあり、違う道に進むなら早い方がいいという温情とも言われますがやっぱり非情なルールです。まさにおらが街の天才少年だらけの集まりなのです。元天才が天才を追い越される異次元な空間といえます。
今のルールでは年に2回開催される三段リーグで2位以上になった人だけがプロ棋士になれます。つまり年間4人しかプロにはなれないのです。年齢制限超えてても勝ち越していたら、とか3位の次点を2回取ったら、とか細かいルールもあるけど大まかな話はこんな所。
ここからは2016年4月〜9月の半年間で開催された三段リーグ戦のお話。
https://www.shogi.or.jp/match/shoreikai/sandan/59/index.html
将棋のリーグ戦では順位が非常に大きなウエイトを占めていて、同じ成績なら順位が一つでも上の方が勝つのです。俗に言う「頭ハネ」というやつで順位一つは一勝と同じくらいの価値があります。
奨励会は大抵は1日に2局対戦するので最終日前の残り2局の時点でこんな成績。
左端の数字は順位、カッコ内は年齢、勝敗の後の丸数字が順位で上位2人だけがプロ棋士への狭き門を突破できた勇者となります。
最終日前の成績
1 大橋貴洸(23) 11-5 ��
4 黒田尭之(19) 10-6 ��
5 池永天志(22) 12-5 ��
6 杉本和陽(24) 10-6 ��
7 甲斐日向(23) 11-5 ��
8 西田拓也(24) 9-7
27 藤井聡太(13) 12-4 ��
1局先に進んでいた池永さんが首位。三段リーグに参戦したばかりの藤井くんの順位は当然下位グループ。全体で2位につけていたとは言え頭ハネを食らう可能性が一番高いので一つも負けられないのです。
藤井くんはまだ中学生だけど他の人は25歳の年齢制限がチラつくのが奨励会の一番厳しい所。ほとんどのプロ棋士が「三段リーグには戻りたくない」と口にします。
最終日第1局後の成績
1 大橋貴洸(23) 12-5 ��
4 黒田尭之(19) 11-6 ��
5 池永天志(22) 12-6 ��
6 杉本和陽(24) 11-6
7 甲斐日向(23) 11-6
8 西田拓也(24) 10-7
27 藤井聡太(13) 12-5 ��
事もあろうに1,2位が共に負け、3位だった大橋さんが逆転し最終局を残し昇段決定。3位転落した藤井くんはこの時点で自力昇段がなくなって、上位が負けてくれないと昇段できない「キャンセル待ち」状態。
昇段の目のあった杉本さん、甲斐さんはこの時点で脱落。黒田さんは自分が勝って藤井くんが負けたら昇段というこちらもキャンセル待ち。勝てば昇段だった池永さんは2位ながらキャンセル待ちになってしまい藤井さんと黒田さんが負けないとダメという苦しい状況。そして第2局目の結果は…。
最終成績
1 大橋貴洸(23) 12-6 昇段
4 黒田尭之(19) 12-6 次点
5 池永天志(22) 12-6
6 杉本和陽(24) 12-6
7 甲斐日向(23) 11-7
8 西田拓也(24) 11-7
27 藤井聡太(13) 13-5 昇段
藤井くんが勝って三段リーグ参戦一期目で見事に昇段。多くの棋士は「勝てば昇段」の一番を落として何年も三段リーグ戦に留まるのが普通。それくらいお互いの足を抜けるほど引っ張り合ってるわけですが。
ここを勝ち抜けたからこそ後の29連勝を果して一躍時の人となるのです。この藤井くんですら5敗もしてしまうリーグ戦って一体どんな猛者の集まりなんだよ…。
共に24歳だった杉本さん、西田さんは次期に雪辱は果たし見事に四段に昇段し現在はプロ棋士として活躍中。上がれなければ退会が目に浮かぶ対局を制していく精神力は半端ないです。もちろんそれに負けてしまって退会を余儀なくんされた人たちも過去にたくさんいたわけですが。
勝てば昇段の一番を落とした池永さん、次点だった黒田さん、連勝していれば昇段できた甲斐さんは依然三段リーグに参戦中。
…てな感じの日記を4月頃に書き終えていてそろそろ公開しようかなぁと思ってるうちに連勝街道が止まらなくなってアップするタイミングを逸してしまい、日曜日の対局でようやく連勝で止まった今になっての公開です。
これが35歳位のオッサンが40連勝くらいしてもほとんどニュースにならなかったと思うので騒ぎ過ぎだよなぁと思う反面、その渦中にいながらマイペースを貫ける鈍感力こそ藤井四段の強さなのかな。日本人は中学生が活躍すると必要以上に騒ぎ立てるのが好きですからねぇ。
藤井四段は1年前と比べて数段階も強くなっているのも事実。谷川九段も羽生三冠もそりゃ子供の頃から無茶苦茶強かったけど、序盤戦は荒削りで大抵は酷い作戦負けになっていたのを谷川さんの「光速の寄せ」や羽生さんの「羽生マジック」と言われた圧倒的な終盤力で逆転勝ちしていたもの。でも低段者には通用しても高段者には勝てなかったので、何年もかけて序盤戦も上達してタイトルホルダーに成長していったのです。それが藤井くんは彼らの10年分を今年1年で成長してる感があります。これも羽生さんの「高速道路理論」になるわけでつまりは彼のように若くして高段者クラスの棋力を持つ若者がこれから続々と現れるってことになりますね。
そうなると今回のようにデビュー後に連勝を続けることは難しくなり、旧世代と新世代の切り替わりのタイミングで発生した将棋の神様のイタズラですね。
小学校に入った辺りで透くんには将棋を教えてあげるつもり。一生の趣味にして欲しいとも思わないしましてやプロ棋士になんかなって欲しくないけど(笑)、色んなことに興味を持って欲しいのです。今だったらコマをかじりはしないけど投げて遊ぶだけなので^^
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