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2017年05月20日00:36

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(再)小説で学ぶ逮捕・勾留・取り調べ

「共謀罪」衆院法務委で可決
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=4579759

基準が曖昧な法律は、体制派が改革派をつぶすための武器になってしまう。
このことを論ずるために、今回、2014年6月10日から数回に分けて書いた小説を再掲する。

この小説では、主人公「山田」が、基準が曖昧な児童ポルノ禁止法で取り調べを受ける。警察が本当に狙っているのは、TPP反対のために頑張る「亀田静子」であり、山田に「亀田静子と共謀していた」と認めるようにしつこく迫る。

基準が曖昧な法律は、体制派が改革派をつぶすための武器になってしまう。

この小説を書いた段階では児童ポルノ禁止法を題材としたが、共謀罪はさらに基準が曖昧である。長い小説であるが、基準が曖昧な法律の恐ろしさ、権力を裏から見た恐ろしさを味わっていただきたい。

元気のある人は2014年6月に遡って全部読んでみてください。
 

塩浜修著 「小説で学ぶ逮捕・勾留・取り調べ」 第2話の1 TPPと児童ポルノ禁止法・山田編・1

「××警察の上沢という者ですが・・・」

突然の警察からの電話に、山田はドキッとした。

山田は犯罪に関わった覚えはない。
しかし、この近未来には、政府の方針に反する動きをした者が時々微罪で捕まっていた。
かつては、イラク戦争に反対するビラを配った者が住居侵入罪で捕まり、話題となったが、今ではそういうことは珍しいことでもなくなっていた。

山田は「TPPに反対する若者たちの会」の副会長である。
犯罪に身に覚えがなくとも、権力から目をつけられるという意味での「身に覚え」はあった。

「な・・何でしょう」
暑い時期だというのに、口がかじかんだような感触になり、うまく動かない。
のどがカラカラになった。

「まあ、そう緊張しなくて良いよ。君に確かめたいことがあるだけなんだ。警察署に来てくれないかな。」
よく聞けば既にパトカーで家の前まで迎えに来ているのだと言う。
近所の人に見られただろうか。

「任意ということですよね。お断りしても良いわけですね」
「まあ、一応そういうことになるけどね・・・しかし、こちらもここまでこうやって来ているというのは、それなりの根拠があるわけなんで、協力してもらえない場合は、多分そちらにとって困ったことになると思うよ。悪いこと言わないから、素直に協力しておいた方が身のためだよ」

こう言われて断ることができるだろうか。
山田は家の外に出てパトカーに乗り込み、警察署に向かった。

上沢巡査部長と名乗る男は、取り調べというような重々しい雰囲気は醸し出さなかった。
「君のブログ読んだよ。兎飼ってるんだよね。ぼくも兎好きだよ。あれはいいよね」
などと、結構和やかな話し方をする。
ただ、最初に持ち物検査を徹底的にされたり、トイレに行くときに別の警官がついてきて入口で見張ったりするので、何かの容疑者扱いされていることを痛感した。

「君に聞きたいのは1点だけ。この雑誌持ってるよね。どう?」
持っていることは確かだった。
大手メディアがTPPの危険性について詳しく触れようとしない中、意外にも一見ヌードグラビアだらけでいかがわしく見えるこの雑誌が、ISD条項をはじめTPPの問題点について取り上げてくれたのだった。

山田は、「TPPに反対する若者たちの会」の会員たちにこの雑誌を勧め、学生1人には余分に買っていた雑誌のうち1冊をプレゼントしていた。

「黙らなくてもいいよ。××君という学生を知っているね。彼には今朝来てもらって、君からこの雑誌をもらったし、君がまだ何冊か持っているという証言を得ている」

(学生をオレより先に呼んだのか。警察にいきなり呼ばれてさぞ不安だったろう)
弱い立場の者を先に攻めるやり口に山田は不愉快になった。

「間違いありませんが、それが何か?」
山田は開き直った言い方をした。
TPPの問題点を書いた雑誌を買ったりあげたりしてはいけないなんていう法律がどこにある。

上沢巡査部長は、雑誌のグラビアページを見せて言った。
「ここの『着エロモデル特集』に出ているこの人、16歳なんだよねえ。まずいことしたねえ」

そういえば、児童ポルノ禁止法が改正され、児童ポルノを作ったり売ったりするだけでなく、持っているだけで捕まるようになったと聞いた覚えがあった。
しかし、山田は、TPPの問題点に関する記事を読むためにこれを買ったのであって、その着エロだか、16歳だかはどうでも良いのだ。そのモデルの名前も知らないし、まして16歳なんてことは知らない。・・・そう言うと、
「この法律の第9条で、年齢を知らなかったことは言い訳にならないんだよね。」
と上沢が言った。
なんだ、そりゃ。

「それに、これは裸じゃなくて、ちゃんと水着着てるじゃないですか」
「水着着てるったって、こんな小さな水着でこんな過激なポーズとってりゃあ、児童ポルノだね」
「清純派と言われるアイドルだって、結構小さい水着着ていることがありますよ。サンバカーニバルに小さい子が出場して、水着よりもっと小さい奴でほんの部分だけ隠し、それを白昼堂々大勢が見ている。そっちはどうなんですか」
「まあ、社会通念ってところかな。一概に露出の面積だけで決まるものでもない。」
「そんな、めちゃくちゃな。これじゃ、どれが違法でどれが合法かわからないじゃないですか。」
「君を取り調べるかどうか、ぼくが決めているわけじゃないからね。ぼくも正直君のことを気の毒だと思っているよ。ただ、上がいろいろうるさくてね。これはあくまでぼく個人の考えで、本当かどうかわからないけれど、君はTPP反対運動なんかやっているよね。そういうのも関係あるんじゃないの。」

そういうことなのか。
意図を持ってこちらに狙いを定めたとなると、もう逃がしてくれるような警察ではなかろう。ホリエモン、田中角栄、鈴木宗男、佐藤優・・・真の「権力」が捕まえたくなれば、どんな理屈をつけてでも捕まえてくるのだ。
今回は児童ポルノ禁止法という、曖昧で使い勝手の良い武器が「奴ら」の手に入ったということで、理由なんかどうでも良いのだろう。
ある意味、自分のような無名の小さな運動家が、ホリエモン、田中角栄、鈴木宗男、佐藤優同様にはめられたというのは、名誉なことかも知れない。
いや、ちっとも嬉しくないが。
そうとでも自分に言い聞かせて腹をくくるしかなさそうだ。

「・・・ぼくは逮捕ということですか?」
そう山田が言うと、意外にも上沢はこう言った。
「いや、まだわからない。それは君の態度次第だな」
そう言って、上沢巡査部長は意味ありげに笑った。
(つづく)
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