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2016年10月26日06:09

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たゆたえど沈まぬ、7センチの蒸気船

 松本零士や新谷かおる氏の戦争マンガなら、赤錆びて朽ち果てた兵器にストーリーテラーをさせるトコロだが、この日記にでてくる「そいつ」は、錆び付くことを知らない。

 今から31年前の1985年に、「そいつ」は我が家にやってきた。
 『子どもの科学』の物販・広告コーナーに掲載されていた「そいつ」を、私の親父が「これだ!」と思って、私にプレゼントしてくれたのだ。

 「そいつ」の名前は『グッピー』。
 世界最小クラスの動力船だ。しかも、コイツの動力たるや、電池でもゴムでもなく、蒸気!だったりする。
 全長72ミリの、ローソクの火力を動力源とするポンポン船なのだから。

 


 
 「そいつ」が進水して、我が家の「湯船湾」を航行するのは、5〜10年に一度。
 しかし、全く錆びることも、そして、壊れることもなく、ボイラーをガチャつかせながら、♪ガタガタガタガタ〜と、小気味よく風呂オケをゆったりと航行してゆく。
 おまけに、構造が単純なものだから、肩ひじ張ることなく「ホビーの時間」を味わうことができる稀有な存在だ。
 
 では、なぜ壊れなかったのか?

 最初は、「そいつ」の単純な構造の所以かと思っていたが、どうも、そうではなかった。
 構造こそ、小さな船体に真鍮製のパイプと小さな「ボイラー」を取り付けてあるだけの、簡単なものである。
 しかし、船体は80個の型を用いて「そいつ」は造られ、しかも、その船体は航空機用のアルミ製だった。
 おまけに、手の込んだ船体へと、更にデュポン製の耐熱塗料を塗布してあったりする・・・。おかげで、ローソクのススが船体に付着しても、すぐに取れて輝きを取り戻す。
 そして、ポンポン船の動力部のパイプ等の長さも、練られた設計のものであり、おかげで金魚のような「丁度よい」スピードで、機嫌よく風呂場を航行してゆく。

 すなわち、単純な船体にするまでの段階で、果てしない手数が加えられていたのである。
 だから、30年たっても壊れない・・・。
 設計者は、ヤマハのマリン部門の技師さんである。
 
 商品としての『グッピー』は不遇だった。
 「壊れない」という長所が、各地の玩具店から嫌われたためである。
 ちなみに、1981年にデビューした『グッピー』が完売したのは、今年の夏のことだという・・・。

 かつては阿佐ヶ谷にあった『グッピー』の製造元は今はなく、設計者の方も数年前に他界された。

 我が家の『グッピー=そいつ』はというと、つい先日も、親・子・孫の3世代の前で見事な航行を披露し、弟の娘たち(4歳と3歳)を「ポニョの船だ〜♪」と、喜ばせた。

 元をただせば、私の親父の発案で、ラジコンバギーを押しのけて我が家で進水することとなった「そいつ」である。
 
 今にして思えば、親父に見る眼があったのである。

 
 

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